木造住宅の<屋根>のメンテナンス

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屋根は熱や紫外線、雨風にさらされる過酷な環境化にあるため、劣化しやすい部位のひとつです。屋根の劣化はそのままにしておくと、家そのものが傷む原因にもなりかねません。今回は、屋根の劣化症状と長持ちさせるメンテナンス方法について、住友林業ホームテック株式会社の一級建築士さんにお聞きしてきました。

屋根が劣化する原因とは

屋根は日光や雨などの影響を直接受けるため、どんなに丈夫な素材を使用していても経年劣化が発生します。それだけでなく、台風や豪雨などの自然災害で劣化してしまうこともあります。

色あせやコケによる表面劣化

屋根に紫外線が当たり続けると、表面の塗装が徐々に色あせしていきます。一方、日当りの悪い場所ではコケや藻、カビなどが発生する確率が高くなります。いずれも屋根の表面劣化のサインとして、築10年くらいから見られる現象で、放置すると屋根の寿命を縮めてしまうことになりかねません。

日本瓦の下地材劣化で雨漏り

築40年を超える住宅では、日本瓦の下地材に土が使われています。事例では経年劣化の影響だけでなく、ゲリラ豪雨や暴風時の雨で少しずつ土が流出してしまったことがあったそうです。そのままでは徐々に雨水が浸入するようになり、最終的に雨漏りを引き起こしてしまいます。これらの劣化は定期的なメンテナンスを行うことで防ぐことができます。

事例から見る屋根の劣化の症状

一級建築士さんが対応した実際のお客様の事例を元に、屋根の具体的な劣化について知っていきましょう。今回は屋根の色あせやコケ、ひび割れなどの事例をご紹介いただきました。

第一の原因は紫外線

―― 色あせの事例はどんな症状ですか?

一級建築士さん:屋根の色あせは築10〜15年ほどで起きはじめると言われます。事例としては、屋根材のひとつであるスレートを使った築15年の住宅で、もともと黒い屋根が灰色っぽく色あせていました。屋根は外壁や床下に比べると、割と変化がわかりやすいかもしれませんね。この家の場合は、高圧洗浄でキレイにしてから塗装して修繕しました。スレート屋根は、基本的に10〜15年で再塗装をご案内していますが、適時期を逃すと表面が傷み過ぎて塗装ができない状態になってしまいます。そこまで劣化すると、全て葺き替えという大掛かりな修繕になってしまう可能性もあります。色あせは見た目が損なわれるだけでなく、家自体の劣化にもつながるので適切な処置が必要です。

屋根の色あせ

―― 定期的なメンテナンスの重要性がわかりますね。

一級建築士さん:もちろん塗装を重ねていても、住宅をより長持ちさせるためには30〜40年くらいで屋根全体の葺き替えが必要になってきます。ただ、定期的にメンテナンスを行っていないと、通常よりも早い段階で葺き替えをしなければならなくなってしまいますので注意が必要です。他の屋根材の事例だと、セメント瓦は水を含みやすい性質があるので、劣化が進むと塗装が浮いてくる場合があります。その状態まで放置してしまうと再塗装がむずかしくなってしまいます。

―― 紫外線の影響は他にどんなものがありますか?

一級建築士さん:屋根は熱や紫外線などの影響でスレートや瓦などにひびが入ることがあります。実際に築10年の住宅で屋根にひび割れが発生していました。すぐに雨漏りにつながることはほとんどありませんが、台風や暴風雨で屋根材が飛ばされる事態も考えられます。スレートの屋根の場合は、ひび割れを専用のボンドで留めるか、難しい場合はその部分だけ交換するという修繕方法もあります。

屋根の変形や浮きに注意

―― コケなどの事例はどうでしょう?

一級建築士さん:日の当たりづらい北側の面だと、屋根だけでなく雨樋にもコケが発生する場合があります。屋根の場合、最初は藻がうっすらと生え、だんだんと分厚くなっていきます。そのままにしておくと、表面の塗膜(表面を塗装した部分)がはがれることもあるので気をつけたいですね。

―― 他にはどんな劣化がありますか。

一級建築士さん:熱による屋根の反りですね。屋根は日光を一番に受けるところなので、夏は70度近くまで温度があがります。実際に熱と経年劣化の影響で屋根の部材が反ってしまった住宅もありました。屋根の反りはわかりやすいので、気づくお客様も多いかと思います。浮いた部分から雨水が入ってしまうことがありますので早めに補修するか、葺き替えをおすすめしています。

―― 雨水が入ってくる危険性は見逃せないですね。

一級建築士さん:他にも屋根の板金という金属部分に施された釘が浮いてしまったり、抜けてしまったりすることがあります。その場合、板金自体が浮いてしまって雨水が侵入してしまいます。屋根の木部を腐朽させる原因となりますので、こちらも注意が必要です。

屋根のメンテナンス時期の目安

屋根は劣化しやすい部分ではありますが、適切なタイミングでメンテナンスを行うことで長持ちさせることは可能です。ここでは屋根の素材別に、点検時期や修繕のタイミングをまとめてみました。あくまで目安になりますので、傷んでいる箇所を見つけたら適時期でなくてもリフォーム会社や専門業者へ相談してみましょう。

 

点検すべき時期

塗装時期

重ね葺き時期

葺き替え時期

スレート

築10年ごと

10〜15年ごと

30年

30〜40年

アスファルトシングル

築10年ごと

劣化が起きたタイミング

ガルバリウム

築10年ごと

劣化が起きたタイミング

セメント瓦

築10年ごと

劣化が起きたタイミング

30〜40年

日本瓦

築10年ごと

不要

40〜50年

屋根の塗装は、こんな感じで行います。

屋根の洗浄

屋根の下塗り

屋根の上塗り1回目

屋根の上塗り2回目

屋根の縁切り

コストを抑えるカバー工法

スレート材やセメント材を使った屋根では、既存の屋根材に新しい素材を重ねるカバー工法という修繕方法があります。これらの屋根材はアスベストを含んでいる可能性があるため、屋根の葺き替えを行う場合だと撤去費などの施工費がかかってしまいます。既存の屋根材の上から新しい屋根材で覆うカバー工法を選択することで費用を抑えることができます。

屋根の点検の方法や費用

屋根の状態を正しく知るために、リフォーム会社や専門業者による定期的な点検がおすすめです。点検方法や費用について詳しく聞いてみました。

―― 屋根の点検方法について教えてください。

一級建築士さん:高所カメラを使っての撮影や、2階のベランダから1階の屋根を見るなどして色あせやコケがないかを確認していきます。加えて、目視で屋根の割れや欠けがないかもチェックします。具体的に気になる箇所があると事前にお問い合わせいただいた場合は、専門の担当者が屋根に登って詳しく見ることもあります。

―― 時間はどのくらいかかりますか?

一級建築士さん:30分から1時間くらいで点検は完了します。点検費用も無料になっています。屋根はお客様自身で点検するのは難しい場所なので、ぜひリフォーム会社や専門業者に頼ってください。

劣化に気づいたら早めにリフォーム会社や専門業者へ

屋根の劣化には退色や変形など普段の生活で気づきやすい変化もありますので、気づいたらリフォーム会社や専門業者に相談するようにしましょう。同時に、劣化の進行度合いや見えない部分の変化にいち早く気づくためにも、定期的な点検をプロに依頼するのがベストな対策です。