ペットと人の快適な暮らしのためのリフォーム 取り入れたい機能と住環境

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人が健康を保ち、健康寿命を延ばしていくためには、生活の中心である住宅の環境がとても大切です。これは、ペットの健康にとっても同じことが言えるでしょう。万が一、ペットが病気やケガがした場合にかかる医療費は、人間のそれより高額になってしまうことも珍しくありません。

ペットの健康と言っても、その種類や年齢などによって、かかりやすい病気や起こりやすい障害はさまざまです。
現在の日本では、あらゆる種類の犬や猫が飼えるようになりましたが、なかには日本の気候や風土に合わないものもいるでしょう。たとえば、日本犬は、夏毛と冬毛を使い分けることで体温調整をしています。これは四季の移ろいがあり、気候の変化が厳しい日本の環境に合った生態と言えます。しかし、近年人気の犬種トップ5は、柴犬を除いた全てが洋犬であり、長毛種も多く含まれます。6位以降も、ポメラニアン、パピヨンと洋犬が続いており(※1)、現在、日本で飼われている犬種の多くは洋犬の小型~中型犬であることがわかります。

▼日本でペットとして飼育されている犬種(上位5位・令和元年現在)

順位

犬種

1位

トイ・プードル

2位

チワワ

3位

柴犬

4位

ミニチュア・ダックスフンド

5位

ポメラニアン

一般社団法人ペットフード協会「令和元年 全国犬猫飼育実態調査|主要指標サマリー P21」の情報を基に作表

近年は、猛暑や大型台風・ゲリラ豪雨など、異常気象ともいえる気候の変化もあり、人間だけでなく、ペットを取り巻く環境も過酷になってきています。このことを踏まえると、ペットの飼育においては環境をはじめ、さまざまな配慮が必要と考えられます。

今回は、犬猫を中心としたペットが、人間とともに快適に暮らせるリフォームをご紹介します。

ペット飼育に必要なリフォーム

ペットの飼育をリフォームの軸においた場合、以下に紹介する項目をヒントにリフォーム案を膨らませると、ペットにとって居心地の良い住まいになります。これは、人間にとっても良い住環境につながると言えるでしょう。なぜなら、リフォームによって住まいの傷みや汚れが低減される、掃除がしやすくなる、空調環境が整うなど、"暮らしやすい我が家"が実現するからです。

ペット用フローリングに張替える

滑りにくく汚れにも強く、掃除のしやすい、ペット専用のフローリングがあることをご存知でしょうか。見た目と機能性の両方を叶えたい場合には、こうしたペット用の床材へのリフォームが良いでしょう。

クッションフロアやコルクタイルに張替える

滑りにくいクッションフロアやコルクタイルに張替えることは、動物の足腰の負担軽減に最適です。既存の床材の上に、これら素材を敷くという方法も良いでしょう。
衝撃を吸収するクッション効果で、体重の重い大型犬などの足音対策にも適しています。ただし、一般に掃除しにくいのが難点です。

既存のフローリングに、滑り止め加工を施す

リフォーム会社などでも、「UVコーティング」と言われる、ペット用の滑り止め加工を行っています。グリップ性に優れ、塩素系の薬剤にも溶けない耐久性にも優れたフロアコーティングです。また、家庭用のフローリング用滑り止めワックスなども一般的に広く販売されています。
ワックスがけをするだけなので簡単に滑り止め加工が出来ますが、専用の床材や業務用のコーティングに比べると性能は低く、定期的に塗り直すなどのメンテナンスが必要です。

(引用)リフォーム事例  住友林業のリフォーム

断熱

ペットのリフォームで見落としがちなのが「断熱リフォーム」です。断熱材施工のほかに、窓を二重窓にするなどの方法もあります。特に二重窓は防音効果もあるため、鳴き声対策にもなるでしょう。
真夏は気温が35度を越える日もあるので、24時間エアコンを付けっぱなしにするご家庭も少なくないでしょう。これは人が快適に過ごすためにも必要でもあり、さらに省エネ住宅にも効果が期待できるリフォームでもあります。

