平屋で手に入れる、老後の"フリー"な暮らし ~快適で自由な空間と、危険を回避するバリアフリー~

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高齢者が健やかに暮らしていくなかで、もっとも危険な場所はどこだと思われるでしょうか。
道路、駅などの公共交通機関や、段差が多くなりがちな商業施設などを思い浮かべる方も多いかもしれません。あるいは、レジャーで出かけた山や川を連想する人もいるかも知れませんね。しかし実は、高齢者にとってもっとも危険な場所とは、「自宅」なのです。

高齢者の事故に多いのが、転倒・転落といった「ころぶ」、「落ちる」、そして誤嚥による「ものがつまる」が、挙げられます。

東京消防庁「救急搬送データから見る高齢者の事故」の情報を基に作図

そして、「ころぶ」事故の多くは、家庭内で起こっています。

東京消防庁「救急搬送データから見る高齢者の事故」の情報を基に作図

なお、発生件数から見て、「ころぶ」事故の多くは、「居室」と「階段」で発生していると考えられます。

内閣府「平成30年版高齢社会白書(全体版)|第2節 高齢期の暮らしの動向 図1-2-4-2」の情報を基に作図

特に階段で起こりやすいと思われる「転落」は、「転倒」と比べてケガの重症度も高いと予想されます。
やはり高齢者にとって、階段を使う生活はリスクが高く危険と言えそうです。多くの時間を過ごす家庭での安全を確保することは、高齢者にとって喫緊の課題なのです。

では、これらの事故を防ぐために、家庭内の危険除去を考えたリフォームとはどんなものなのかを見ていきましょう。

危険を防止するリフォーム

まずは家庭内事故が発生しやすい、危険な箇所のリフォームポイントを見ていきましょう。

段差の解消

加齢とともに運動機能が減少していくことに加え、視力の低下による段差の認識力も衰えます。敷居やドアの枠などによる段差は撤去しましょう。

埋め込み式の敷居や、吊り下げ式の引き戸等により開口部の段差を解消することが出来ます。

滑りにくい床材

たとえば、病院や介護施設などに使われる床材の多くは、ビニル系のシートやタイルです。
汚れがふき取りやすいので清潔に保つことができ、さらには歩きやすく滑りにくい床材で、一般住宅でも脱衣室やトイレなどに使用されています。
費用も比較的安く、張替えもしやすいですが、見た目が無機質であるためリビング等にはあまり向きません。
ビニル系以外の床材では、フローリング等の板張りがバリアフリーに適しています。

また、クッションフロアやコルクなどのやわらかい床材も、転倒時の衝撃吸収には役立ちますが、あまりにやわらかすぎては、車イスや歩行器などの操作が困難になってしまうことがあります。

浴室リフォーム

浴室で起こる「溺水・溺死」の原因は「ヒートショック」によるものです。これを防ぐためには浴室内の温度が低くならないようにすることが大事です。浴室断熱や浴室暖房機の設置により、入浴中の寒さを防止するようにしましょう。もちろん、浴室内でも滑りにくい床材などへの改修が不可欠です。

(引用)おすすめリフォーム設備  住友林業のリフォーム

浴室リフォームにはユニットバスへの取替えがおすすめです。
断熱、浴室暖房、滑りにくい床への変更のすべてがまとめてリフォームできます。

----ポイント----
"段差の解消""寒さ対策"は、家庭内の事故を防ぐポイントです。想い入れのある住まいを建替えるのは難しいという方は、今の住まいを平屋のようにリフォームしてはいかがでしょうか。

平屋の間取りの考え方をお伝えします

二世帯住宅の1階部分や平屋での生活に移行すると、これまでより居住面積が少なくなり、「何となくきゅうくつに感じるのでは」と、心配な方もいるのではないでしょうか。見晴らしや採光も、上階と比べると良くないのでは......と思う方もいるかもしれません。しかし、最近では、機能性やデザインの良さから、若い世代にも注目をされているのが平屋住宅です。

平屋の間取りには上記のようなタイプがあり、敷地の形や生活スタイルに沿ったものを選びます。

家の形状は敷地の形に左右される場合が多いですが、採光や庭周りを多く取りたい場合にはI型やL型がおすすめです。

たとえばI型の場合、広い奥行きを利用し、大きな窓を取ることによって、採光を確保し景色を楽しむことができます。また、キッチンや浴室などの「動」の空間と、寝室や各居室などの「静」の空間をしっかりと分離することも可能です。

ロ型の場合は、リビングを中心に各居室が隣接し、どの部屋へ移動するにも短い動線で済むという利点があります。

平屋の場合、少ない建築面積に必要な居室を配置するため、無駄のない間取りが基本となります。どのタイプも各居室の広さを確保するために廊下などは配置せず、リビングを基点として各部屋に移動する設計が平屋の特徴です。

実はこれが、住宅内の危険除去には最適な間取りとなるのです。リビングを中心に各居室への動線が短いことは、足腰が不自由になった時でも、移動の負担を軽減します。広い空間と、なるべく少ない仕切りで、将来の車イスや福祉用具の使用も楽になるでしょう。住宅内の床を仕切らずつなげることで、すべての床がフラットになり転倒を防ぎます。

こうした平屋の間取りが、高齢者の生活に適した間取りにちょうど適合するのです。

快適で安全な空間作り

家庭内の危険を除去するためには、二次被害を防止することも大切です。たとえば、万が一に転倒してしまった場合に、障害物に頭や身体をぶつけることのない対策も必要になるでしょう。

高齢者の事故の中には「ぶつかる」ことが原因になっているものも多いため、床にはなるべく物を置かず、壁から突出した飾り棚なども設置しないことをおすすめします。
とはいえ、家の中で趣味を楽しんだり、創作をされたりする方は、趣味のための道具や作品などが増えてしまう場合も少なくありません。物や棚が室内に増えてしまうと、やはり転倒の原因になることは否めないでしょう。そういったリスクを最小にするためにも、趣味のための部屋を別途設けたり、固定式の収納を多めに設けたりしておくと良いでしょう。

まとめ

高齢者の家庭内事故を防ぐための多くの要素が、平屋住宅には備わっています。また、二階建て住宅よりも建築費用が抑えられるため、若い世代にも人気で、デザイン性の高い平屋住宅が多く見られるようになりました。

近年は窓の断熱性能も向上し、大きな広い窓を設置しても、夏の日差しや冬の冷気に悩まされることもありません。家族との距離も近く、開放感のある空間を持つ平屋は、幅広い世代に適しているのです。また、2階建住宅と比べると建物自体の重心が低く、重量も少ないので、耐震性にも優れています。コンパクトな設計なので掃除もしやすく、構造がシンプルであるがゆえに補修や修繕などのメンテナンスがしやすいメリットも。

「無駄を省く」という平屋の間取りは、住宅内の危険を最小限に抑え、家族が安全に暮らせることにつながっているのです。