エネファームの費用や寿命は? 導入のメリットから補助金情報まで詳しく解説

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2016年11月、国連会議の場で発効された「パリ協定」は、大気中の温室効果ガス濃度を安定させることを究極の目的とした国際的な取り決めです。この協定に批准するため、日本でもCO2排出量削減に向け、官民そろってさまざまな取り組みが進められています。住まいの省エネルギー化の促進もまた、そのひとつです。

今回は、こうした環境面に寄与でき、さらにはお財布にもやさしい家庭用燃料電池「エネファーム」について詳しく解説します。エネファームの導入を検討している方は、ぜひ参考にしてくださいね。

エネファームとは

エネファームとは、「エネルギー」と「ファーム(農場)」による造語であり、「ガスを使って発電する家庭用燃料電池」のことをいいます。
都市ガスやLPガスから取り出した水素と空気中の酸素を電気化学反応させて発電したときに発生する排熱を使用してお湯を沸かし、タンクに貯めて給湯に回すというシステムです。タンクのお湯が無くなった場合や暖房時には「エコジョーズ」などの高効率ガス給湯器でお湯を作るので、省エネに貢献しつつ毎日を快適に過ごせます。

エネファームには2種類の機種があります。排熱回収効率が高く、家庭のお湯の多くをまかなうことができるのは「PEFC」タイプ。発電効率が高く24時間発電することで、商用電力をより抑えられるのは「SOFC」タイプです。
毎日お風呂に入る、家族が多いなど、お湯を使う頻度が高い家庭は「PEFC」、家庭での電気使用量が多い場合は「SOFC」が良いでしょう。ライフスタイルに合わせて適切かつ最適な機種を選ぶようにしましょう。

エネファームの使い方

エネファームは、お風呂や洗面所で使うお湯、テレビやエアコンなどの電気をまかなうだけでなく、床暖房やミストサウナなどの設備も利用できます。

また、ガス給湯暖房機使用の住宅と比較するとCO2排出量を年間約1.2トン削減できるとされています。今までどおりの生活を送りながら、地球環境にやさしく無理のないエコな生活が実現できます。

導入のメリット

エネファームを導入するとさまざまなメリットが得られます。ここでは、代表的なものを紹介しましょう。

1.電気・ガス、トータルの光熱費がおトクになる

エネファームで発電した電気を家庭で使用できるため、電力会社からの購入電力を削減できます。ガス代は上がりますが電気代が下がるため、光熱費全体としてはお得になります。

2.床暖房などガス温水暖房設備が利用できる

ガス温水による床暖房、浴室でのミストサウナや雨天時の洗濯乾燥など、ガス温水を使用した暖房設備が各種利用できます。

3.災害時も安心! 停電時でも発電できる

エネファームはいざというときに役立つ「レジリエンス機能」を標準搭載しています。このレジリエンス機能とは、停電時でも発電できる機能のこと。エネファームを製造しているパナソニックは、「停電した場合であっても最大8日間、給湯や床暖房が使え、断水時には貯湯タンクから生活用水として利用することができる」とウェブサイトで紹介しています。(※1)

4.ライフラインが止まっても対応できる

停電や断水など、ライフラインが止まってもエネファームが発電してくれるため、夜中でも困ることはありません。照明やテレビもつけられます。ガスが止まった場合にもエネファームでお湯を沸かせるので、温かいお風呂にも入れます。手洗いやトイレも使用できます。

導入から廃棄まで

暮らしを便利にし、有事にも頼もしいエネフォーム。実際に導入するとなったら気になるのは費用です。また、廃棄時にはどのような点に注意すればよいのでしょうか。

1.導入のタイミング

新築時や給湯器の取替えの際に導入するのがベストです。既設のガス給湯器に後付けできる機器も登場しているので、導入したいと思ったときでも問題ありません。

2.エネファームの価格

エネファームには、生活面でのあらゆるメリットや安心感がありますが、初期費用は高めです。本体価格はメーカーにもよりますが、たとえば大阪ガスが提供している停電時自立発電機能付きのエネファームは200万円を超えています。(※2)
製品以外にも設置費用などが別途かかるので、いくつかの販売店に見積りを取って比較するようにしましょう。

