視覚障害・聴覚障害に適応した住環境リフォームを考えよう

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視覚障害や聴覚障害のためのリフォームには、障害のレベルだけでなく、受障の年数が長いかどうかや、先天性か後天性かなどにも配慮することが大切です。特に後天性の場合や、受障して間もない場合は、本人が自分の能力の変化にまだ慣れていないこともあり、その状況下で住環境を変えるというのはとても大変なことでしょう。軽度の方、残存能力がある方も多いため、個人の能力を生かしたリフォームをすることが大切です。

視覚障害や聴覚障害を持つ人は、残存能力、触覚、嗅覚などを駆使し、「空間認識」という能力を利用します。そのため、空間認識の助けになる工夫や配置をすることが重要です。また個人の能力だけでなく、障害に合った福祉用具を活用することなども考慮し、それらが日常的に使いやすい環境も守られなくてはなりません。

視覚障害者のためのリフォーム

(引用)リフォーム事例  住友林業のリフォーム

視覚障害がある人の場合は、空間を広く取れる間取りや配置にすることが大事です。下記のような項目が、それぞれポイントとなります。

家具の配置

  • 壁に沿って一列に配置する
  • 床置きの家具はなるべく固定する
  • 生活に必要なものや重要なものは、視覚で捉えやすいよう動線に沿って左右に配置する

手すりの設置

手すりは、歩行する際のガイドレールとして使用できるため設置は望ましいでしょう。ただし、袖口が手すりの端に引っかかり、転倒につながるなどの危険性があるため、手すり端部は必ず壁側か下方に折り曲げる必要があります。

廊下・ドアの幅員

一般的なバリアフリーにおいては、車いすの通行を前提としており、廊下やドアの幅は広い方がよいとされています。一方、視覚障害者においては「両手で幅員が確認できること」が望ましいとされており、廊下や開口部を広くするリフォームは特に必要ありません。広すぎるとドアの場所が分らないなどの問題が発生してしまうことも考えられます。
ただ、なかには四肢不自由などの重複障害があるケースも少なくなく、介助や歩行器、車いすを必要とする場合には、廊下や開口部に850mm程度の幅が必要となります。

聴覚障害者のためのリフォーム

聴覚障害がある人の場合、聴覚の妨げとなる雑音はできるだけ排除したいものです。具体的には、下記のようなものが挙げられます。

会話の際に聞き取りを困難にさせる生活音

換気扇や空調設備などの機械音、テレビや屋外の車や工事の音

補聴器使用時に不快な響きをする生活音

食器同士があたる音やテーブルに置く音、新聞をめくる音、スリッパによる足音、家具をひきずる音などの摩擦音

必要音をしっかり聞き取るためには、必要音以外の雑音に対する対策が必要です。基本的には、家電類は必要なとき以外は電源を落とす、止められない音からは距離を取るなどの対策を習慣化させることが第一です。また、屋外の音が補聴器の使用に影響を及ぼす場合には、二重窓にするなどの防音リフォームをおすすめします。

(引用)マンションリフォームの断熱技術  住友林業のリフォーム

手話などを明確に判断するための照明

聴覚障害者にとって重要なコミュニケーション手段である手話や筆談は、日常的に行われるものであるため、これに関わる不便さやストレスがなるべく少ない環境整備が求められます。小さな動きや表情の変化などをはっきりと捉えられる灯りは必須です。

床材・壁材の選定

(引用)リフォーム事例  住友林業のリフォーム

各居室で異なる床材を使用することは、方向案内にも役立ちます。カーペットひとつでも、毛の長さや質感の違いによってさまざまな種類があり、その触感の違いにより部屋を区別することができます。そのため、各部屋の床材は違うものにしたほうが、より明確に部屋を区別できるでしょう。ただし、敷物の端に足を取られないよう、床全面に敷くことが前提となります。
滑りやすいビニル系の床材や、残存視覚のじゃまをする反射率の高い光沢のある床材は使用しないほうがよいでしょう。

ふき取りのしやすい壁紙を

視覚障害を持つ人の多くは、壁や手すりなどを伝って歩くことが想定されます。そのため、通常使用の壁紙に比べて汚れやすいこと、手を付ける部分をきれいな状態に保つことを踏まえ、掃除のしやすい壁紙が最適でしょう。具体的には、凹凸の少ないビニル系のクロスなどがおすすめです。

非常時・災害時の対策

視覚障害・聴覚障害者にとって、住宅内の危険性としてもっとも高いのが非常時の対策です。日常的な危険性と比べて発生率はかなり低いですが、万が一の対策も忘れてはいけません。

視覚障害者は非常アラームや警報を察知することはできますが、避難経路の安全性はあらかじめ考えておく必要があります。一方、聴覚障害者はアラームや警報自体を察知することが難しく、視覚や触覚に頼る以外に方法がありません。安全な避難経路の把握や警報アラームをライトやバイブレーション等で感知できる専用のシステムなどが必要となります。

まとめ

視覚障害・聴覚障害のためのバリアフリーにおける基本的な考え方は、すべての配置が単純で分かりやすく直線的で最短距離であることです。動線上の床や手をつくところに物を置かないことは、常に気をつけたいことです。これは緊急時の避難経路を妨げないためにも必要な管理となります。
また、視覚・聴覚障害者は、日常的に使用する福祉用具が多く、眼鏡や補聴器等のほかにも外部スピーカーやパソコン、各所の照明や専用の電話機、コミュニケーションツールなどを使用します。電源を必要とする機器や設備も多いため、コンセント数を多めに設置しておくと安心でしょう。その際はコード類が床に配線しないよう壁側や天井で配線処理を行います。

整理整頓、必要な用具の使用と管理は、毎日のことなので、常に整理整頓しておくことはなかなか難しいものです。どうすれば快適な生活が送ることができるのかを、障害を抱える本人と相談し、安全性と使いやすさのバランスを備えた住まいを実現しましょう。