リフォームで実現したい快適な住まい 蓄熱を活かした「省エネ住宅」の作り方

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日本のCO2排出量のうち、住まいが占めるものは16%(※1)と言われています。これは、住まいのエネルギー消費を減らすことは、CO2削減に大いに貢献できるとも言い換えられるでしょう。
その点、省エネ住宅は地球にやさしいだけでなく、そこに住む家族が健康かつ快適に、そして経済的に暮らせる生活を実現できます。そのうえで大切になるのが、住まいの「ゆるやかな温度変化」です。

今回は「蓄熱」を中心とした断熱リフォームについて解説します。

「蓄熱する家」が注目されている

ここではいま、注目されている「蓄熱する家」について簡単にご紹介します。

1.蓄熱を利用した住まいは省エネ住宅の基本

蓄熱を利用した住まいでは、私たちにとってもっとも身近で経済的なエネルギー資源である「太陽光エネルギー」を利用します。
太陽熱エネルギー活用型住宅では、屋根に設置された太陽光パネルなどでたくわえたエネルギーを、蓄熱建材をとおし吸収・放出します。さらには、室内外に用いた断熱材で外気の温度や熱を室内に伝えにくくします。
「断熱」と「蓄熱」により、冬は部屋の中の暖かい空気が逃げず、一定の温度に保たれます。夏は室外からの熱気が入らずに涼しい家が実現できます。これらから太陽熱エネルギー活用型住宅は、省エネルギーかつ快適な住宅であるといえます。

2.蓄熱リフォームで得られるメリット

蓄熱リフォームによって、使うエネルギーよりも創るエネルギーが上回る「ZEH(ゼッチ)住宅」に住まいが生まれ変わると、無駄なエネルギーを使わなくなるため、地球温暖化に貢献できるほか、個人的にもさまざまなメリットがあります。そのひとつが光熱費の削減です。蓄熱によりエネルギーを創出できるため、年間の光熱費が大幅に削減できます。

国土交通省の資料「なるほど快適安心な住まい 省エネ住宅」では、省エネ基準のグレードが上がるほど光熱費が安くなると紹介しています。昔の家と比較して寒冷地である北海道札幌市では年間12万円以上、温暖地と区分された東京都23区でも6万円以上の節約になると試算されており、かなりの節約効果を見込めるといえます。

国土交通省資料「なるほど快適安心な住まい 省エネ住宅|P12 年間の光熱費比較」の情報を基に作図

蓄熱リフォームのメリットは、経済的な効果だけではありません。住まいを一定の温度に保つことができるため、たとえば「顔はほてるように暑いのに、足元はひんやり」「リビングは暖かいけれど廊下は凍えるように寒い」といった寒暖差がなくなり、いつでも家のどこにいても、快適に過ごせるようになります。

蓄熱リフォームは、家族の健康も守ってくれます。昔ながらの住まいは、リビングは暖かいものの一歩廊下に出ると外気温と変わらない室温ということも少なくありません。血圧の変化を起因に起こるヒートショックは、冬の入浴時に暖かい部屋から寒い廊下や脱衣室を経て熱い湯ぶねにつかることで起きており、非常に不安視されています。

その点、省エネ住宅の基本である「室温が一定化した環境」は、各部屋の温度差が少なく快適に過ごせるため、「家族の健康を守る」ことにもつながっています。

蓄熱リフォームで室温を安定化

住まいの室温を一定化するには「蓄熱材」と「断熱材」をうまく組み合わせることが必要です。ここでは、蓄熱材を使用したリフォーム方法を紹介します。

1.潜熱蓄熱建材で内装をリフォーム

潜熱蓄熱建材とは、エネルギーが状態変化する際に吸収・放出する潜熱を住宅での蓄熱に利用する建材のことです。室温に近い温度域でも少量で大容量を蓄熱できるという特徴があり、季節を問わず室温の変動を抑え、快適な室内空間を実現します。断熱性の優れた建物に使用することでより大きな効果がねらえます。

冬季は、昼間の熱を潜熱蓄熱建材で蓄熱することで日差しによる室温の温度上昇を抑えます。そして夜に放熱することで、夜の暖房負荷が軽減され室温が安定するのがメリットです。一方、夏季は冬季と逆のパターンとなり、日中は温度が高く夜間に下がる地域では、夜間に蓄冷した潜熱蓄熱建材が日中になると放冷します。真夏でも、エアコンに負荷がかかり過ぎないのがメリットです。

2.蓄熱式床暖房

蓄熱式床暖房は、床下空気層に届いた熱い空気を蓄熱コンクリートに貯めながら、床吹き出し口をとおって家全体を床から温めるシステムです。夜間も蓄熱コンクリートから放熱を続け、家の中の温度差を軽減します。室内の空気が乾燥しにくく、からだにもやさしい暖房システムと言えるでしょう。
ただ、床下のコンクリートに管などを入れ込むため、新築時や大がかりなリフォーム時でなければ設置するのは難しいといえます。

断熱リフォームで熱の移動を少なくする

室内の温度を快適に保つには「蓄熱」のほかに「断熱」も必要です。ここでは、断熱によるリフォーム方法について解説します。

1.高性能建材による住宅の断熱リフォーム

断熱リフォームとは、建物を断熱施工することで、外気の熱を室内に伝えにくくするもので、主に5つの種類があります。

窓断熱

高い断熱効果を得られるリフォームとして人気です。「カバー工法+複層ガラス」「内窓の取りつけ(二重窓)」が主な対応策です。

天井断熱

冷暖房効果を高めます。

床断熱

冬の足元の冷たさがこたえるという方には、特におすすめです。

外壁断熱

天井断熱同様、夏は室内への熱の侵入、冬は熱の流出を抑えます。

浴室断熱

ヒートショックによる事故が発生しやすいバスルームでも、断熱リフォームによって脱衣所と浴室の寒暖差を小さくできます。

2.断熱のポイント

断熱リフォームの重要なポイントは、床・外壁・天井・屋根など外気に接している部分を、断熱材で隙間なく包み込むように施工することです。隙間があると「熱が逃げる」「結露が発生する」などの不具合が発生します。また、開口部の断熱性能を高めることも大切です。なかでも窓は熱の出入りが大きく、冬の暖房時に室内から逃げてしまう熱の約6割を占めるとされています。

なお、夏の冷房時に室外から侵入する熱の約7割も窓などの開口部からによるものです。窓のサッシを木やプラスチックを使った断熱サッシに取り替え、ペアガラスを入れると断熱性能が高まります。

まとめ

今回は、健康的に長く住み続けるために必要な「蓄熱・断熱リフォーム」について詳しく解説をしていきました。

断熱リフォームだけでも室温を一定化する効果がありますが、蓄熱建材を使用したリフォームを付加することで、より温度にムラのない快適な住まいが実現できます。各部屋の室温差がなくなると、居住者の血圧が低下する傾向もあるとされています。(※2)

からだにやさしい断熱リフォームで、いつまでも元気に暮らせるマイホームを実現し、快適な毎日を過ごしましょう。

※「令和2年度平均年収と学歴調査

※1 環境省「地球に、家族に、家計にやさしい省エネ住宅!」
https://ondankataisaku.env.go.jp/coolchoice/kaikae/housing/

※2 「国土交通省「なるほど快適安心な住まい 省エネ住宅|P14 各種疾患の改善と転居した住宅の断熱性能との関係」
https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/shoenehou_assets/img/library/naruhodosyouenejuutaku.pdf