浴室の断熱リフォームで失敗しないためのポイント ~健康と命を守る浴室断熱、その特徴と注意点~

住まいのこれから

ヒートショック事故を防ぐために、シャワーを使って浴室全体を暖める等、すぐできる方法があります。しかしその効果をより高め、光熱費や水道費等を抑えるためにも断熱リフォームは必須と言えます。

【ライタープロフィール】工藤アラタ

浴室は、実は家庭内の不慮の事故が発生する確率が高く、高齢者にとって危険な場所であることは間違いありません。ですが、お風呂に入ることは健康や衛生上、とても大切なこと。浴室の環境は、高齢者の健康との関係性が非常に密接といえるでしょう。

住宅において水まわりは特に劣化がわかりやすく、浴室の使いづらさや不便さは日常生活にも大きな影響を与えます。そのため、浴室のリフォームを望まれるご家庭はとても多いのです。建築年数が古い住宅の浴室だと、タイル張りで、寒い、滑りやすい、入り口に段差がある、浴槽が深いなど、高齢者にとっての障害も多いでしょう。

そこで、浴室リフォームでぜひ施工していただきたいのが「断熱リフォーム」です。これは浴室での事故の原因が「温度」と深く関係していることに理由があります。

今回は、事故を防ぐための断熱リフォームについて解説し、安全で快適な入浴が出来るためのポイントを紹介していきます。

浴室の寒さが入浴中の事故の要因に

実は高齢者の事故のほとんどは、屋外よりも住宅(自宅)で起きています。

内閣府「平成30年版高齢社会白書 図1-2-4-2 65歳以上の者の家庭内事故」を基に作図

そして、死亡に至った事故の上位には、「不慮の溺死および溺水」があがっています。住宅で多くの事故が発生していることを踏まえると、溺死や溺水の多くは浴室で起こっていると考えられるでしょう。

消費者庁「高齢者の事故の状況について平成30年9月12日 図表3高齢者の不慮の事故による死亡者数(年次別・主な死因別・3年ごと)」を基に作図

高齢者の溺死・溺水というのは、原因の多くが「ヒートショック」であると言われています。
ヒートショックとは、洗面脱衣室と浴室、浴室と浴槽の温度差が原因として起きる急激な血圧の変動です。寒い浴室と、暖かい湯船の中を行き来することで血圧が上下に急変し、心筋梗塞や脳卒中を引き起こすのです。

では、なぜ溺死・溺水の原因がこのヒートショックであるのでしょう。それは、事故が発生する季節に関係します。

消費者庁「高齢者の事故の状況について|男女・発生月別に見た高齢者の「おぼれる」による人口 10 万人当たりの救急搬送者数」を基に作図

溺死・溺水の事故は、グラフのように12月~3月に集中しており、ここから気温と事故発生原因が密接に関係していることが推測できます。つまり浴室の温度が低い冬季は、湯船との温度差が大きく、それにより血圧の急変動が起こりやすい時期であるということです。
そして、それが心臓や血管に急激な負荷を与え、湯船で意識を失うなどして溺死や溺水につながるのです。

浴室断熱リフォームの方法

家庭内の事故の多くの原因が浴室の温度に関係する以上、浴室リフォームに断熱は必須と考えられます。
ここからは、浴室の断熱リフォームについて紹介していきます。

ユニットバスへの取替え

築30年ほど前の住宅ですと、タイル張りの在来工法の浴室も多いでしょう。しかし、タイルは冷えやすいうえに滑りやすい素材が多く、角も多いことから高齢者には危険の多い工法です。
ユニットバスは浴槽、壁、床天井など全てのパーツをあらかじめ工場で作り、現場で組み立てて設置をするバスルームであり、気密性の高い造りになっています。

材質は主にプラスチックやポリエステル等による合成素材で、耐水性・保温性・断熱性に優れた製品です。
耐水性や保温性の高さから現在ではユニットバスが主流であり、浴室のリフォームでも多くの場合が、ユニットバスへの取替えを行っています。劣化部分の補修と断熱性能を向上させる工事として、一番手っ取り早い方法と言っても良いでしょう。

