二世帯リフォームの部分共有に関するメリット・デメリット

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二世帯住宅は、二世帯で住まいのどの部分までを共有するかによって暮らし方は大きく変わってきます。今回は、住まいの一部を二世帯で共有する部分共有型の二世帯リフォームについて解説します。

高まりつつある二世帯住宅へのニーズ

内閣府男女共同参画局の調査では年々共働き夫婦が増加しており、平成29年では男性雇用者と専業主婦からなる世帯数が641万世帯であるのに対し、共働き世帯は1188万世帯と約1.9倍の世帯数となっています。現在は夫婦共に働くことが一般的な時代になっていると言って良いでしょう。

内閣府男女共同参画局「男女共同参画白書(概要版)平成30年版|共働き世帯数の推移

また、国土交通省住宅局の調査によると、「親・子との同居」「隣居」「近居」を目的とした住み替えが昭和58年~平成20年まで5%前後で推移する状況であったのに対し、平成25年時点では10.6%と約2倍近くの数字となっており、近年の増加率は注目するべき変化と言えます。

国土交通省住宅局「平成25年 住生活総合調査|図17 最近5年間に実施した住み替えの目的」の情報を基に作図

親子二世帯が同居または近くに住んでいることで、育児や家事を親世帯がサポートできるようになります。このように共働き夫婦が大きく増加し、一般化してきたことが背景となり、二世帯での「同居」「隣居」「近居」の世帯数が大きく伸びてきていると考えられます。
フルタイムで働く共働き夫婦が多い現在、二世帯住宅へのニーズは年々高まっていると言えます。

二世帯住宅の3つのタイプ

二世帯住宅は、住まいのどの部分までを共有するかにより、大きく3つのタイプに分けることができます。二世帯リフォームを行うにあたっては、思い描く暮らし方や各世帯の線引きをどこまで行うかについて親子世帯が十分に話し合うことが大切です。

完全同居タイプ

リビング、キッチン、水まわり、玄関などを共有し、ひとつ屋根の下に二世帯が同居するタイプです。寝室や子ども室は家族の構成に合わせてそれぞれ設けつつ、それ以外の部屋は線引きをせず二世帯が一緒になって大家族のように暮らすイメージのタイプです。

完全分離タイプ

世帯ごとにリビング、キッチン、水まわり、玄関を設け、それぞれのプライバシーを確保することに考慮したタイプです。1階に親世帯、2階に子世帯といったように階ごとに世帯を分ける方法や、同じ敷地内で2棟に分けるなど、分離の方法はさまざまなバリエーションがあります。各世帯は独立させつつも、扉を設けてお互いを行き来できるようにするなど、適度にコミュニケーションを取れるような間取りも考えられます。

部分共有タイプ

同居タイプと分離タイプの中間となるようなタイプが部分共有タイプです。住まいの一部を二世帯で共有しつつ、その他の部分は世帯ごとに分けて適度にプライバシーを確保したタイプです。リビングやキッチンなど滞在時間の多い空間を分けつつ、玄関を二世帯で共有するといった方法が、二世帯住宅で最も多くみられる方法です。

リフォームによる二世帯住宅で考えること

リフォームによって二世帯住宅とする場合は、暮らし方のイメージだけでなく、既存の住まいの間取りや面積、構造、予算といったこともタイプを選択するうえで重要な判断要素になってきます。
たとえば親世帯の家をリフォームする場合、かつては子ども部屋や寝室となっていた2階をリフォームして子世帯ゾーンとし、玄関や水まわりを共有とすれば比較的容易に部分共有型のタイプにリフォームすることも考えられます。

完全分離タイプとしたいものの既存の住まいでは面積に余裕がない場合は、一部を増築し、既存部分をリフォームして二世帯化することも考えられますが、敷地に十分な余裕が必要になってきます。
このようにリフォームで二世帯化を行う場合には、各世帯の今後の暮らし方に加え、既存の住まいや敷地の状況、予算を考慮して各々の事情にあった選択や工夫をしていくことが大切です。

部分共有のメリット

「完全同居タイプ」と「完全分離タイプ」の各々の側面を併せ持つ部分共有タイプの二世帯住宅では、他のタイプにはないメリットを挙げることができます。

適度な距離感

部分共有の大きなメリットは、適度に世帯ごとのプライバシーを保ちつつ、一部が共有されていることで程よくコミュニケーションを取ることもできるといった点です。
たとえば玄関のみを共有すれば、玄関が帰宅時のコミュニケーションの場となりつつ、リビングでは夫婦2人でゆったりとした時間を過ごすことができます。
このようにプライバシーとコミュニケーションの両立を図れることが部分共有型の魅力ですが、どこまで分離し、どの程度交流したいかといったバランスは家族によりさまざまです。
二世帯が話し合ってお互いに適度なバランスでつながることのできる間取りを考えていくことが大切です。

