離れで同居する二世帯増築リフォーム~増築の注意点とコンパクトな設計のポイント~

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二世帯同居を考えているけれど、「工事期間中に引越しが必要なリフォームや、大規模なリフォームはしたくない」という場合には離れを増築するという方法もあります。
世帯間で適度な距離が取れることからも、同居するなら離れが欲しいと考える方も多いのではないでしょうか。

増築とは、既存の建物の床面積を増やす工事であり、建物全体の床面積が大幅に増えるため、建築確認申請をする必要があります。また、敷地内に建てられる面積は建築基準法により制限があり、増築できる面積は限られています。増築は既設の本宅に合わせて建築しますので、既設の建物の位置や間取りも考慮しなければならず、クリアしなければならない条件が意外と多いのです。

今回は、増築にオススメの間取りと、離れを増築する場合に知っておきたい点などをご紹介します。

どれくらいの面積の増築が可能なのか

住宅やビルなど、どんな用途の建築物でも敷地に対しての建物の大きさの制限が必ずかかってきます。これは建物の密集度や高さを制限することで、それぞれの建物への採光や通気を確保し、また火事による延焼防止や消火のためなど、人間が生きていくのに必要な環境を保つために定められたものです。

敷地は「住宅地域」「工業地域」「商業地域」などのいずれかに区分されており、これによって建築物にかかる制限の内容が異なります。増築の際に気をつけたい制限は以下のとおりです。

  • 建ぺい率:敷地面積に対しての建築面積の割合。(住居地域では50~80%程の規定)
  • 容積率:敷地面積に対しての延べ床面積の割合。(住居地域では200~400%程の規定)
  • 北側斜線制限:北側の土地の採光を遮らないための高さ制限。
  • 道路斜線制限:道路への採光を遮らず圧迫感を出さないための高さ制限。

こうして見ると、敷地に対して建築可能な建物の面積は意外と小さいものです。
住宅の場合は敷地内に駐車場や庭などがあり、建物以外のスペースも広いため、新築であれば、この制限で困ることはあまりありません。ただし、増築はこうした法律に注意が必要です。

コンパクトな間取りのポイント

(引用)リフォーム事例  住友林業のリフォーム

コンパクトでもきゅうくつさや狭さを感じさせない間取りにする重要なポイントは、「廊下などの無駄なスペースをつくらないこと」「収納スペースを多くとること」の2つです。
ドアを開けたら次の部屋、という間取りにすることで、通路などの無駄なスペースを省くことができます。リビングダイニングなどの広いスペースをもつ居室を中心に各居室を隣接させることで、ひとつの大きな通路としての役割も持つことになります。
ムダなスペースやムダな動線を無くすのに最適なこの間取りは、家族の様子や動きを把握しやすく、コミュニケーションを円滑にすることにも役立ってくれるでしょう。特に思春期の子どものいる若い世代の家族におすすめです。

(引用)マンションリノベーション  住友林業ホームテック株式会社

個室やリビング、浴室やキッチンを設置しようとすると、優先度が低くなりがちなのが収納です。しかし、狭小住宅こそ建築時やリフォーム時にしっかりと収納スペースを確保しておきたいものです。

住宅は生活する年数が経つにつれ、家族の持ち物が増えていきます。クローゼットなどに空き容量がなくなると、棚や収納家具をどこかに増やすことになります。収納棚を後で増やすことは、そのぶんの床面積を少なくさせ、部屋が狭くなる原因になります。
設計の際には、壁面収納やデッドスペースを利用したクローゼットなど、収納をなるべく多く取りたいことを担当者に伝えるようにしましょう。

水まわり設備の工夫

建築可能な面積が少ない場合や予算に余裕がない場合は、母屋と設備を共有することを考えましょう。
特にキッチンや浴室などの設備は、設備費や機器代に加えて、配管工事なども必要です。このほか配置するための面積、それらを使用する水道料金や電気料金などのコストもかかります。

浴室やキッチンを共有することが難しく、でも面積や予算に余裕が無い場合は、離れのキッチンや浴室はコンパクトなものにする、浴室をあきらめてシャワールームにするなどの方法も良いでしょう。コンパクトなキッチンや浴室をお考えの場合は、実際にショールームなどでサイズや使い勝手を確認してみることをおすすめします。

そして、既設の本宅の間取りにも少し注目してみましょう。離れとはいえ、かなり近い距離で隣接することが考えられます。本宅の寝室などの隣に、離れのお風呂場やダイニングなどが配置されてしまうと、小さな子どもの騒ぎ声や生活音などの騒音問題が発生するおそれもあります。

住宅の間取りは「静」と「動」の空間を切り離すことも大切です。増築の場合は特にこうした本宅との兼ね合いにも注意してみてください。また、水まわりを近い位置に配置し、水道などの配管をなるべく近い位置にまとめたほうが配管の長さを短くでき、そのぶんの工事費削減につながります。また、騒音問題の解決にも役立ってくれます。

まとめ

増築は、新築や建て替え、リフォームなどの改築と違って、既設の建物に合わせて設計しなければならず、思ったよりも自由度が低いリフォーム方法かもしれません。しかし、比較的低予算で新築と同じような家に住むことができる点は、とても魅力的ではないでしょうか。

コンパクトな間取りは、足腰が弱ってきた高齢者向けの間取りにも適しているでしょう。将来のことも考慮し、段差を作らないことや、車イスが通れる動線を取っておくことが理想です。

増築に関わる法規がクリアできるかどうかは、精密な数値の算出とその証明が必要になります。まずは増築が可能かどうか、またどれくらいの規模の建物にできるかを、設計担当者に確認するところから始めましょう。