リフォームで実現しよう、自然素材を使った健康で心地よい住まい

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現代の建売り住宅やマンションは、ビニルクロスや木目調のクッションフロアなど、工業製品の内装材が一般的に使われています。これらの製品はかつて日本の住まいで使われていた無垢の木材や畳、漆喰等に比べると大量生産しやすく価格も安いため、一般的に普及するようになりました。しかし、昨今ではそうした工業製品の素材でできた家から、自然素材を使った住まいにリフォームする事例が多くなっています。

今回は、さまざまな自然素材の魅力やその使い方について解説していきます。

健康につながる自然素材の家

林野庁の調査によると、住宅購入者が住宅を選ぶ際に価格以外で重視することとして、「健康に配慮した材料の使用」と回答した人は全体の74%にも上っており、現在では住まいで使われる材料への関心が非常に高くなっていることがわかります。また、「内装への木材の使用」「木材の国産材の使用」といった項目も3割を超える人が重視しており、木の温もりや肌合いを求める人も多いと言えるでしょう。

林野庁「木材産業の競争力強化と新たな木材需要の創出について|住宅を選ぶ際に価格以外で重視すること」の情報を基に筆者作成

実のところ、自然素材は化学製品の内装材と比べると健康によいのでしょうか。
無垢の木材を用いた部屋とビニルクロスを用いた部屋で睡眠時の湿度を測定した実験では、季節に関わらず無垢の木材の部屋のほうが、湿度が低くなる結果が出ています。この結果から睡眠時の発汗や呼気による部屋の湿度の上昇を、木材の調湿作用によって抑えていることがわかります。

林野庁「木材・木造建築物の環境への効果|睡眠時、内装の異なる部屋の季節ごとの湿度比較」の情報を基に作図

このように自然素材は温もりや肌合いといった感覚的な要素だけでなく、科学的にも健康によい影響を与えることがわかっています。

温もりを感じる無垢の木材

自然素材のなかでも最も多く使われているのが木材ですが、木の温もりやにおいを特に感じられるのが無垢材です。小さな木片を集めた集成材とは異なり、切り出したままの木材ですので、木目がひとつひとつ異なり、豊かな表情を見せてくれます。

無垢材はあらゆる部位に用いることが可能ですが、最も多く用いられるのは床材です。床は常に足元が触れている部位ですので、無垢材の温もりや、やわらかな肌触りを十分に感じることができます。

床だけでなく、壁や天井に無垢の木材を用いるリフォームの事例も多く見られます。床と樹種を変えて表情の違いを楽しんだり、コストを抑えるために壁にワンポイントとして無垢材を使ったりすることもひとつの方法です。

無垢材は表面に表情をつける「なぐり加工」を行うこともできます。日本の伝統的な表面加工の方法ですが、より豊かな表情で無垢材ならではの質感を感じることができます。
無垢の木材を使用する場合は、植物系の自然塗料を使用すると木の風合いや肌触りを残したまま、耐久性を維持させることができます。

引用)住友林業のリフォーム「オーセンティックフォレスト

調湿作用のある漆喰・珪藻土

現代の住宅の壁や天井はビニルクロスが一般的ですが、それに代わりシンプルな素材ながら優しい肌合いや陰影をつけられる素材が、漆喰や珪藻土などの左官材です。どちらも左官による仕上げ材としてポピュラーな素材ですが、その主原料は異なります。漆喰は石灰石、珪藻土は珪藻と呼ばれる藻類の化石が堆積した土を原料にしてつくられています。
どちらも調湿作用があることがメリットとして挙げられます。1年を通して室内の湿気が安定するので、部屋がジメジメすることがほとんどありません。

漆喰はビニルクロスに比べ、非常に高い調湿作用がありますが、珪藻土はそれ以上に調湿作用に優れた素材であると言われています。どちらも嫌な臭いを分解する消臭効果も持つ優れた自然素材です。