窓のリフォーム

ガラスやサッシの性能が進化していることもあり、取替えや増設で大幅な断熱効果を得ることができます。従来の窓は金属サッシの1枚ガラスでできており、外気の熱伝導率が高いため、浴室の温度を下げる原因になってしまうのです。

そこでサッシ変えたり、窓を二重にしたりする方法で外の冷気を通しにくくします。 取替えの場合は、浴室用の複層ガラス、樹脂製サッシ等への取替えが良いでしょう。また、窓枠のスペースを利用し、内窓を増設することもできます。外気と浴室の間に空気の層をつくり、冷気の伝導率を下げることで、保温につなげられます。

冷暖房浴室空調機の設置

浴室を暖める直接的な手段として、暖房の設置があります。
冷気を防ぐことに加え、直接浴室を暖める方法として、高齢者がいるご家庭は特に積極的な設置をおすすめします。温度を一定に保つ機能もあり、温度の急激な変化から守ってくれます。

ユニットバスには床暖房の機能などを付けられる商品もあり、浴室全体を暖めることが可能です。入浴の前後の脱衣場でも気温の急激な変化が起きやすいため、脱衣場の寒さ対策も忘れないようにしましょう。

断熱材の施工

基礎断熱基本的な断熱として、床・壁・天井には断熱材を施工します。
断熱材の種類は大きく分けて、グラスウールやロックウール等の繊維系断熱材と、ウレタンやポリエチレンの発砲プラスチック系の製品の2種類です。
その中でも湿気に強い断熱材を使い、防湿シート加工処理などによりカビの発生や構造材の腐食を防止します。

浴室が寒い場合によく見られる施工不良として、断熱材の施工や断熱加工がされていないケースがあります。
断熱材はユニットバスと壁の間に施工するため、販売店か委託をされた施工業者の、どちらが担当するのかが曖昧な部分でもあります。そのため、断熱材に関する要望の無い場合は、そのまま未施工となってしまうケースもまれに出てしまうのです。
リフォームの場合も、見積もりに断熱材の項目が入っているのかをしっかりと確認するようにしましょう。

また、断熱材などの目に見えない部分のリフォームは、好ましくない一部事業者による被害も少なくありません。訪問などで強引にリフォームを勧められた場合は、他のリフォーム会社でも相見積もりを取るなどして、リフォームの項目と金額を必ず複数の会社と比べるようにしましょう。

水まわり設備の耐久年数は約20年、リフォームは必須

一般的に浴槽や水道設備、防水工事の耐久年数は20年程度です。目立った破損がない場合でも、見えない部分で劣化や損傷の可能性があります。
経年劣化によるリフォームは、いずれ必ず必要になりますので、ついでに断熱リフォーム、ユニットバスへの取替えをするのが良いでしょう。

特にタイル張りの浴室は、ひび割れやパッキンの劣化による床下への漏水等が起こりやすい場所です。漏水被害が目に見えて現れるほど深刻になる前に、調査・補修も兼ねたリフォームが推奨されます。防水性や耐久性の高い製品への取替え。安全で快適な温度。これらは高齢者だけでなく、家族や介助者の安全や負担軽減にも繋がるでしょう。

まとめ

既存の浴室でヒートショック事故を防ぐためにすぐできる方法として、シャワーを使って浴室全体を暖める、バスマットを敷いて床に直接触れないなどがあります。また冷気を通しにくくする窓用のシートや隙間テープ等、ホームセンターで簡単に購入できる物で対策をすることも可能です。
ただ、その効果をより高め、また光熱費や水道費等のランニングコストを抑えるためにも断熱リフォームは必須と言えます。

浴室断熱は高齢者だけでなく、小さなお子さんや子どもの世話で湯船にゆっくり浸かることがままならない若い夫婦にとっても健康的な生活を送るうえで必要です。
浴室の断熱リフォームは、家族全員が日々を健やかに過ごすために重要な役割を担っているといえるでしょう。

ライタープロフィール

工藤アラタ

専門学校を卒業後、建築士として住宅やビル、工場、各種施設などの設計業務に携わる。
現在は飲食業の傍ら、フリーで建築図面作成やライター業を兼務。
建築以外に、旅行やアウトドアなどの趣味を通しての記事なども執筆。