共有部分を設けることによる建設コストの節約

二世帯それぞれが独立している完全分離タイプの二世帯住宅は、玄関、水まわりといった滞在時間の短い場所も二世帯分のスペースや設備機器が必要になるので、3つのタイプの中では最もコストが高くなってしまいます。部分共有にすることで、床面積が小さく抑えられ、また水まわりを共有すれば設備機器の数も抑えられるため、総じて住まいの建設コストを抑えることができます。完全同居タイプに比べるとコスト面では当然不利になりますが、同居型の生活が難しい場合には、コスト面でもメリットが多いのが部分共有タイプです。

各世帯の独立ゾーンを大きくつくることができる

完全分離タイプにおいて親子世帯それぞれに玄関、水まわりなどの空間を設けることに対し、部分共有タイプはそれらを共有することにより、各世帯のリビングやダイニングといった独立ゾーンに面積を使うことができるので、広々としたリビングやダイニングを確保することが可能になります。

部分共有のデメリット

部分共有タイプにもデメリットとなる部分があります。

生活リズムの違いによるストレス

一部のスペースを共有する部分共有型では、親世帯と子世帯の生活リズムの違いにより、お互いにストレスを抱えることもあり得ます。たとえば親世帯が就寝する時間に、子世帯の帰宅する足音や水まわりからの音が響くことでストレスに感じることが考えられます。
二世帯住宅に住む親世帯側にとって最も気になることの回答結果として、生活のペースを乱されることが最も多いといった調査結果も見られます。
二世帯化により、こうしたストレスを抱えないためにも、互いの世帯の生活リズムや遮音に配慮した間取りの工夫が大切になってきます。

二世帯住宅に住んでいてよくないこと

1位

生活のペースを乱される

2位

経済的負担が増える

3位

相手世帯の行動が気になる・気を使う

4位

自由に出かけられない

5位

料理する頻度や量が増える

東京ガス都市生活研究所「二世帯住宅に関する調査2013」の情報を基に作表

共有部分の水道光熱費を分担することが難しい

もうひとつのデメリットとして、共有している部分の水道光熱費を明確に区分することが難しいことです。そのため、共有スペースはどちらかの世帯が負担する場合が多いようです。親世帯が現役で働いているかどうか、子世帯の収入などを考慮して、互いの世帯が話し合い共有部分の水道光熱費の負担を決めることが必要になってきます。

共有する場所によるさまざまなバリエーション

二世帯住宅において共有される箇所で最も多いのは、滞在時間の短い玄関です。次いで共有されやすいのが浴室となっています。

部分共有型の二世帯住宅においては、どの場所をどこまで共有するかにより、さまざまなバリエーションの住まいが考えられます。たとえば浴室を共有する場合、入浴のタイミングが重複したり、間取りによっては子世帯が夜遅くに入浴する場合に物音が親世帯にとってストレスになったりすることが考えられます。そのような場合に備え、子世帯にシャワールームを設置しておくと、前述した問題を解決しながら、浴室を2カ所設置するよりコストを抑えてリフォームができます。

大きめのキッチンを共有すると、休日には二世帯同士で賑やかな食事と交流を楽しむことができます。その反面、忙しい平日などは調理時間が重複するとお互いにストレスになることも考えられます。どちらかの世帯にミニキッチンを設置しておくと、忙しい平日は簡単な料理で済ませ、休日には二世帯揃ってゆっくりと料理と食事を楽しむ、といったように平日と休日で住まいでの過ごし方を切り替えることができます。

リクルート住まいカンパニー「注文住宅動向調査2016」の情報を基に作図

まとめ

共働きが一般化してきた現在、子育てのサポートやアドバイスをしてもらえる親世帯の存在は多忙な子世帯にとってとてもありがたい存在です。親世帯にとっても、自身の将来を考えた際に子世帯との同居は大きな安心感につながります。

いざ二世帯で住もうとした際、お互いにプライバシーとコミュニケーションを適度にとりたい場合に最も適していると言えるのが、部分共有タイプの二世帯住宅です。部分共有タイプを選択する場合は、さまざまな共有のバリエーションが考えられますので、住まいのどの場所をどのように共有するのか、リフォーム前にお互いの世帯で十分に話し合うことが大切です。

二世帯化リフォームを行う場合は、既存の住まいの間取りや構造にも配慮しながら、共有部分によっては一部増築を行うなど、さまざまな方法を専門家と相談しながら検討していくことで、理想の暮らしや予算に合わせたリフォームが可能になります。
共に住まうお互いの生活を尊重しながら、お互いにサポートし合える部分共有タイプのリフォームは、住まいの上手な住み継ぎ方のひとつと言えます。