寝室のバリアフリーリフォーム 介護とプライバシーを両立させるために考えたいポイント

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住宅におけるバリアフリーは、手すりやスロープの設置、引き戸への取替えや段差の除去などが一般的にもよく知られているものです。しかし、それ以外のバリアフリーとなると、なかなかすぐには思いつかない方も多いのではないでしょうか。

高齢化が進む社会のなかで、在宅で過ごす期間が延びている現代。住宅や生活の「質」を高めることが、これからの住宅に必要なこととなります。

バリアフリーとは、高齢者や障害者にとって安全であることはもちろん、身体機能に不自由な箇所があっても不自由と感じにくい環境を整え、豊かな生活ができることを目指すものです。

そこで今回は、生活のなかでも特に多くの時間を過ごす、「寝室のバリアフリーリフォーム」についてご紹介します。

寝室と動線の配置計画

(引用)リフォーム・リノベーション事例 S邸 No.570 事例詳細  住友林業のリフォーム

寝室は、呼び出しや緊急時に備えて家族の目が届きやすい配置が理想的ですが、安全性を尊重しすぎて、プライバシー性を損なってしまわないような配慮も必要です。

基本的に平屋の考え方で配置を計画し、動線を同一階の近い距離にまとめます。リビングなどの広い居室と隣接させることによって、万が一の緊急時の避難も比較的スムーズに行えます。
このほか具体的には、下記の項目を目安にするとよいでしょう。

  • トイレを隣接させる
  • 洗面所や浴室・ダイニングなどもなるべく同一階にする
  • リビングなど家族の目の届く位置に隣接させた場合、一角を可動式パーテーションなどで仕切る(ただし、家族と生活時間帯がずれる場合は配置に注意)
  • 換気や衛生面から、窓の設置を検討する
  • (車いすを使用する場合)居室の広さは8畳以上を目安にする
  • 建具は引き戸などとし、有効幅1,600mm以上とする
  • 寝具はベッドを使用する

なお、部屋は基本的に洋室がよいと考えますが、和室を希望する場合は、洋室の一部に床から450mm程度の高さのある畳コーナーを設けるとよいでしょう。

(引用)お客様の声 愛知県名古屋市 S様 築30年  住友林業のリフォーム

このほか、掃き出し窓からテラスなどに出入りしたい場合は、車いすの通行に対応したサッシなどを検討する必要があります。というのも、木造の基本的な寸法の窓(1,820mm)は、介助用の車いすは通れますが、自走用の車いすはギリギリ通れる寸法しかなく、通行が困難となるためです。

全体的にいえることですが、開口部は車いすや歩行器を使用することを想定し、有効幅に気をつけましょう。また、戸を開放している状態で、寝室からも家族の顔が見られるような配置にすると安心感を得られます。着替えの際や就寝時には戸を閉めることを習慣化することで、寝室のプライバシーのレベルを調節できるでしょう。

床の仕上げ材

床は、フローリング敷きが基本です。カーペットやコルクにしたい場合はタイルカーペットなど、メンテナンスや張替えのしやすいものを選択するとよいでしょう。リビングや居間など家族の動きが多い部屋と隣接させる場合は、リビングの床を吸音材やカーペットにするなど配慮しましょう。

立ち上がりの際に滑りにくいこと、掃除がしやすいことが床材の基本です。
自力排泄が出来ない場合などは、やはり床の汚れなどを想定し、拭き掃除のしやすいフローリングが衛生的でしょう。

照明器具などの配置

(引用)リフォーム・リノベーション事例 S邸 No.526 事例詳細  住友林業のリフォーム

照明器具は、光源が直接視界に入らないように配置します。仰向けで寝ている状態で光源が視界に入ると、なかなか寝付けなかったり、ストレスの原因になったりしてしまいます。シェードのついた照明器具や間接照明などを利用し、ベッド上から直接光源が見えない配置をしましょう。
深夜にトイレに行く際など明るすぎない照明が欲しいときは、フットライトを設置すると、強い光による刺激を軽減しつつ、安全を確保できます。室内にいくつかの照明を設置し、時間帯や用途に合わせて照明を調節しやすいようにするとよいでしょう。リモコン操作や音声操作が可能な照明器具であることが望ましいといえます。

家具の配置とインテリアコーディネート

(引用)リフォーム・リノベーション事例 T邸 No.550 事例詳細  住友林業のリフォーム

介護用ベッドはかなりの重量があるため、移動には人手と労力がかかります。そのため、配置図を作成するなどの事前計画が大切です。ただし、作成にあたって建築図面は必要ありません。実際に部屋の寸法や家具の寸法を測って簡単な図を描くことで、家具を配置するとどのくらいスペースに余裕があるかをイメージしやすくなります。

新たに家具を購入する場合はカタログだけでは分かりづらいため、ショールームなどで実物の使い勝手なども確認することが大切です。このとき、機能性だけでなくデザイン性にも優れたユニバーサルデザインの家具などを探すとよいでしょう。テーブルやイスなどは高さが調節できるものが身体機能に合わせやすく、利用者が快適に使えます。

こうした機能や安全性に加え、衛生状態を保つため、必要に応じイスやソファにカバーをつけるなどし、メンテナンスにも配慮することも考えたいところです。
なお、配色は、明るい色を使うのがおすすめです。高齢者向けに渋い濃い色の家具を選択しがちですが、一部分だけにでも明るい色を取り入れると雰囲気が変わり、気分も明るくなります。茶色系の濃い色は和室の雰囲気を出すことができ、重厚感もありますが、視力が弱くなってくると壁や床の位置を正確に視覚で捉えにくくなってしまいます。床が暗い色なら壁は明るい色にするなどのメリハリのある配色は、転倒や打撲の減少にもつながるでしょう。
さらには、出かける意欲や身なりを清潔に保つ気持ちを持ち続けてもらうために、全身が映る鏡を設置すると良いでしょう。

まとめ

要介護であったり在宅で介護を受けたりする場合は、主に寝室が介護を受ける場所となり、人の出入りや介護の動作に対応できる広さが必要となります。また、テレビやパソコンなどの家電や介護に必要な機器類の設置もあるでしょう。コンセント類も壁だけでなく、床や天井など、どんな機器にも対応しやすい配置で接続できるよう設置しておくと便利です。また、緊急時の呼び出しのためのインターホンやコールスイッチなどは、利用者の安心感につながるため、設置するのがおすすめです。

高齢者の居室においては、視力の低下などにもより掃除などの手入れが行き届かないことも増えてきます。こうしたことにもすぐに気がつけるよう、家族の目の届きやすい配置、常に家族の誰かがそばにいる配置が理想的なのです。しかし、高齢者は生活時間帯が若い世代とは合わないことも多く、その時間帯のズレ気にならないようにするためにも、やはり部屋を仕切るなどの区別をつけたいところです。

見守りが常に必要であったとしても、ある程度のプライバシー性をしっかりと持たせることで、こうした生活のズレによるストレスの軽減にもつながるでしょう。