寝室リフォームで気をつけたいこと 施工例を参考に理想の部屋を実現しよう

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リフォームでは、老朽化しやすい水まわりや耐震改修が優先となってしまうため、寝室などの居室はリフォームの優先順位が低い箇所でもあります。しかし、近年では生活の質を向上させるためのリフォームも人気です。寝室などのパーソナルスペースを、よりよい環境に作り替えるリフォームに注目が集まっています。

国土交通省「令和2年度 住宅市場動向 調査報告書|P233 問7 リフォームの動機(複数回答)」を基に作図

寝室は「寝る場所」という定義がありますが、趣味のためのスペースや書斎、最近では在宅ワークの用途などの"こもる部屋"として兼用するのに、実はとてもおすすめの場所でもあります。その理由は、住宅内や集合住宅などの間取りでは、「静」と「動」の動線をなるべく分けるように設計されているところにあります。

多くの住宅では、キッチンやリビング・浴室を近い場所にまとめ、2階や玄関の近くに寝室や個人の居室を配置していることが一般的です。これは寝室が水まわりの生活音やリビングの話し声といった騒音の影響を受けにくいよう配慮された間取りだからです。

せっかくの場所を、趣味や仕事のスペースに利用しないのは実にもったいない! そこで今回は、寝室を機能的に、そしてゆったりと過ごせる場所にするためのリフォーム方法を紹介します。

寝室で機能的に使えるもの

寝室は快適かつ機能的に過ごすためのさまざまな設備を付加することで、より利便性が高まります。これからリフォームを行う場合は、下記の設備について検討するとよいでしょう。

コンセント

寝室では、電気スタンドや加湿器、電気毛布やサーキュレーターなどさまざまな家電を使用します。さらに個人それぞれのスマートフォンやモバイル端末を充電するという家庭も多いでしょう。仕事用のパソコンや周辺機器、テレビ等も置くとなると、コンセントの設置は計画的に行いたいものです。なお、8畳ほどの広さの寝室には、2口×2カ所以上のコンセントが必要です。
近年ではスマート家電といって、声やスマートフォンで操作できる製品も増えています。特に寝室には、声で操作できる照明や設定した時間に自動でオンオフできるオーディオやTVの機能を多用すると便利です。

ウォークインクローゼット

(引用)リフォーム事例 大阪府 I邸  住友林業のリフォーム

寝室は毎日の着替えなどの身支度をする部屋でもあるため、ウォークインクローゼットが直結していると便利です。そして、ウォークインクローゼット内のスペースが余っている場合には、書斎として一部リフォームするのもひとつの方法です。壁や仕切りでスペースを区切ることで、同じ部屋でありながら、アクティブなスペースとリラックスのスペースをしっかりと分けることができます。
デスクカウンターを設置して照明やコンセントを増設する、空調は書斎使用時にドアを開け放ち寝室の設備を利用するなど、応用の幅はさまざまです。

広い収納スペースやデスク

(引用)リフォーム事例 大阪府  住友林業のリフォーム

寝室を使用する幅が広がると、室内に置くものも同時に増えていきます。これらがゴチャゴチャしてしまうようでは、ゆったり休む空間からは遠ざかってしまうことも。そうならないように就寝前には生活感が出てしまうものを片付けられる広い収納を取ることがおすすめです。
書斎スペースに使用する本棚やデスクは、ベッドスペースからある程度離れていると、作業と休憩の切り替えがよりスムーズに行えます。

採光や換気のための窓

ゆったり安眠できる空間のためには部屋の空気もとても重要です。特に布製品が多い寝室は、夏場は湿気がこもりやすく、冬場は乾燥しがちになります。空気の入れ替えは体調管理にも役立ちます。質の良い睡眠のためには体内時計を正常に働かせることも大切です。朝の日の光を感じられる窓があると、よりよい目覚めにつなげられるでしょう。

布団を干せるベランダ

良い睡眠のためには寝具の衛生管理も大切です。とはいえ、寝具は大きく重いもの。干す作業はかなりの重労働となります。外に出すまでの動線はなるべく短いほうが家事の負担軽減と時短につながります。

空調設備

空調設備はいまや必須と言えますが、最近では空気清浄機付きのもの、温度調整や自動清掃など便利な機能が付いた製品がさまざまあります。特に温度調節のためのセンサーが搭載されたエアコンは、人体や家具の表面温度を計測し、自動で温度・風向き・風量を調節してくれるので、寝室にはピッタリの製品です。

調光式の照明

身体を睡眠モードにするためには、照明のオンオフよりも段階的に照明を落としていくのがおすすめです。調光に加え、スピーカー付きの照明器具もあるので、寝室で映画や音楽を楽しみたい方におすすめです。ベッド上で操作できるリモコン式、もしくは声やスマートフォンで操作できるスマートホーム対応の照明器具を選択するとよいでしょう。