左官による仕上げは、平滑に塗るシンプルな方法から、くしびきや鏝(こて)の表情をつけた方法など、さまざまなテクスチャが可能なことも魅力のひとつです。

アクセントや床に使える石

木や土に加え、住まいに用いることができる自然素材が石です。特に、大谷石と呼ばれる栃木県で採掘される石は柔らかく加工がしやすいことから、壁材として用いられることがあります。
コストが高いイメージのある石材ですが、アクセントとして壁の一部や、玄関や水まわりの床材として取り入れることでコストを抑えつつ、壁や床に表情をつくることができます。

引用)住友林業のリフォーム「マンションリフォームとは

水まわりにも自然素材を

リビングやダイニングに限らず、浴室をはじめとした肌が素材に触れやすい水まわりの空間にも自然素材を用いることで快適な暮らしを実現することができます。脱衣室や洗面所に木の温もりや漆喰を取り入れることで、調湿を行いつつ、安心できる水まわり空間になります。
また、浴室には石材や木を用いることで入浴の時間がとても快適なものになります。コストを抑えたい場合はハーフユニットバスとし、腰より上の壁や天井に自然素材を使う方法も考えられます。

「ハーフユニットバス」とは、浴槽と床壁天井がセットでユニット化されたユニットバスと異なり、浴槽と床、浴槽の高さまでの壁だけをユニット化した製品であり、すべてをオリジナルでつくる浴室と比較してコストは抑えつつ、壁や天井に好きな内装材を使用できます。

引用)住友林業のリフォーム「リフォーム事例

心地よさをつくる木製サッシ

かつて日本の住まいには窓にも木製の建具が使われていましたが、気密性の観点から現代の住宅の外部建具のほとんどはアルミサッシや樹脂サッシ、アルミ樹脂複合サッシが採用されています。しかし最近では気密性を確保し、製品化された木製建具も販売されています。

木製サッシは、アルミサッシやアルミ樹脂複合サッシに比べ断熱性能が高く、樹脂サッシと同等の性能を持っています。加えて、アルミや樹脂にない木製サッシの魅力が、独特の温もりです。自然素材を用いたインテリアにも調和しやすく、部屋の心地よさをつくることに最も適した建具といえます。

引用)住友林業のリフォーム「数々の受賞実績

視線を遮り、光をやわらかく通す障子

木、土、石に加え、紙も古くからの日本の住まいに取り入れられてきた自然素材です。代表的な利用方法が「障子」です。和室に使うイメージが強いですが、素材の組み合わせ次第でモダンなテイストの空間にも違和感なく調和させることができます。

外からの視線を遮りながら光を通す障子は、非常に使い勝手がよい建具です。加えて窓の内側に障子があると二重窓のような形になるので、窓と障子が断熱層のように機能し、断熱性も確保できる点もメリットです。和室に限らず、リビングやダイニングで使用することもできる優れた素材の使用方法といえます。

eBASE Hello! My HomeP15-16

心地よい空間と調和する自然素材の家具

壁や床に限らず、家具にも自然素材を用いることで全体が調和し、やすらげる心地よい空間をつくることができます。たとえば、壁や天井がシンプルな白い素材であっても、収納家具や本棚、靴箱など造り付けの家具を木製にすることが考えられます。キッチン台に木を取り入れるのも良いでしょう。やさしい印象を持つ木質は、安らぎの雰囲気をつくるのに最適な自然素材です。

引用)住友林業のリフォーム「マンションリフォームとは

まとめ

代表的な木をはじめとして、石、土、紙などさまざまな自然素材を紹介してきました。
自然素材を使う際には、塗装のやり替えや日々の手入れが大切になってきます。しかし、言い換えれば、手入れを日頃から行うことでより長持ちする素材でもあり、そうすることで愛着のある住まいにもなっていきます。年月を重ねるとその表情も変わっていき、経年変化を楽しむことができるのも自然素材の魅力のひとつです。

一方でコストが高いイメージもありますが、アクセントとして取り入れる、家具や建具など生活するなかでからだが触れやすい部分に使用するなど、工夫次第でコストを抑えることもできます。

自然素材を使ったリフォームは、健康にもつながります。居心地の良い住まいとするために大切なひとつの方法といえるでしょう。