住宅の壁は一般的にクロス貼りが多く施工されています。素材は布・紙・ビニルとさまざまですが、なかでも広く使用されているのがビニルクロスです。価格・耐久性・デザイン性に優れており、メンテナンスもしやすくコストパフォーマンスが高いのですが、残念ながら素材自体は柔らかいため、動物の爪には弱いと言えます。猫には爪研ぎの習性があるため、壁がダメージを受けることは避けられません。なかには、爪とぎによって壁紙に使われている接着剤や内側の建材が露出することを懸念される人もいるかもしれませんが、平成15年の建築基準法改正からホルムアルデヒドなどの有害物質を含むものの使用が禁止されており、人やペットに悪影響を直接与えるものではありません。そのため、壁紙がボロボロになってからリフォームを検討するでも、遅くはないでしょう。

壁紙でもペット用の製品は数多く販売されています。引っかき傷に強い、表面強化タイプのものをはじめ、消臭効果のあるもの、汚れや撥水性に優れたものなど、さまざまです。壁紙の張替えを考えているのなら、こうした機能性壁紙にすることおすすめです。

このほかに内装タイルを使ったり、珪藻土・漆喰といった塗り壁に変更したりする場合にも、耐久性や消臭性に優れたペット向け製品があります。

近年は、腰壁などデザイン性に優れた建材も増えており、好みに合わせて選べる楽しさもあるでしょう。

(引用)リフォーム事例  住友林業のリフォーム

屋外に必要なペット用リフォーム

この章では、ペットを外飼いするご家庭に向け、玄関まわりや庭などのリフォームのポイントを紹介します。

ドッグラン

外飼いの場合は、犬小屋、鎖を固定する杭や金具・柵、これらを設置するスペースが必要です。
地面は、夏場を涼しく過ごせる芝生がおすすめですが、犬の場合は芝生を掘り返してしまうこともあるでしょう。かといって、砂利敷きや砂場の部分を多くすると、そこを掘り返したことで石が飛び、玄関や縁側のガラスが割れてしまうこともあります。これらを防ぐためにレンガ敷きや石張り、コンクリート敷きにすることも考えられます。汚れに強く、メンテナンスもしやすい素材なのですが、冬場は犬小屋の中まで底冷えしてしまうデメリットが。

ドッグランを造作する場合は、ペットにとっての良い環境を第一に考え、たとえば屋内の一部をペット用にリフォームし、夜間や冬季は屋内で飼育することを検討するなど、さまざまな配慮を行うようにしましょう。

洗い場用水栓

室内外、どちらで飼育する場合でも、専用の洗い場があると便利です。屋外飼育の場合は、犬小屋などの清掃のためにも水洗いできる設備を用意しましょう。

(引用)リフォーム事例  住友林業のリフォーム

日よけ

日当たりを考慮し、犬小屋の位置や向きを調整しましょう。また、日影のない時間帯があるなら、屋根やパラソルを設置し、日よけをつくることをおすすめします。
日光に当たることはビタミンの体内形成にも必要かつ、皮膚病などの予防にも効果的なため、積極的に行うことが良いとされています。ただし、近年ではペットの熱中症などの事例も多く見られており、暑さへの対策はとても重要です。

まとめ

ペットのためのリフォームでは「消臭」「掃除しやすい」「汚れにくい」「傷つきにくい」といった点がポイントです。
犬や猫が床を汚したり、壁を傷つけたり、家具を壊したりすることは、動物たちの習性上しかたのないことであり、避けることはできません。キズや汚れが必ず日常化することを想定したうえで、どうやってペットの健康と住環境を管理していくのかを考えることが重要です。

ペットと暮らすことを軸としたリフォームは、ペットにとって良い住環境をつくることが主目的ですが、人間にとっても、掃除やメンテナンスをしやすくし、飼育するうえでのわずらわしい作業を軽減するためのものでもあります。
人間の生活環境にペットを迎え入れるためにも、彼らの習性に寄り添うことが、ペットのためのリフォームの基本となるでしょう。

※「令和2年度平均年収と学歴調査

※一般社団法人ペットフード協会「令和元年 全国犬猫飼育実態調査|主要指標サマリー P21」
https://petfood.or.jp/data/chart2019/3.pdf