家事動線を見直して毎日の家事を楽にしよう 間取りのアイデアを建築士が解説

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家事を楽にするためのリフォームは「家事動線の見直し」が重要です。
家事とひとことで言っても自分や家族の身の回りのこと、育児や住宅のメンテナンスなど、さまざまな作業が含まれています。なかでも育児は、どうしても女性が主体で行うことが多いため、その延長で家事の多くが女性に偏りがちです。しかし、共働き世帯が増えている現在の家庭では、女性もフルタイムで働いていることが多く、家事に費やすことができる時間も限られています。

内閣府男女共同参画局「結婚と家族をめぐる基礎データ(令和3年5月18日)|P6 共働き世帯の増加①」より引用

共働き世帯では家事の分担も重要であり、家事動線を見直すリフォームでは、「家族みんなで家事ができる」間取りを目指すことも重要です。

今回は、家事動線を見直すことで家事の負担や、家事分担の偏りを解消し、趣味や家族のための時間を増やすリフォームの方法をご紹介します。

家事動線とは

家事動線とは、家事のために移動するルートや範囲を指しています。料理や洗濯、掃除のほかに、子どもの世話や片付け等、家の中では多くの時間をこれらに費やしています。
家事動線を見直すことは、「家事の時間を短縮できる」「家事の負担を軽減する」ために、いかに効率よく動けるかを計画するものです。
では、家事動線の見直しには具体的にどんなリフォームをするとよいのでしょうか。

家事動線の計画

日常的な家事の多くは「水まわり」に集約しています。そのため、まずは水まわりのリフォームや、そのレイアウトを見直していきましょう。

キッチン

(引用)リフォーム実例  住友林業のリフォーム

キッチンでの主な作業は「食料品の仕分け」「調理」「配膳」「片付け」です。とはいえ、すべての工程を通すと時間のかかる作業であるため、キッチンで作業しながら合間に「子どもの見守り」や「その他の家事」をすることも多いでしょう。
まずは作業をしながら、キッチン以外のスペースが見通せること、またキッチン以外のスペースからキッチン内の様子が分かることが重要です。

画像:筆者作成

そのためには「カウンターキッチン」や「フルオープンキッチン」といったレイアウトがおすめです。リビングダイニングとキッチンのスペースが一体となることで、夫婦や家族でコミュニケーションをとりながら、同時に家事を行うことにも役立ちます。
また、食料品の収納に便利なパントリーをキッチン脇に設けると、食品の保管や利用に便利です。料理に使うものの置き場所を1カ所に限定することで、小さな子どもでも片付けやお手伝いがしやすくなります。

洗濯スペース

(引用)リフォーム実例  住友林業のリフォーム

洗濯に関わる作業は「洗濯物の分類」「洗濯」「乾燥・物干し」「折りたたみ」「収納」などがあり、開始から完了までには一日がかりです。これらの作業はひとつの部屋、もしくは隣り合ったスペースで完結できることが望ましいでしょう。

画像:筆者作成

一般的な間取りでは、住宅の南側にはリビングなどの居室を置き、水まわりは西側や北側に設置されることが多いものです。洗濯スペースも西側や北側に配置されていることが多く、ここに隣接して物干しを設置すると日照時間が少ない、という問題も発生します。そうした場合であっても、洗濯スペースと物干しを離れた場所に設置することはおすすめできません。水を含んだ重い衣類を運ぶことはかなりの重労働です。苦労のひとつひとつをていねいに軽減させることが、家事に取りかかる気持ちの面でのハードルも下げてくれるでしょう。

家事の負担を軽減する設備の導入~キッチン編

(引用)リフォーム実例  住友林業のリフォーム

ここでは、1日のうち長く過ごすことの多いキッチンでの家事を助けてくれる、さまざまな設備について紹介します。

食器洗浄機

食洗器を使用しているあいだは他の家事ができるため、家事の時短につながります。多くの洗い物をまとめて洗浄できるため水道代の節約にもつながり、高熱洗浄による除菌も可能です。

IHコンロ

ガスと比べて安全性が高く、火力調節もしやすいため、お子さんにも使いやすいでしょう。
凹凸のないフラット設計なので、掃除やメンテナンスの手間も時間も削減できます。

広いシンク

シンクが狭いと、作業がしづらくムダな手間が発生しがちです。その点、広いシンクや広い作業台があると、お子さんや夫婦で一緒に作業することもできるので、時短だけでなく、楽しみながら家事を行うこともできるでしょう。

