建物の寿命を大きく左右する「結露」 解決策を詳しく解説します

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木の家は日本の風土に適しており、住む人の健康やこころにやさしい温もりを与えてくれます。
そんな素晴らしい木の家ですが、結露により木材が湿ってしまうと木材腐朽菌が繫殖しやすくなり、建物に影響を及ぼすことも。

大切な住まいがそうならないために、今回は高断熱の木造住宅において、どのような対策を取ればよいのかを詳しくご紹介します。

木造住宅における結露とは

ここでは、結露が発生するメカニズムや種類について解説します。

1.結露発生のメカニズム

結露とは空気中の水蒸気が凝縮する現象で、暖かく湿った空気が冷たいものに触れると水滴へと変化することです。たとえば、冷たいジュースを注いだコップの表面に付く水滴、冬に曇る窓ガラスも結露の一例です。一般的に冬は結露が発生しやすい環境といえます。

2.結露の種類

近年、結露を起こす原因は多様化しています。ここでは主たる4種類を紹介します。

▼結露の種類

結露の種類

発生時期・部位

特徴

冬型表面結露

冬期、室内

さまざまな原因により、室内湿度に比べて壁・床・窓等の表面温度が低すぎる状態になると結露を生じる

冬型内部結露

冬期、躯体内

温度が低い内貼断熱・充填断熱の小屋裏・壁内部等に、防湿の不備などにより室内の水分が流れ込んで結露を生じる

夏型結露

夏期、 躯体内

日射等により温度が上がった木材などから放出された水分が、壁内等の湿度を急上昇させて結露を生じる

非定常結露

随時、コンクリート面等

温度変化しにくい柱・梁・床・基礎のコンクリートなどに、一時的に高湿空気が接して結露を生じる

国立保健医療科学院「建築の結露と健康性 |P107 図―2 結露対策の流れ(例)」を参考に筆者作成

3.一番多く発生する部位は「窓」「サッシ」

以下、「居間の結露とカビの発生割合」のグラフを参照すると、居間の結露は「窓・サッシのみ」に多く発生していることが分かります。これは言い換えると、外気と接する部位ほど、結露が発生しやすいということです。なお、壁、天井、床、押し入れに発生した住宅は、「その他の部位に発生」でカウントしています。
結露がカビへと移行するケースは、割合にしておおよそ半数程度。これは、全国をエリアごとにセグメントし、傾向を見た場合においてもほぼ同じことが言えます。

科学技術振興機構「住宅における結露・カビの発生要因に関する調査研究|P366 図1 居間の結露,カビの発生割合」を基に作成

結露が木造住宅に与えるダメージ

ここでは、結露が木造住宅に与えるダメージについて解説します。

1.木材腐朽菌が発生して建物が劣化

木造住宅の天敵のひとつは、ズバリ「水分」です。木材に一定以上の水分が含まれた状態が長期間継続すると、建物内外に存在する「木材腐朽菌(木材を劣化させる菌)」の生育に好適な条件となり腐朽が発生します。
木材腐朽菌の生育には水分のほかに栄養分や適切な温度、空気(酸素)が必要ですが、活動に適した温度範囲と空気は人の居住環境と同じため、制御することはできません。
そのため、腐朽を防ぐためには水分を制御することが最も重要な対応策となります。

2.結露が発生すると健康被害へとつながりやすい

断熱性・気密性の性能が低い住宅は結露が発生しやすく、カビやダニの発生を増加させてしまうおそれがあります。カビやダニの発生は、アレルギーや感染症など健康被害の原因となるため、湿気を寄せ付けない断熱性能はとても重要です。

3.壁や床の汚れや漏水につながることもある

結露による湿った状態が続くと、さまざまな悪影響が発生します。たとえば鋼材への結露は錆の発生や塗装が剥がれる原因となり、窓枠に溜まった結露の水があふれてしまうと壁や床を汚したり、漏水につながったりもします。

下記は、結露が壁を汚し、カビが発生した写真です。カビは見た目が悪いだけでなく、上述のとおりアレルギー疾患が発生するなど健康面での悪影響が心配されます。結露が発生しないように、あらかじめ適切な防止策を講じることが必要です。

