高齢者に求められる住宅性能とは 「高齢者等配慮対策等級」についても解説

暮らし・住まい

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身体の機能が衰えても、住み慣れたわが家をそのまま「終の棲家」としたい方は少なくありません。安全に移動・生活できる住まいに整えておき、いつまでも大切なわが家で快適に暮らせるようにしたいものです。

この記事の監修

矢口ミカ

複数のメディアで執筆中です。宅建の資格を活かし、家族が所有する投資用不動産の入居者管理もしています。住まいに関する資格である整理収納アドバイザー1級、福祉住環境コーディネーター2級も取得済みです。趣味は整理収納と料理。

令和元年現在、日本人男性の平均寿命は81.41年、女性は87.45年(※1)となっています。平均寿命は年々上昇しており、長い老後をいかに快適に暮らしていくかは重要なテーマといえるでしょう。

では、高齢者が快適に暮らすため、住宅にはどのような配慮が必要とされているのでしょうか。その指標でもある「高齢者等配慮対策等級」も含め、この記事では「高齢者の住まい」をテーマに話題を進めていきます。

高齢者の住宅の状況

高齢期になると、身体的な理由から老人ホームなどに入居する人は少なくありません。しかし、内閣府の調査によると、「現在の住居に、とくに改造などはせずそのまま住み続けたい」(28.7%)、「現在の住宅を改造し住みやすくする」(27.4%)との回答が上位にあり、老人ホームや高齢者向け住宅、子どもの家に移ることを考えている人のほうが少ないことが分かっています。このように、「自分の家」にそのまま住み続けたい高齢者は多いのです。

内閣府「平成30年度 高齢者の住宅と生活環境に関する調査結果(全体版)|P81. 図表 2-2-15-1 身体が虚弱化した時に住みたい住宅(Q20)(複数回答)」より転載

高齢者の住宅への配慮したいこと【高齢者等配慮対策等級】

加齢や病気などにより身体機能が低下すると、「歩く」「立つ」「座る」などの日常動作が負担になってきます。転倒など思わぬ事故にあうリスクも高まることから、高齢者が居住する住宅にはさまざまな配慮が必要です。

1.移動時における安全性の確保

家のなかを移動するうえで手すりは高齢者の助けになります。「靴を脱ぐ/履く」「服を脱ぐ/着る」などの動作も体勢が不安定になるため、玄関や脱衣所などにも手すりがあると安全です。
なお、住宅内における高齢者に必要な対策の目安は「高齢者等配慮対策等級」で表示されています。等級は、「移動時の安全性」と「介助のしやすさ」に配慮した処置の程度を組み合わせて判断。移動時の安全性に関しては、以下の対策が求められています。

配慮が求められること

安全対策の内容

垂直(上下)移動の負担の軽減

・高齢者が利用する部屋と主要な部屋を同じ階にする

・階段に手すりを設置する

・階段の勾配を緩やかにして事故の発生を防ぐ

水平移動の負担の軽減

・段差を解消する

・段差のある場所を少なくする

・段差のある場所に手すりを設置する

脱衣、入浴などの姿勢変化の負担の軽減

・玄関、トイレ、浴室、脱衣室に手すりを設置する

転落事故の防止

・バルコニーや2階の窓などに手すりを設置する

一般社団法人 住宅性能評価・表示協会「高齢者・障害者への配慮」を参考に筆者作成

2.介助がしやすい

高齢になると身体機能が低下するため、介助が必要になる場合もあります。そのため、あらかじめ「介助がしやすい」空間にしておくことが望ましいでしょう。具体的には、下記のような対応が挙げられます。

  • 車いすが通行しやすい
  • 浴室における浴槽への出入りやからだを洗浄するスペースが取られている
  • ベッドへの移乗がしやすい空間が確保されている
  • トイレの介助がしやすい
  • 衣服の着脱に無理のない広さがある

高齢者の住宅で気を付けたいポイント

いつまでも自立して過ごしてもらうために、また介護が必要になった場合にも、これから紹介するポイントを押さえた家づくりやリフォーム、福祉用具の導入はぜひとも検討したいところです。

1.部屋の配置

玄関やトイレ、浴室、脱衣室、洗面所、寝室は、基本的な生活行為を行うために最低限必要な空間です。このうち、トイレを寝室のある階に設置することはもっとも考慮したいところです。排泄は人間が生きていくために欠かせない行為のため、寝室との動線が短いほど介護がしやすくなります。

2.段差

日常生活空間を段差のない構造にすることも大切です。段差でつまずかないよう床を平らな状態にしておきます。段差のない構造とは、和室と洋室、廊下と居室といった出入り口に生じる段差を仕上がり寸法で5mm以内にする構造です。(※2)
リフォームを行う場合は、敷居を低くする、廊下のかさ上げをする、固定式スロープを設置するといった方法が考えられます。

3.階段

階段は、足を踏み外してしまうと重大な落下事故へとつながります。階段を上る際に足のつま先が当たりそうになる「蹴込み」は30mm以下とします。(※3)
手すりや階段の先端部に滑り止めを設置しておくのも効果的です。踏板がカーペット張りなら簡単に滑りません。
高齢者は視力が低下している場合が多いので、足元を照らすランプがあると安心です。

消費者庁 NewsRelease 令和2年10月8日「10月10日は「転倒予防の日」、高齢者の転倒事故に注意しましょう!」より転載

4.手すり

手すりは日常生活空間のあらゆる場所に設置すると便利です。手すりにつかまりながら移動することで、万が一何かにつまずいたときにもカバーできます。家族に介助してもらわなくても自由に歩きやすくなるのでストレスも溜まりにくいでしょう。
トイレなど立ち座りをする場所に設置しておくと、過剰な負担が腰にかかりません。浴室は出入口と浴槽の近く(浴槽をまたぐ場所)に設置すると滑りにくく安全です。

5.通路や出入口

高齢者の住宅における日常生活空間の出入り口の幅は、750mm以上(浴室は600mm以上)が適当とされています。これは車いすなどが通れる幅を考慮されています。
廊下の有効幅は780mm以上です。こちらも出入り口同様に車いすの使用が考慮されており、実際に車いすを動かすため、やや広い幅となっています。

6.寝室・トイレ・浴室

寝たきり状態になった場合は、寝室・トイレ・浴室は生活を送るうえでますます欠かせない場所となります。なお、トイレは腰掛け式の便器で、介護者が中に入れるよう便器と壁の距離が500mm以上あることが必要です。本来は新築の時点で500mm以上の幅があれば問題ないのですが、リフォームでスペースを広げられることもあるので施工会社に相談してみるとよいでしょう。

まとめ

今回は、高齢期に求められる住まいの性能について詳しく解説しました。
身体の機能が衰えても、住み慣れたわが家をそのまま「終の棲家」としたい方は少なくありません。近年では、自宅で生活しながら受けられる在宅介護サービスも、多岐にわたっています。安全に移動・生活できる住まいに整えておき、いつまでも大切なわが家で快適に暮らせるようにしたいものです。