自動洗浄機能付きレンジフード

換気扇は主にプロペラファンとシロッコファンの2種類があります。近年の主流はシロッコファンです。ファンを外して自分で洗浄することも可能ですが、洗浄機能付きのレンジフードは、ボタンひとつでフード内を自動洗浄してくれます。これを利用することで、大掃除の際に作業する量を大幅に削減できるでしょう。

家事の負担を軽減する設備の導入~洗濯室編

(引用)リフォーム実例  住友林業のリフォーム

続いて洗濯室を見ていきましょう。

サンルーム

屋外の物干しでは、天気に左右されるという致命的なデメリットがあり、時間帯やシーズンによって洗濯のタイミングを逃しがちということも多々あるでしょう。その点、サンルームは、物干しをメインとした部屋で、時間帯や天候、季節を問わず、洗濯物を干す作業が行えます。ハンガーラックや作業台を設置すれば、乾いたものの一時保管や、折り畳みのためのスペースとしても使えるでしょう。

乾燥機能付き全自動洗濯機

物干し場やサンルームの確保がスペース的に難しい場合は、干すことを諦めて乾燥機に任せる方法もおススメです。機械による乾燥は時短につながるだけでなく、高温乾燥による除菌ができ、衛生的な洗濯が可能となります。
ドラム式洗濯機や乾燥機能付き洗濯機は、縦型の洗濯機と比べてサイズが大きいのが特徴です。リフォームでは既設の洗濯パンのサイズに合わない事もあるので、購入前に確認しましょう。

布団乾燥機や除湿器

物干し用のスペースが屋外にも屋内にも取れない場合、特に布団などの大型の物干しに困ります。大型でぶ厚い布製品には布団乾燥機が便利です。布団を敷いたままの状態で使用でき、高温の空気で内部までしっかり乾燥させてくれます。乾燥だけでなくダニ退治にも効果があり、外気のウイルスや花粉にさらすこともなく乾燥させることが可能です。

家事動線計画の注意点

家事動線の見直しでは、必ずすべての家事が同一階で行えるように計画することが大切です。水まわり設備は配管が床下にあり、そこからの配管距離をなるべく短くするために、キッチンや浴室は1階に設置されることがほとんどです。しかし、物干し場は、日当たりを優先して2階に配置されていることもあるため、ここでムダな動線が発生してしまっている間取りの住宅も多々あります。こうした間取りの場合、足腰が弱くなってきたり、高齢になってきたりすると、いずれ使えなくなる動線になってしまいます。日常的な苦労を減らすだけでなく、いつか年を重ねた自分がいかに楽に家事ができるかを考えておくと、自然とシンプルな動線計画ができるでしょう。

もう一つポイントになるのが、家事動線上に不要な家具やストック品、洗濯物などの障害物を置かないことです。これらは移動や作業の妨げ、家事効率を下げる要因になるのに加え、片付けるものが増えて掃除もしにくいというデメリットが重なってしまいます。
動線上に物や障害物が少なければ、お掃除ロボットの導入も可能になります。

家事のほとんどを同一動線で行うことができ、さらにやるべき家事が見えやすいようにすれば、「気がついた人が家事をする」という習慣付けもしやすいでしょう。つまり、「見えない家事」をなくすために、「見えるようにする」ということも大切です。
たとえばトイレットペーパーの取り替え、洗剤の詰め替えなどは、「家族みんなが新しいものがどこにしまってあるかを把握している」「新しいものがすぐ近くに収納してある」というだけで、取り掛かるハードルはグッと下がります。
家事に使う品物や道具が家事動線上にあり、置いてある場所が分かりやすく、取り出しやすい、ということも家事の効率アップに重要なポイントです。

まとめ

家事の苦労や時間を削減することは、家族とのコミュニケーションや育児の時間を増やすことだけでなく、個人の自由な時間を増やすことにも役立ちます。リラックスタイムやスキルアップのための時間を少しでも多くとるためにも、やはり家事にかかるムダな時間はなるべく少なくしたいものです。

家事動線の効率化リフォームは、家事の負担を減らすことができるため、若い世帯だけでなく高齢者にもおすすめのリフォームです。小さなお子さんからお年寄りまで、みんなが使いやすい間取りへのリフォームこそが、家事動線を見直すリフォームと言えるでしょう。