リフォームで二世帯住宅にすることを決めてから実施すること ~リフォームの流れと家族会議の進め方~

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二世帯リフォームは、既存の住宅の間取りを大幅に改修する工事になります。プランニングで決めなくてはならない項目は、新築に建て替えるときと変わらないボリュームになることも少なくありません。また二世帯住居なので、二世帯分の要望を反映させる必要があります。年齢も世代も違う家族同士で、膨大な項目に対しての意見や要望をまとめていくのは大変な労力がかかるでしょう。リフォームをする前からさまざまな問題が見えてしまい、不安に感じる方も決して少なくありません。

そこで今回は、二世帯リフォームの流れと、その注意点などを紹介していきます。
リフォームのプランはどうやって計画していくのか、工事はどのように進むのか。また、家族間ではいつどんなことを相談して計画していけばよいのかもあわせて見ていきましょう。

二世帯リフォームで最初に家族で相談しておきたいこと

リフォーム工事をする場合、どの部分を改修するのかがメインの選択となります。水漏れしている箇所や、老朽化が顕著な箇所などはリフォームが必須です。特に水まわりの設備(キッチン、風呂、トイレ等)の耐久年数は約20年と言われています。目に見えない部分で損傷などが起こっている場合も考えられます。こういった部分はリフォーム会社による調査も参考にしながら取り替えなどを検討していきます。

「二世帯住宅」には3つの形がある

二世帯住宅の場合、どういうふうに暮らしたいのかで、「完全同居型」「部分共有型」「完全分離型」の3つのパターンに分かれます。しかし、完全分離型としたい場合でも、面積や費用の面でそれぞれに浴室やキッチンを設けるのが難しい場合もあるでしょう。

完全分離型の二世帯住宅とする場合は、この間取り図のようにキッチンや浴室などを2つずつ設置します。限られた面積を浴室などに取られてしまうぶん、各居室や収納スペース、リビングの面積が狭くなってしまう場合もあります。
親世帯の居住スペースはバリアフリーの観点からも、車イスや介助スペースのために居室やトイレ、脱衣場なども広めにしておきたいところです。
完全分離か部分共有かで悩む場合は、どちらのパターンも一度設計してもらうとよいでしょう。

浴室やキッチンを共有するのかどうかは、今後の世帯間の関係性や将来にも大きく影響する大事なポイントです。まずは世帯別で独立させたい部分を、可能か不可能かに関係なく列挙するようにしましょう。

また、木造住宅には構造上、撤去できない壁や柱がどうしてもあります。増築をしたい場合でも、敷地面積に対する建ぺい率(敷地面積に対する建築面積の割合)が建築基準法で定められており、法規上難しい場合なども考えられます。限られた敷地と予算に収まるかどうかは、一度図面を描いてみないと判断できない場合もあることを理解しておきましょう。

「二世帯住宅に何を求めるのか」も設計する上で大切な要素

「介護や子育ての手助けを必要としている」「生活費を節約したい」「プライバシーは必ず確保したい」「お互いに干渉されない空間が欲しい」――こういった家族それぞれの希望は、設計するうえでとても大切です。お互いに遠慮があって言い出しにくい要望などは、こっそりでもいいのでリフォーム会社に伝えておくと良いでしょう。

また、リフォーム費用を親世帯と子世帯で何割ずつ負担するのか、電気メーターは共有か分離かなど、お金に関することも必ず決めておく必要があります。

リフォームの流れ

計画・相談

リフォーム計画は、まずは家族で相談した内容をリフォーム会社に相談するところから始まります。

リフォーム会社との打ち合わせは、家族のなかから代表者がメインとなって行うケースが多いですが、なるべく家族全員が揃って打ち合わせに出られる機会を設けるようにしましょう。二世帯リフォームをプランニングするうえで、家族構成や関係性、それぞれの生活時間帯、共働きかどうか等、家族の情報はとても大切です。間取りに関する要望だけでなく、予算やローン等に関する話も、この際にする必要があります。

補助金等を申請する場合には、補助金給付の条件を満たすリフォームを実施しなくてはなりません。こちらもプランニングには重要な情報です。

現地調査

既存の住宅を建築した際の建築図面や確認申請書の副本などが保管してあれば、それを元に既存住宅の図面を作成します。無い場合は、既存の住宅を採寸する作業が必要です。また水まわりや基礎の劣化など、既存の住宅を確認しながらさらに詳しいリフォームの計画・相談を行っていきます。
耐震リフォームも行う場合は、それに基づいた地盤調査や構造部の調査も必要になります。