鍵付きのドア

寝室はプライバシー性の高いスペースです。仕事や趣味に集中したい場合は、鍵を設置すると安心して没頭できる空間づくりにつながります。
特に二世帯同居や三世帯同居においては、家族に見られたくないものを保管する場所としても利用でき、小さなお子さんに触れてほしくないものや大事な書類を守ることにも役立つでしょう。

落ち着いた雰囲気の壁紙

一番簡単、かつガラッと雰囲気を変えるには、壁紙の貼り替えがおすすめです。壁は面積が広いため、色や柄はインテリアに大きく影響します。ベッドや家具の色と合わせてカラーを統一させると、色の情報が少なくすむため、目や脳を休めることにも役立つでしょう。
除菌・消臭機能付き壁紙や、調湿機能付き壁紙などもあるため、寝室で気になる問題の対策として取り入れるのもおすすめです。

背の高い家具などの地震対策

安眠のための大切な要素のひとつに「災害への備え」があります。寝室は生活のなかで一番無防備な状態で過ごしているため、地震対策はとても重要です。不安要素を取り除くことや、緊急時の素早い避難につなげるためにも、背の高い家具の固定などを行いましょう。

扉付きの収納棚を設ける

視界に入る情報が多いと、脳が休まりにくくなってしまうため、寝室では基本的にはスッキリとしたディスプレイを心がけたいものです。収納棚などは扉付きのものを多くし、見せない収納をメインにしましょう。

断熱窓、遮光カーテン

寝室の窓は、住宅のなかでも遮光性や防音性を最大限に高めるべき箇所です。断熱窓を使用することはもちろん、カーテンでも遮光性や防音性、断熱性を高めることができます。
防音性を高めることで室内の音を外に漏らさず、外からの騒音も防ぐことができます。窓やカーテンの性能にもぜひ注目してみてください。

ベッドや布団の配置計画

日本人は就労者の睡眠時間が世界各国の平均と比べて特に短く、なかでも家事の負担が大きい女性のほうが、睡眠時間が短いという調査結果があります。

三島和夫. 睡眠と生活習慣病との深い関係. e-ヘルスネット.厚生労働省. (2021)

限られた睡眠時間で、いかに質の良い睡眠を得られるのかは、現代の日本人にとって重要なことなのかもしれません。
それでは具体的に、寝室のメインである「寝る場所」をどのように配置すればいいのでしょう。洋室・和室ごとにご紹介していきます。

洋室におすすめのベッド配置

(引用)リフォーム事例 静岡県 H邸  住友林業のリフォーム

ベッドは使用方法や構造上どうしても湿気がこもりやすいものです。少しでも多くの面に空気が流れるようにするため、ベッドは壁にピッタリ付けないようにしましょう。
また、床からある程度の高さがあるベッドは視界が広く、さまざまな情報が目に入りやすい特徴があります。ドアや窓など、人の出入りや外の様子などが視界に入らないような配置をおすすめします。

和室におすすめの布団配置

畳敷きの和室を寝室にする場合、布団は毎回、使用後には収納することが前提となります。
布団を片付けることで、空いたスペースを休憩や作業に活用できます。布団を上げ下げする動作のためのスペースが必要となるので、家具を置きすぎないようにしましょう。
また、就寝ポジションは畳とほぼ同じ低い位置になるため、背の高い家具が視界に入ると圧迫感があったり、部屋が狭い場合にはきゅうくつに感じたりしやすくなります。
基本的に家具はすべて背の低いもので揃え、空間に余裕を持たせると、安心感につながります。
また和室であってもベッドを使用することも可能です。特に足腰が不自由な高齢者には、和室であってもベッドを使用するとよいでしょう。
デザイン性を重視する場合は、すのこタイプがおすすめです。通気性も良く、和室にも合わせやすいアイテムです。

(引用)リフォーム事例 三重県 I邸  住友林業のリフォーム

寝室設計の注意点

寝室の照明は、寝転がったときに光源が直接視界に入らないよう、間接照明を多用すると良いでしょう。着替えの際に使う姿見やドレッサーといったミラー類も、視界に入らない位置に置くなど工夫が必要です。
窓の日よけにはブラインドではなくカーテンをおすすめします。ブラインドはデザイン性に優れていますが、断熱性や遮光性、遮音性能が低いため、日差しの強い方角の窓や寝室の窓にはあまりおすすめできません。
またペットと同室で寝る場合は、ペット用のベッドを置く位置など動線計画にも注意しましょう。

まとめ

(引用)リフォーム事例 静岡県 T邸  住友林業のリフォーム

理想の寝室として、旅館や高級ホテルを思い描く人も多いのではないでしょうか。生活感が少なく、広くゆったりしていて開放感のある寝室は、よりよい睡眠にピッタリの条件が揃っています。

旅館などの広い寝室は、自宅の限られた面積ではなかなか実現が難しいものの、寝室の理想を明確に持つことは、プランニングをするうえでとても大切です。
ご自身にとってどういった雰囲気の部屋がゆったりできるのか、どのような機能があったら便利なのかを経験をもとに探っていくことが、理想の寝室を作る重要なポイントとなるでしょう。