【建築士が解説】DIYでキッチンリフォームがしたい! 自分でして良いこと、ダメなことは?

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DIYとは「Do it yourself」の略語で、日本では日曜大工を指します。
ホームセンターはもちろん、最近は100円ショップでもDIY用品のコーナーは充実しており、需要の高さが分かります。

手近な家具から住宅のリフォームまで、自分だけの好みやこだわりを叶えられる自由な日曜大工。趣味や実益としての経験を積み重ねていくと技術も向上し、より多くの造作や広い範囲のDIYができるようになります。すでにDIYを楽しんでいる人のなかには、いつかはリフォームにも挑戦してみたいと考えている人もいるかもしれませんね。

住宅のリフォームを考えている生活者へのアンケートでは、リフォームをしたい場所として、生活や家族との時間の中心となるキッチンやダイニングをはじめ、水まわり設備や収納を挙げる回答が多いことが分かります。

一般社団法人住宅リフォーム推進協議会「住宅リフォーム潜在需要者の意識と行動に関する調査 第 11 回 調査報告書(平成31年2月)| P35 2-3-2 リフォーム検討中の場所(複数回答)

こうした場所は単純な劣化だけでなく、家族の成長や生活の変化にともない使い勝手が悪くなる部位でもあります。専門事業者に依頼するほどでもない場合にも、DIYリフォームが候補にあがってくるかもしれません。

しかし、DIYでできる範囲には限りがあります。
今回はDIYでリフォームできることと、DIYできないこと。そして、専門業者に依頼すべきことや、DIYリフォームを行う場合の注意点について紹介します。

DIYでできること

(引用)リフォーム事例  住友林業のリフォーム

まずは、DIYで行える住まいのリフォームを見ていきましょう。
これから始めたいという人から、すでに実績をお持ちの人まで経験に応じて、現実的にどのようなリフォームならできるのだろうか、そのような目線で読み進めていただければと思います。

クロス貼替(もしくは壁塗り替え)

開口部や凹凸、スイッチ等が無い、まっさらな壁がもっとも貼り替えがしやすい壁です。
きれいに仕上げるためにはていねいな作業が必要ですが、作業自体は複雑ではありません。近年は、初心者向けの糊付きクロスも販売されています。

収納棚

キッチンや洗面脱衣室は入居から年数が経つにつれて物が増え、収納が足りなくなる場所のひとつです。とはいえ、既存の収納設備もあるため、新たに収納を置くスペース自体が少なく、わずかなすき間にピッタリ合う既製品はなかなか見つけられないものです。
欲しい位置に欲しい寸法の収納を置くにはDIYがおすすめです。

キッチンカウンターやテーブル、ベンチなどの家具

テーブルやベンチなどは構造が比較的カンタンで、初心者にも制作しやすい家具です。木材や塗料だけでなく、鉄やスチールといった金属部品もそれぞれ購入できるため、自分の好みに合ったデザインの家具を実現できます。
ショールームやインターネット上にも製品は豊富にありますが、木目の模様や色合い、質感やデザインなど、細部まで自分の好みを追求する場合にDIYはおすすめの方法です。

リメイクシートなどを利用した腰壁やキッチンまわりの模様替え

100均で購入できるDIY商品として有名なものがリメイクシートです。誰にでも簡単に扱えるようになっている反面、耐久性や原状回復の難しさなどの問題点もあります。とはいえ、DIY難易度の低さと材料の安さに加えて、大胆にリメイクできる点で人気があります。

コルクタイルやフロアマットなどを敷く

小さい子どもやペットの安全のために床をリフォームしたい場合、床の張り替えは手間と材料費がかかってしまいます。その点、コルクタイルやフロアマットは、手軽に設置できて安全に使えるだけでなく、必要な範囲にだけ置けるので、無駄な費用もかかりません。

木製建具やドアノブなどの交換

既製の木製建具を購入し、それを自分で取り付けるだけでも大きな模様替えになります。また、既設の建具を塗り直したりドアノブを交換したりするだけでも、簡単に印象やデザインを変えることができるでしょう。

照明器具の交換

(引用)リフォーム事例  住友林業のリフォーム

現在は多くの住宅で、コンセントのように差し込むだけのソケットタイプの天井照明器具が導入されているため、簡単に取り替えることができます。ただし、天井から配線が露出している直結タイプは、配線を行う必要が生じます。照明器具を購入する前に接続方法を確認しましょう。

DIYでできないこと

DIY上級者のなかには、壁材の変更や家具の造作といった手軽なものにとどまらず、いろいろなことに挑戦したいと考えている人もいるかもしれません。しかし、リフォームのなかには下記に示すように資格が必要な工事もあります。

電気工事、配管・設備工事

配線作業を行うほとんどの電気工事は「電気工事士」の資格を持つ人にしか行えません。たとえば、直結タイプの照明器具の交換や配線、コンセントの増設などは電気工事の部類に入り、有資格者に対応してもらう必要があります。
配管工事も同様で、「給水装置主任技術者」「排水設備主任技術者」の資格が必要です。

