可動間仕切りで住まいの空間をフル活用! 設計で気をつけたいポイントは?

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共働き世帯が多い現在の家庭では、在宅時になるべく家族と多くの時間を過ごせるよう、「家族みんなで過ごせるスペース」を大切にしています。リビングやダイニング、廊下などをあえて区切らず、壁を設けないことで、家族とのコミュニケーションもとりやすくなるでしょう。

壁をつくらない間取りの住宅は、家族間の交流に役立つだけでなく、内装費の削減にもつながるため、時代に合ったデザインとして近年人気が高まっています。その一方、在宅ワークの急増や家庭内の感染症対策など、住宅内の間仕切りを必要とする要因も急増しています。

広い空間に間仕切壁を設置したい場合には「可動間仕切り」の設置がおすすめです。可動間仕切りは、その名のとおり、必要に応じて間仕切りを移動させることができるので、部屋同士を分割したりつなげたりを、自由自在に行えます。

この記事では、可動間仕切りにフォーカスをあて、その利便性をお伝えするとともに、使い方や注意点についてお話していきます。

可動間仕切りとは

(引用)リフォーム事例 住友林業のリフォーム

可動間仕切りにはスクリーンウォールやアコーディオンカーテンなどの種類があり、室内を簡易的に間仕切りすることに使われるものです。主に「折れ戸タイプ」と「引き戸タイプ」「カーテンタイプ」があり、デザインが豊富なため、部屋の広さや使い勝手に合わせて選べます。

「リビングや寝室に思い切って広い空間を取りたい!」と思っていても、「スペースのムダ遣いにならないか」「空調効率は下がってしまうのではないか」と気になることもあるでしょう。このように広いスペースの活用に不安があるときこそ、可動間仕切りを設けておくと安心です。
用途やライフスタイルに合わせてお部屋の広さを調節できるので、必要に応じて部屋を分割させることができます。

壁との違いは? 法令上の可動間仕切りの分類

(引用)リフォーム事例 住友林業のリフォーム

可動間仕切りは、障子や襖と同じ分類です。部屋を区切るものではありますが、「開口部」とみなされます。なかには、間仕切りを壁面に沿って収納できるフルオープンタイプの製品もあり、障子や襖よりもさらに広い開口を取ることも可能です。こうした広い開口を利用することで、部屋の採光や換気問題の解消にも役立ってくれるでしょう。

ちなみに建築基準法では「窓などの開口部を居室の床面積の7分の1以上設ける」ことが定められています。たとえば、リフォームなどで1部屋を2分割したい場合に、壁で仕切ってしまうと、どちらか一方の部屋がこの採光条件をクリアできない状態になりかねません。
そうした場合に、可動間仕切りを採用すると、同一の居室とみなされるため、採光の基準がクリアできるのです。これは消防法により火災報知機を設置している部屋を分割する場合も同様であり、報知機をそれぞれに付ける必要がありません。ただし、火災報知器によっては壁から数十センチ離して設置するなどの設置条件が決められていることがあります。これにしたがわなくても違反や罰則には当たりませんが、報知機のすぐ近くに可動間仕切りを設置する場合には、万が一の際に火災の感知が遅れてしまうことも考えられるため、移動をおすすめします。

可動間仕切りのメリット・デメリット

空間の有効活用にあたって、とても魅力的な可動間仕切りですが、具体的にどのようなメリットをもたらしてくれるのか、またデメリットがあるのか、ここでじっくり見ていきたいと思います。

まず、一つ目のメリットは「目隠しになる」ことです。寝室やリビングの一部を書斎スペースとする場合では、使用時以外はデスクを隠すことで仕事とプライベートのオンオフの切り替えに役立ちます。デスクまわりは雑多になりがちなうえ、人の目に触れてほしくない書類を保管していたりする場所でもあります。その点、書斎スペース全体を可動間仕切りで目隠ししてしまえば、デスクまわりの整理整頓も比較的簡単です。また、在宅ワーカーは、オンライン会議などでプライベートな場面が映り込んでしまうことを防ぐのにも役立ってくれるので、リビングや居室を隠すという目的にも使えるでしょう。

もう一つメリットを挙げるとすれば、「部屋を自由にレイアウトできる」点でしょうか。
来客時や空調使用時など、用途に応じて目隠しや、広さの調節に使用できます。区切られた空間であっても音や様子は伝わりやすいため、視線を遮りながらも、それぞれの空間の様子を感じることができるでしょう。

続いて、デメリットですが、まずは「防音性、断熱性が低い」ことです。製品により性能の差はありますが、可動間仕切りの性質上、どうしても防音性や断熱性は低くなってしまいます。そのためプライバシー性も低く、あくまで目隠しの用途しか果たせないといえるでしょう。また、可動間仕切り自体に断熱性能はないものの、空調時に空気の流れる範囲を調整することには役立ってくれます。

