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暮らしに身近な「樹」。
「街路樹」は何のために植えられている?
街を歩いていると、ふと目に留まるのが街路樹。人工的な街の景色の中に、自然のあたたかみを感じさせてくれる私たちにとってとても身近な「樹」です。街路樹は、ただ景観のためだけに植えられているのではなく、さまざまな役割を持っていることをご存じでしょうか。全国的に多く植えられている樹種やその理由、また多彩な役割などを知ると、何気ない街の景色が少しだけ特別に感じられるかもしれません。
何気ない街の景色に溶け込む「街路樹」
暑い夏に、街を歩いていたり、バスを待っている時など、街路樹の木陰はとてもありがたいものです。日差しを遮り、ほんの少しでも涼しさを、さらさらと風に揺れる葉擦れの音からも心地よさを感じさせてくれます。
また、春から冬へと移ろう四季を、葉の色や繁り方、花などによって伝えてくれます。日々の景色になじむ街路樹は、私たちの暮らしに最も身近な樹木といえるかもしれません。
現在、全国には約670万本近くの街路樹が植えられているそうです。何気なくそこに立っているように思える街路樹ですが、実は枯れにくさや管理のしやすさなど、さまざまな条件のもとで選定されていると言われています。
※道路緑化樹木本数:高木約670万本(2017年時点)
出典元:国土技術政策総合研究所ホームページ 「国総研資料 第1050号 わが国の街路樹 Ⅷ」(2017年)
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そもそも「街路樹」の役割は?
街路樹の役割は、主に以下のようなことが挙げられます。
- 街を歩く人たちを強い日差しから守る
- 都市の気温が周囲よりも高くなる「ヒートアイランド現象」の緩和
- 排気ガスや騒音を和らげる
- ドライバーの視線をみちびく
- 街の中で目印になる
- 季節を感じさせ、街にうるおいを与える
- 街に野鳥や虫などを呼び、自然がもたらすみずみずしさを演出する
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生き物である「木」
街路樹には、前記のとおりさまざまな役割があります。街になくてはならない存在といえますが、木は生き物であるため、その管理は簡単ではありません。ただ「美しい」というだけで街路樹を選定することは難しいといえるでしょう。
たとえば東京では、明治末まで植えられることの多かった柳を改めるようになり、「近代都市にふさわしい」街路樹が選定されるようになったそうです。現代ではどのような樹種が全国で多く植えられているのでしょうか。 -
街路樹に多い樹種は「イチョウ」や「サクラ」
街路樹として多く取り入れられているのは「イチョウ」です。イチョウは、大気汚染にも強くタフな樹種。秋になると葉が黄色に色づいて美しい姿をみせてくれます。ただ、あまりにもイチョウばかりが街路樹として並ぶと画一的な街並みになってしまうという意見もあったようです。
また、明治時代から植えられているサクラも、目にする機会が多い街路樹です。サクラは春に美しい花を咲かせ街を華やかに彩ってくれます。ですが、根が浅く歩道に植えていると舗装を持ち上げてしまうことも。
管理のしやすさや見た目の美しさはもちろんですが、安全に歩行できる環境づくりができる樹種であるかも、街路樹の選定として大切なポイントなのです。
「街路樹」のこれから
私たちの暮らしに寄り添う街路樹ですが、現代の街は木にとって育ちやすい環境といえるでしょうか。排気ガスにさらされ、小さなスペースに植えられることで根を広げられないなど、ストレスがかかることもあるでしょう。
また、人にとっても木の根や枝が広がり過ぎて通行の支障になったり、落ち葉で滑りやすくなってしまうことは避けたいものです。
それらをふまえて樹種を選定し正しく管理していくことが、人と街路樹がよい関係で共存していく鍵になるのかもしれません。私たちも街路樹を目にしたときには、そのようなことにも思いをはせたいですね。