これらをDIYで行うことは、危険をともなうだけでなく、違法行為として罰せられることがあります。

壁や柱の撤去をともなう間取り変更

木造住宅においては、柱はもちろん壁の位置や壁量も耐震性能に大きく関わっています。
筋交いなどの耐震上重要な部材が組まれている壁は設計図面に記されていますが、施工後の壁は外見からは判断できないため、撤去してもよい壁かどうかは専門家の判断が必要です。
また、建物の床面積が10㎡を超える増築には建築確認申請と、建築士の資格が必要となります。

マンションでの共有部分にかかる工事

マンションの共有部分は、耐震性能や防火性能、避難経路の確保や外観の変化など、他の住民にも影響が及ぶ箇所であり、そもそもリフォームを行うことができません。たとえば、キッチンとバルコニーが隣り合う住まいの場合には、「行き来しやすくしたい」「窓にカウンターを付けたい」などイメージは膨らむかもしれませんが、バルコニーは共用部分や外観にあてはまる場合があり、注意が必要です。その他にも、マンションごとに禁止されているリフォームがある場合も考えられます。
DIYリフォームは、DIYを行うことよりも、原状回復のほうが難しいものです。賃貸やマンションなどの建物においては、規約や契約内容を必ず事前に確認しましょう。

DIYできるけれどオススメしないもの

断熱工事など壁内部に及ぶ作業

グラスウールなどの断熱材は、インターネットで手軽に購入することができます。断熱材を施工すること自体は難しいものではなく、簡単にDIYできると思われやすい部位でもあります。しかし、断熱リフォームの難しいところは施工ではなく、施工後の壁の補修です。せっかく断熱材を施工しても壁の施工がうまくできず、すき間風が通る壁になってしまっては意味がありません。
断熱リフォームには、外の空気を通さず、室内の空気も逃がさない密閉された壁構造が重要で、そのためには確実な木工事技術が必要です。
壁の密閉がうまくされていない場合、湿気が壁の内部に侵入し、湿気に弱いグラスウールの断熱性能を落としてしまうだけでなく、柱などの構造材の腐食にもつながってしまいます。

床板の張替え

フロアマットなどの敷物でカバーするのではなく、床材自体を張り替えたい場合は専門事業者に依頼することがおすすめです。
DIYは基本的に時間がかかるものですが、工事中は部屋をまったく使用できなくなるため、施工スピードも重要です。ゆっくり楽しみながらDIYをするというのは難しいかもしれません。
また、木工事は時間経過による木材の反りや収縮・膨張などを計算して施工されるもので、こちらも技術者の豊富な経験と高い技術力により仕上げられるものです。初心者による施工の場合、木材の反りによる凹凸や、収縮によるすき間の発生、膨張による破損などの問題がのちに発生するケースも高くなります。
床は、転倒などの日常的に危険にもつながるため、仕上がりの善し悪しが、あとから致命的なデメリットになってしまうこともあるのです。

DIYでリフォームするメリット

DIYの最大のメリットとして費用が抑えられる点が挙げられますが、作業を楽しむことをメインとする人も多く、実益を兼ねた趣味として人気があります。

リフォームを事業者に依頼する場合、仕上がりの素材や色味などの細かい打ち合わせの手間や時間、また要望がうまく伝わるかどうかのコミュニケーションの問題がつきものです。しかし、プランから施工までを一括してDIYするのであれば、やりとりの手間や計画の行き違いなどのムダを省くことができるでしょう。

なお、このほかのメリットとして下記が考えられます。

  • メンテナンスや補修も自分でできる
  • じっくりプランを考えられる
  • 業者の出入りが無くて済む
  • 自分の要望を細かく叶えられる
  • 収納棚や家具が手持ち品に合わせて造作できる

DIYのデメリット

DIY最大のデメリットは仕上がりの問題です。特に、建物の構造部に影響を与えそうなリフォームはDIYで行わないようにしましょう。家具など建物自体に影響がない部分からスタートし、DIYで行うのは居室の内装部分までの範囲に留めておけば、建物へのダメージの心配はほとんどありません。

このほかに考えられるデメリットは下記のとおりです。

  • 道具類を揃える必要があり、それらの収納場所も必要になる
  • 工期がかかる
  • やり始めたら完成させるまでやめられない
  • 大きなごみが発生する

まとめ

DIYリフォームは、費用が抑えられる点で優れていますが、補修やメンテナンスの箇所や頻度が多くなってしまうと結果的に材料費や手間などが多くかかってしまうことがあります。
撤去した廃材やDIYの過程で出てしまうゴミ、金具などの処分費用に加え、材料の余剰分の活用方法や保管場所なども考慮しなくてはなりません。リフォームのプランニングだけでなく、予算計画も重要になるでしょう。

また、DIYには多くの大工道具が必要となり、それらの購入費用以外にも収納場所や作業スペースの確保も必要となります。趣味を持つときには、それを行うための場所や、集中できる環境を確保することも大切です。
まずは、DIYをするための場所づくりを「Do it yourself」で始めてみるのもよいかもしれません。