高断熱の木の家の結露防止策

近年の木造住宅は省エネルギーだけでなく、結露や建物の劣化を未然に防ぎ快適に暮らすために高気密で高断熱な構造が必要とされています。ここでは、高断熱の木の家で結露を防止する対策について紹介します。

1.建物の外皮(外壁・屋根など)に通気層を設置する

ひとつ目は、建物の外壁や屋根に通気層を設置する「通気構法」を用いる方法です。これを行うことで壁内に流入した湿気や雨水を排出できるほか、夏季を中心に発生する日射熱を外装から排出する効果が得られます。サイディングなどの乾式外壁の採用は、そのひとつの方法として挙げられます。一方、モルタルなどの湿式外壁は「直張り構法」が多く、漏水や結露が発生しても水分の逃げ場がありませんが、通気構法によっては防水対策に効果の見られるものもあるため、検討の余地があると言えるでしょう。

国土交通省 国土技術政策総合研究所「省エネと結露」の情報を基に作図

2.室内側に防湿層を設置する

室内の湿った空気が壁内、床下、小屋裏へと流れると結露の原因になります。そのため、防湿層を室内側に設置して室内で発生した水蒸気の壁内への流入を抑えることが必要です。これを行うことで、内部結露が発生しにくい環境になります。特に寒冷地で透湿抵抗の低い断熱材を使用する場合は、断熱材と一体になっていない別張りとなる防湿シートを設置することが効果的です。外壁、天井、床下などを住宅の外側から隙間なく連続して全体的に包むことが断熱気密の施工の基本となります。
なお、気密性の高い低いにかかわらず、原則として居室には換気装置の設置やそれによる換気回数が法令で定められているので、高気密住宅でも室内の空気がこもる心配はありません。ただし、気密性の低い場合は、室内の換気が適切にコントロールできないことが起こりうります。

3.暖房機器などで温湿度環境をコントロール

室内の湿度が高すぎると、住宅内に結露やカビが発生する確率が高まります。
石油ファンヒーター等の暖房器具は、燃焼する際に多量の排気ガスや水蒸気を発生するので、使用する際には換気を十分に行わなくてはなりません。なお、灯油1Lを燃焼させると1.13kgの水蒸気が放出するとされています。一方、エアコンや床暖房機器など電気を使用する器具では、一般的に水蒸気を発生させません。
結露を防ぐため、室内の温度、相対湿度、空気環境が適切になり、省エネルギー性が高くなるような暖房機器で室内環境をコントロールしましょう。結露が発生しやすい部屋には温湿度計を設置し、温度管理をするのもおすすめです。

4.室内の風通しを良くする

日頃から室内の風通しを良くするのも重要です。春や秋など快適な季節や時間帯には、エアコンをつけるよりも窓を開けたほうが効率も良く、電気代もかかりません。窓を開けての換気が難しい場合には、換気扇や除湿機を活用するというのも良いでしょう。また、結露を発見したときには、こまめに拭き取ることも大切です。

5.断熱効果の高い窓やサッシに交換

通常のガラスやサッシより断熱効果の高い複層ガラスや断熱サッシへの交換や、樹脂サッシを取り付けて二重サッシ化すると断熱性が向上し、結露を防ぐことができます。近年では、複層ガラスより熱を伝えにくい「Low-E複層ガラス」も開発されています。二重サッシは窓と鍵を2回開け閉めする手間がかかるものの、空き巣が簡単に侵入できないため防犯面でも優秀です。

まとめ

今回は、木造住宅の最大の敵ともいえる「結露」について、詳しく解説しました。

結露が発生するとせっかくのマイホームが劣化してしまうだけでなく、アレルギーなど健康上の被害も発生するおそれがあります。また、結露の保証は「住宅品確法」「瑕疵担保履行法」の対象外のため、たとえ新築後であっても保証対象になりません。

マイホームを購入する際には、結露が発生しにくい住宅であることを契約前によく確認しておきましょう。