二つ目のデメリットは、「コンセントや照明の位置、窓の位置を合わせにくい」ことが挙げられます。リフォームで可動間仕切りを設置する場合、窓を避けての設置となるため設置場所が限られてしまいます。また、照明やスイッチ、コンセントなどの位置に被ってしまったり、照明とスイッチが可動間仕切りによって分断されてしまったりすることも考えられます。窓の位置に合わせて可動間仕切りを設置することは大前提ですが、使い勝手がどうしても気になるようなら照明器具やスイッチ、コンセント類を移設、または増設するようにしましょう。

可動間仕切りの活用と気をつけたいポイント

(引用)リフォーム事例 住友林業のリフォーム

ここでは、具体的な可動間仕切りの活用事例を紹介しながら気を付けたいポイントを解説します。

リビングとダイニングの仕切りに

リビングは住宅内でもっとも広いスペースを必要とします。小さなお子さんやペットがいる家庭では、ダイニングキッチンからもリビングの様子が見えるようにしたいなど、実用性や安全性の面からも間仕切りを設置しないことは多いでしょう。とはいえ、調理の際のニオイがリビングに流れてしまうことや、空調効率の問題が付いて回ることも考えなければならないポイントです。キッチンやダイニングをプライベートなスペースとしている家庭では、来客時にリビングから見えないようにしたいと思うこともあるでしょう。その点、可動間仕切りがあると、必要に応じてダイニングキッチンとリビングを区分けできるので便利です。
急な来客時にキッチンまわりが片付いていないときでも、可動間仕切りでとりあえず隠してしまえば、慌てる必要もありません。
部屋を分割しながらも広く見せたい場合には、透明の可動間仕切りがオシャレで、インテリアに映えます。ただし透明の素材は、目隠しの用途には使えません。デザインと実用性を十分考慮しましょう。

子ども部屋の増設に

(引用)リフォーム事例 住友林業のリフォーム

子ども部屋はひとつの空間を複数の子どもで共有することも多いですが、成長に合わせて必要な広さが変わったり、プライバシーも必要になったりしてきます。そこで、単純に子ども部屋を可動間仕切りで2部屋に分割してしまうのもよいですし、リビングやダイニングの1区画を勉強スペースとしてデスクを置くなど、用途ごとに使い分けするのも良いでしょう。
防音性が低いことが難点ですが、目隠しにはなるため、ある程度のプライバシー性が保たれます。

元々あまり広くない居室に完全な壁を作ってしまうと、圧迫感が出てしまったり、建具を開くスペースがなかったり、窓の位置によって採光や換気の問題点が出てきたりしまいがちです。その点、可動間仕切りであれば、これらの問題をクリアできるうえ子どもが成長して家を出た後の部屋の活用もしやすくなります。

可動間仕切りは「設置したけれど実際あまり使わなかった」ということもありえるものなので、暮らしのなかで必要だと思ったタイミングで設置するでも遅くはありません。

在宅ワーク用の書斎スペース

(引用)リフォーム事例 住友林業のリフォーム

アフターコロナになって、必要に駆られている家の機能のひとつが書斎スペースではないでしょうか。実際、設ける場合には、リビングやダイニング、または寝室などの一部を活用やクローゼットを利用する方法など、さまざまに考えられます。そこにデスクを置くだけでも仕事はできるものの、目隠しを設置することで、より集中しやすい環境を作ることができます。

また、プライベート時に仕事のことを考えないようにするためにも、生活スペースからデスクが見えないような工夫も必要です。その点、可動間仕切りはデスクや仕事道具を隠す役割も果たしてくれます。ただし、可動間仕切りは、簡単に開け閉めができるように作られているため、セキュリティの性能がありません。大切な書類をはじめ、子どもに触られたくないものは、引き出しに入れてロックをかけたり、手の届かない場所に保管したりするなどの注意が必要です。

高齢者の寝室やベビールームなど、見守りが必要なスペースに

可動間仕切りは、間仕切りの向こうの様子をお互いに感じることができるため、「視線は避けつつ、室内の様子はわかるようにしたい」という状況に最適であり、安心感につながります。天井にレールを取り付ける「吊り戸タイプ」の可動間仕切りであれば、床にレールを敷かなくてもよいので床の意匠を損なわず、フラットなバリアフリー設計も実現可能です。
床に障害物がなく広い開口が取れるため、ベッドなどの大型家具の搬入や車いすでの移動もラクに行えます。

まとめ

(引用)リフォーム事例 住友林業のリフォーム

可動間仕切りを使う場合に気を付けたいポイントは、部屋を分割したときのそれぞれの部屋の環境です。
照明器具やコンセント、または空調の問題から、「せっかく設置したのに使いにくい」とならないようこれらの増設の計画もあわせて行うようにしましょう。子ども部屋や在宅ワークスペースでは特に、部屋を快適に保つことが大切です。