3.エネファームの処分方法

エネファームは、廃棄物の処理等に関する法律に則り、適切に対処することが求められています。エネファームを撤去・処分する際は、必ず購入した販売店に相談するようにし、自分自身による解体・廃棄は絶対にしないようにしましょう。販売店が不明な場合は、ガス会社に問い合わせるとよいでしょう。機種にもよりますが、エネファームの寿命は約10年とされています。

補助金を使ってお得に導入

政府は、エネルギーの有効利用を促進することを基本方針とし、家庭用燃料電池(『エネファーム』)を2030年までに530万台普及させることを目標としています。(※3) これにともない、自治体による補助制度や融資制度も整備されています。こうした制度をうまく活用し、エネファームを賢く導入しましょう。
ここでは、エネファーム関連の補助金制度をご紹介します。

1.国からの補助金は2020年度で終了

2009年度から開始された国からのエネファーム補助金は2020年度をもって終了しています。
編集部が一般社団法人 燃料電池普及促進協会(FCA)に取材したところ、「今後、国から補助金が出る予定はない」との回答でしたが、以下の業務は今後6年間継続されるようです。(※4)

  • 財産処分 6年間の財産処分制限期間内に処分する場合の申請受付
  • 補助金交付後変更 同期間内の変更手続き
  • 機器指定 新型エネファームの機器指定申請受付並びに登録業務

2.地方自治体の補助金制度

地方自治体のなかには、エネファームを導入する際の補助金制度が独自に用意されています。それぞれ内容や補助金額が異なるので、お住まいの自治体に確認してみましょう。
補助金例をいくつか表にまとめました。

▼令和3年度 地方自治体エネファーム補助金制度

地方自治体

補助金額

提出期限

問合せ先HP

宮城県

12万円/件

一次募集:令和3年5月17日(月)から5月28日(金)

二次募集:令和3年8月30日(月)から9月10日(金)

三次募集:令和3年11月29日(月)から12月10日(金)

https://www.pref.miyagi.jp/soshiki/saisei/smart-energy-r3.html

埼玉県

5万円/件

令和4年2月28日(月)

https://www.pref.saitama.lg.jp/a0503/hojyokin2.html

印西市

5万円/件

令和4年3月10日(木)

https://www.city.inzai.lg.jp/0000011764.html

新宿区

定額10万円

令和4年2月28日(月)

https://www.city.shinjuku.lg.jp/seikatsu/kojinshoenergy.html

藤沢市

5万円/件

令和4年2月28日(月)

http://www.city.fujisawa.kanagawa.jp/kankyou-s/machizukuri/kankyo/hojo/denchi3.html

※各自治体の問合せ先HPを参考に筆者作成

まとめ

エネファームは初期費用が高額ですが、年間の光熱費がおおよそ10万円安くなるのは大きな魅力です。災害時でも発電するので、ライフラインが止まってもお湯や電気を使うことができます。災害の多い日本においては大変心強い設備と言えるでしょう。また、床暖房やミストサウナなど快適な暖房設備を利用して、ご自宅を快適な空間にできる点もうれしいメリットです。

エネファームを導入すると「電気をつくる」「災害に備える」「お財布にやさしい」の3つが手に入ります。省エネ住宅に関心がある方にとって、エネファームは欠かせない検討事項と言えるでしょう。

※「令和2年度平均年収と学歴調査

※1 パナソニック「エネファームとは」
https://panasonic.biz/appliance/FC/enefarm/index.html

※2 大阪ガス「商品紹介」
https://home.osakagas.co.jp/search_buy/enefarm/lp/2020/index.html

※3 環境省「『エコジョーズ』と『エネファーム』、どう違うのかご存じですか?」
https://ondankataisaku.env.go.jp/coolchoice/topics/20170614-01.html

※4 一般社団法人 燃料電池普及促進協会「補助金制度のご案内」
http://www.fca-enefarm.org/subsidy02/index.html