日本木造住宅耐震補強事業者協同組合「調査データ 2019年1月 建築年度別にみる耐震性に関するデータ発表」を基に作図

耐震リフォームは、早急に改修したい水まわりの劣化や間取り変更に比べて優先度が低くなりがちです。予算などの面からも万全な耐震リフォームの実施はなかなか難しい場合もあるでしょう。しかし現在、震度6強クラスの大地震に対する耐震性は、多くの建物が満たしていません。現地調査の際に地盤や基礎部に関する問題の有無だけでも、しっかりと確認してもらうよう依頼するとよいでしょう。

設計・見積もり

現地調査と打ち合わせの内容を元に設計図面を作成していきます。初期の時点での設計図面はあくまでベースであり、打ち合わせを重ねるごとに設計も仕様も変更を重ねていきます。ある程度、設計がまとまった時点で概算の見積もりをしますが、初期の設計段階の予算をオーバーすることが少なくありません。ここから優先度の低いものを省いたり、設備や材料のグレードを変更したりして予算に合わせていきます。

契約→着工→その他詳細打ち合わせ

着工から竣工までの間、ご家族立会いでの確認や詳細の打ち合わせが定期的に必要となります。内装材の色や玄関アプローチのレンガの色などの詳細な仕上げについて、この段階から相談することも少なくありません。また、大幅な大工工事や内装工事など、さまざまな工事が同時に進んでいきます。
立会いの際には、コンセントの位置やドアが開く方向、収納のドアの様式、手すりの位置など、細かな部分も確認するようにしましょう。

竣工

各種の審査等をクリアし、完了検査などを経てご家族立会いの確認の下で引渡しとなるのが、一般的な流れです。またリフォームに関する書類や図面は今後のメンテナンスなどに必要となりますので、必ず受け取り、保管してください。
親世帯・子世帯ともに、お互いの居住スペースを立会い確認するようにしましょう。

家族との設計会議の進め方

二世帯リフォームについてご家族で話し合ううえで、家族内の設計責任者を決めると良いでしょう。各種申請や契約の際に名義人となる人も決めなくてはなりませんが、名義人と責任者は同じ人でなくても大丈夫です。
最初に決めておきたいのは、プランを進めるうえでのリーダーとなる人です。特に二世帯の場合は、親世帯と子世帯でそれぞれに世帯主がいますので、最終的にどちらが決定権を持つのかも計画を進める前に決めておいた方が良いでしょう。

分離型にしたいのか同居型にしたいのか、電気メーターの分離、支払いの割合やローン、補助金の申請などは、必ずしも事前に決める必要はありません。これらはプランニングの過程で、動線の便利さや、間取りの収まりの良し悪しによって、家族の希望が変わってくるケースもあるからです。焦って決めなくても、リフォーム会社と相談しながら検討していけば大丈夫です。

プランについて家族間で折り合いが付かない場合は、その問題点をそのままリフォーム会社に伝えてください。打開策や問題を回避する、プロならではの提案をしてくれるかもしれません。

二世帯で話し合う前に「夫婦で意見をまとめる」

二世帯リフォームをすると決断した時点で、おそらくかなりの時間の話し合いをされてきていると思います。特に親夫婦・子夫婦、それぞれで同居に関してたくさん相談してきているでしょう。重要なのは、夫婦間での意見の相違が無いようにすることです。二世帯のプランニングではなかなか意見がまとまらない場合、多数決で何となく決まってしまう場合もあるでしょう。しかし少数派にとって、とても重要な要望だった場合は、同居生活をしていくうえでの大きな不安要素になってしまう可能性もあります。

生活に影響する重要な部分に関しては、両世帯で相談する前に必ずそれぞれの夫婦間で話し合い、世帯ごとの意見をまとめて提案する流れがおすすめです。特に、両親・若夫婦・子どもたちが揃っている場所で、一人ひとりの意見を求めないことが大切です。本音が言えなかったり、意見がバラバラでまとまらなかったりする原因になってしまいます。

世帯間で相談が必要な事項はいったん持ち帰り、夫婦や家族で議論をしてから、最終的な意見として提示すると、それぞれが大事にしたいことを、バランスよく実現できるでしょう。

まとめ

一般的なリフォームと比べて、二世帯リフォームの場合は改修範囲が広く、設備の増設などにより金額も高くなる傾向にあります。今後の生活のことも考えて、プランニングや家族会議では失敗したくないものです。

二世帯リフォームが完成して、初めて同居となるご家庭も多いのではないでしょうか。プランニング以外に家族間でさまざまな不満や問題が起こることも、やはりあるでしょう。心配なこと、不安なこと、プランに関して納得がいかないこと。これらが起こった場合は、遠慮なくプロであるリフォーム会社をぜひ頼ってください。二世帯住宅に関するトラブルや問題も、数ある事例や経験からご家族に合った良い方法を探ってくれることでしょう。