断熱ドアリフォームの断熱効果と注意すべき点~防犯性・デザイン性と共に考えたい、ドアの断熱性能~

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住宅の断熱性能が、室内の快適さに最も大きな影響を与えるのは、真冬です。冬の寒い夜、帰宅すると家が暖かくてホッとこころと身体が緩む、という経験をした人も多いのではないでしょうか。でも反対に、暖かい部屋から廊下や玄関に出ると、寒くて身体がガチガチ凍えてしまうという経験も。これは住宅の断熱性が向上し、暖房機器の性能が上がった現代の住宅においても、それほど珍しいことではありません。無駄なエネルギーは使わない、『省エネ』という意識がどの家庭にもあるためです。

家族がくつろぐ部屋だけ暖房を使い、通るだけの廊下や玄関は特に温度調節はしない。そのため、廊下や玄関が寒いことは、現代の住宅において当然かもしれません。しかし、高齢者の場合は、実は健康に大きな影響を与えてしまいます。たとえば夜中にトイレに行くことが億劫になったり、廊下や玄関が寒いことが原因で部屋に引きこもりがちになってしまったり。
これは足腰の衰えや筋力の低下にもつながり、健康年齢にも影響してきます。特に外出の頻度が減る真夏や真冬は、せめて家のなかだけでも気苦労なく動き回りたいものです。

そのために検討したいのが、断熱リフォームです。断熱リフォームは、省エネにも直結します。
断熱というと、壁や床・天井というイメージがありますが、外気の影響を強く受けやすい、ドアの断熱もとても重要です。

今回は、空調設備を持たない廊下や玄関を寒さや暑さから守る、「断熱ドアリフォーム」についてご紹介します。

室内の暖気が流出する原因の58%が開口部

一般社団法人 日本建材・住宅設備産業協会の情報を基に作図
※1999年の省エネ基準(次世代省エネ基準)で建てた家がモデル

暖房によって暖められた空気は、窓やドアなどの開口部から放出されるものがほとんどです。つまり窓やドアなどの断熱が、部屋の暖気を逃がさないために大きな効果を発揮するといえるでしょう。

開口部は窓やドアを開け閉めする時だけでなく、常に外気の影響を受けています。冬場に窓が開いていないのに窓際を寒く感じたり、ドアの直線上にいて隙間風を寒く感じたりしたことの方も多いのではないでしょうか。これは、ガラスや金属製サッシは熱伝導率の高い素材であることが多いためです。

また、玄関ドアや室内ドアは、特に開閉が多い箇所。ここも外気の影響をとても受けやすい場所です。断熱ドアや断熱リフォームをされていない玄関は、廊下までが外と変わらない気温になっている場合も少なくありません。玄関や廊下は、居室と隣接している間取りが多く、居室の快適さにも大きな影響を与えます。
冷暖房設備を使わない箇所だからこそ、しっかりとした断熱対策が必要となるのです。

断熱ドアへの取替えと注意点

外気に直接触れる窓や玄関ドアは、基本的に金属製(鋼製)である場合が多いでしょう。
防犯や風雨に対しての耐久性が高いことから金属が使われていますが、金属は非常に熱伝導率の高い素材なので、温度を伝えやすい一面もあります。ですので、断熱を考えるのなら、断熱仕様のドアを選ぶ必要があります。

金属製建具(鋼製建具)で断熱するには、ドアの構造と材質がポイントになります。玄関ドアの構造自体は基本的に空気の層ができる造りですが、これだけでは断熱は十分ではありません。

断熱ドアは、耐久性の高い金属素材に熱伝導率の低い素材などを複合することにより断熱性を高めています。またそれに付随し、ドア枠も断熱しています。ガラス入りドアの場合は断熱ガラスを採用し、隙間風の原因となるポスト等の小窓を設置しないなどの断熱方法があります。
また、断熱性能の高いドアほど製品の価格は高くなってしまいます。寒暖地の場合は、断熱性能の高い製品を選ぶと良いでしょう。温暖地であれば高レベルの断熱性は必要ないかもしれませんが、電気量などのランニングコストを考えると、やはり高い断熱性能を持つドアを選ぶに越したことはありません。

寒冷地で断熱ドアの普及率が低い理由

国立研究開発法人 建築研究所「開口部・窓の断熱化率」の情報を基に作図

寒冷地においては、壁や床などのグラスウール等による断熱材の普及率に比べて、断熱ドアの取付率が少ない傾向にあるようです。これは、玄関を二重ドアにしている家庭が多いことがその理由と考えられています。玄関スペースを挟んで外側と室内側に2カ所ドアを設置することで、風が直接室内に入ることを防いでくれるのです。
玄関周りの間取りや敷地に余裕がある場合は、こうした二重ドアの設置なども有効な断熱リフォームとなります。

また寒冷地は、その間取りも特徴的で、温暖地に比べて開口部の総面積が少ない造りになっています。こうした点からも、開口部から受ける外気の影響は多大であるということが分かります。

まとめ

最近では個人でも材料や道具が手に入りやすいため、断熱リフォームを自分で行う方もいるかも知れません。しかし、断熱リフォームは、結露計算や確実な気密処理などの専門的な知識と技術がないと内部結露の原因となり、建具や建物にダメージを与えてしまう場合もあります。

玄関ドアもボードやシートを貼ることにより熱伝導率を抑えることは可能ですが、これも錆や劣化の原因となってしまう可能性も。玄関ドア自体は、実はかなり複雑な構造になっているため、結露による劣化は開閉の動作などに影響してしまうおそれもあるのです。一時的な対策方法以外の断熱DIYリフォームは、あまりおすすめできません。

また、断熱性能が高いドアは、気密性が高く、構造も複層になり複雑なため、防犯性も高いと言えます。ただ、あまりに断熱性や耐久性を高めすぎると、ドアが重厚すぎて玄関の雰囲気も重くなってしまうこともあります。玄関ドアは家の顔にもなる重要な箇所ですので、デザイン性と機能性のバランスがドアを選ぶポイントとなるでしょう。

最近では、壁を壊さずに玄関ドアを取り替える「カバー工法」が増えてきています。1日で最新のドアや引戸に交換が可能です。大掛かりな工事にしたくない方は、まずはそこから始めてみてはいかがでしょうか。