
日本屈指の景勝地として知られる四国・大歩危峡(おおぼけきょう)の真ん中に位置し、露天風呂からは眼下にその渓谷美を望む「大歩危峡 まんなか」。遊覧船乗り場も近く、雄大な緑に囲まれた秘境を目的に、国内のみならずインバウンドのお客様も多く訪れるお宿です。
大歩危峡 まんなかのリノベーションは、訪れる誰もがゆったりとした時間を過ごせる客室づくりを目的に実施。二室の洋室をひとつにつなげ、広い和洋室へと変わった客室は、和のくつろぎと洋の機能を備えた設えへと整いました。

リノベーションのきっかけ
大歩危峡 まんなかの一番の要望は、「時代に合った客室にしたい」というものでした。実際、“時代に合わない客室”を抱えて頭を悩ませる旅館やホテルは多く、かつてのバブル期には、いかに多くの客室を設け、稼働率を上げるのかを運営の第一の目標に掲げたものです。景気のよい時代はそれでよかったものの、あらゆる情報がインターネットを通じて入手でき、消費者の目も肥えた現代は“薄利多売”ではなく、お客様の満足度を高め、ひとり当たりの単価をいかに上げるのかという“クオリティ重視”の運営へとシフトしています。
大歩危峡 まんなかもまた、施設におけるお客様の体験をより充実させたい思いから、今回のリノベーションに踏み出しました。
ご要望&解決 住友林業の施設リノベーションではこのように解決しました
お客様の体験をより充実したものに、と願うものの、一番のネックは大歩危峡を望めない部屋が存在することです。オーナー様もまた、これを課題と認識していました。そこで、住友林業ホームテックは、「客室の空間そのものを楽しめるデザイン」をコンセプトにリノベーションをご提案。ベッドのヘッドボードからは、立ち昇るかのようなやわらかな照明の光の演出を、室内は間接照明が生み出す上品な灯りを落とすことで「何もしない」を楽しめる、落ち着きの空間を生み出しました。
オーナー様からいただいたもうひとつのリクエストが、「地元の素材と木質感を取り入れた客室にしたい」というもの。その要望に合わせ、インテリアに阿波和紙を額装したアートパネルを取り入れたほか、ソファまわりには木目の美しさが持ち味のオーク材を使用し、散策で疲れた心身を癒せる心地よさをつくりだしています。

リノベーションのポイント
時代に合わせたリノベーションの実現にあたって、オーナー様と私たちが行ったのは、ターゲットの明確化です。大歩危峡 まんなかはその名のとおり、大歩危峡のほぼ中央に位置し、大歩危峡という観光資源を有しています。ここにやってくる多くは、「都会を離れて日本の自然と原風景をゆったり満喫したいと考える、国内はもとよりインバウンドのお客様です。
「外国のお客様を意識するだけで、リノベーションの方向性が見えてきます」と語る担当者は、和の要素を意識し、室内に畳のコーナーを設置。日本らしさを求めて訪れるお客様の要望を満たすだけでなく、足を伸ばして広々とくつろげる空間を用意しました。 一方、今回のリノベーションで簡素化したのが客室風呂です。お宿は大浴場、露天風呂、貸切風呂、さらにはエリア内唯一となる岩盤浴と充実した温泉施設を有しています。そのため、客室風呂はなくし、シャワールームのみに。
「その時々に必要と思って設備を増やしたり、増改築を行ったりするうちに構造や動線は複雑化していきます。リノベーションのタイミングによっては、過剰な部分を削ぎ落とし洗練させていく作業もまた必要です」(担当者)

リノベーションの成果
今回のリノベーションでもっとも喜ばれたポイントは、ギャップを感じられる要素を随所に取り入れた点です。大歩危峡の壮大な景色を目の前に望みながらも、客室では、あえて非日常や安らぎを表現することで「大歩危峡にいるはずなのに」という意外性と期待以上のくつろぎを演出しています。
大歩危峡 まんなかのコンセプトである「客室の空間そのものを楽しめるデザイン」とは、“滞在を純粋に楽しむ”ことでもあります。地元独自の文化やアートを取り入れながら施設本来の良さや可能性を引き出す。大歩危峡 まんなかのリノベーションは、古き良きものに新しい価値を加えることであり、今昔の融合を得意とする住友林業ホームテックならではの強みが大いに生かされています。オーナー様からも「あらゆる要望に応えていただいた結果、想像以上の客室になりました」と、私たちの励みになるコメントをいただいています。
オーナー様の声
リノベーションを図りたいと思うものの、その方向性は漠然としているなか、住友林業ホームテックさんは、ひとつひとつのやり取りをていねいに拾われ、私たちの言葉にならない思いを形にしてくださいました。お部屋のさまざまなところに地元の特色である藍色を伝統的な資源として活用いただき、どこにもないオンリーワンの空間に仕上がったことに大変満足しています。インバウンドのお客様にも自信を持ってご提供できる、自慢のお部屋になりました。