賃貸併用住宅は「働くマイホーム」 そのメリット・デメリットを解説します

お金・資産

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賃貸併用住宅は、家賃という安定した収入も得られる「働くマイホーム」です。自宅に住みながらオーナーとしてアパート経営できる点は、生涯安定した収入を得ることにもつながります。土地活用を考えている方は、賃貸併用住宅も検討してみるとよいでしょう。

この記事の監修

矢口ミカ

複数のメディアで執筆中です。宅建の資格を活かし、家族が所有する投資用不動産の入居者管理もしています。住まいに関する資格である整理収納アドバイザー1級、福祉住環境コーディネーター2級も取得済みです。趣味は整理収納と料理。

「賃貸併用住宅」とは、同じ建物の中に自宅と賃貸部分がある住まいです。家賃収入を住宅ローンの返済に充てられるなどのメリットがありますが、プライバシーの面で心配な点もあります。

この記事では、自宅を「賃貸併用住宅」にする場合のメリットとデメリット、建てる際の間取りの例や注意点を紹介します。

賃貸併用住宅とは

賃貸併用住宅には具体的にどのような特徴があるのでしょう。ここでは国内での普及状況や住宅のタイプ、間取り例について解説します。

1.自宅の一部を賃貸住宅にした住宅

賃貸併用住宅とは、自宅の一部を賃貸物件として貸し出す住宅です。平成27年時点では新築が多く、大手ハウスメーカーでは約1万棟の施工のうち、約5%が賃貸併用住宅として建てられています。(※1)
子どもが独立すると、広い戸建を持て余す高齢夫婦は少なくなく、1階は居住スペース、2階以上は賃貸住宅というプランで建て替えやリフォームを行うことは、有効な住まいの活用法といえます。

2.プランタイプ

賃貸併用住宅の主なプランには下記のようなものが考えられます。

最上階自宅型

建物は縦に長いため、都市部など狭い土地でも有効活用できるのが良い点です。自宅の日当たりや眺望が良く、上階の生活音も気になりません。自宅に屋上があれば庭にもなり、ガーデニングや日光浴も楽しめます。ただし、自宅と賃貸部分のアプローチが重なりやすいのがデメリットです。

1階自宅型

「最上階自宅型」同様、狭い土地にも適した建物です。1階が自宅のため庭が使えること、上下階の移動がないため高齢者が暮らしやすいことがメリットです。ただし、採光や眺望が良いとは限らず、自宅と賃貸部分の動線が分けにくいというデメリットもあります。

連棟分離型

賃貸部分と自宅を左右に振り分ける、連棟分離型は先述した2タイプのメリットをあわせ持つものです。プライバシーも守られますが、ある程度の敷地面積が必要です。敷地によっては3階建てとなるので、ホームエレベーターを設置するなど上下階の移動をしやすくすると良いでしょう。

3.暮らし方の一例

賃貸併用住宅の間取りの一例として、「最上階自宅型」を挙げてみます。これは、1階は親の自宅、2階は賃貸部分、3階は子世帯の自宅となっています。間に2階を挟んでいるので二世帯同居でもプライバシーは保たれ、親子間で程よい距離感を置きながら同じ屋根の下で暮らせます。

相続が発生した際には、親が住んでいた部分を賃貸に出すことも可能です。相続した子どもが高齢になったら1階に引っ越し、3階はその子ども世帯が住むなど、世代交代しながら住み続ける「エンドレス型賃貸併用住宅」としての利用も可能です。

賃貸併用住宅のメリット

賃貸併用住宅には「家賃収入がある」「税の優遇制度が受けられる」など、さまざまなメリットがあります。

家賃収入を得られる

賃貸に出して得られた家賃は住宅ローンの返済に充てることができます。返済を終えたら今度は老後の生活資金に回せるため、自分の経済力だけで暮らすことが可能です。

税金の優遇が受けられる(条件を満たした場合)

相続税の節税メリットが得られます。自宅部分は自用家屋として、固定資産税評価額がそのまま相続税評価額となりますが、賃貸部分は貸家としての評価額となり、すべて自用家屋の場合より家屋の評価が小さくなるからです。
また、小規模宅地等の特例により、配偶者や同居の子どもが自宅を相続する際、最大330㎡まで評価の80%が減額されます。これにともない、相続税評価額も小さくなります。(※2)

住宅ローン控除を利用して所得税を軽減することも可能です。ただし、賃貸併用住宅の建物全体の床面積のうち、2分の1以上の部分が自宅でなければならないなど条件がいくつかあります。(※3)

以下の条件に当てはまる場合、固定資産税も減額され、住宅用地の特例も受けられます。

区分

固定資産税

都市計画税

小規模住宅用地

住宅用地で住宅1戸につき200m2までの部分

価格×1/6

価格×1/3

一般住宅用地

小規模住宅用地以外の住宅用地

価格×1/3

価格×2/3

引用:東京都ウェブサイト「固定資産税・都市計画税(土地・家屋)|2.住宅用地の特例措置

住宅ローンが利用できる

通常、アパートを建てる際にはアパートローンを利用して建築しますが、賃貸併用住宅の場合、金利の安い住宅ローンを利用できます。アパートローンの金利はおおよそ3%に対し、住宅ローンは1%程度のため、金額コストが下げられる点は大きな魅力でしょう。ただし、面積のうち50%以上を自宅スペースにするなどの条件を満たす必要があります。

ライフスタイルに合わせて住まい形態を変えていける

親が建てた賃貸併用住宅を相続した場合、親が居住していた1階を賃貸に出すと、家賃収入を増やせます。自分が高齢になったときに、1階に住み替えることもできます。また、賃貸部分を将来二世帯住宅として利用できるように建てておくと、子世帯と同居ができるようになります。その時々のライフスタイルに合わせて、住まいの形態を変えていけるのもメリットです。

入居者の様子が分かりやすい

同じ建物に住んでいるので、入居者の生活の様子が分かりやすいのもメリットです。万が一、孤独死する入居者が出たとしても早期発見がしやすいため、部屋の損傷を最小に抑えられます。トラブルが発生した場合にも原因を調べやすいといえます。

賃貸併用住宅のデメリット

金銭的なメリットも多い賃貸併用住宅ですが、経営上の悩みが発生するなど、いくつかのデメリットもみられます。

ローンの借入額が大きい

賃貸併用住宅は、自宅スペースの他に賃貸スペースがあるため、建物が大きくなります。そのぶん建築費が高額になるため、ローンの借入額が大きいのがデメリットです。家賃収入を考慮しながら返済計画をきちんと立てるようにしましょう。

入居者からのクレームを受けやすい

同じ建物に住んでいるため、入居者がオーナーに直にクレームを言いやすいのもデメリットです。管理会社を挟んでいても目と鼻の先にオーナーが住んでいると、直接言うほうが早いからです。特に家賃など金銭に関するトラブルは根が深くなるケースも多く、自主管理でない場合は、管理会社にトラブル対応を任せたほうが安心といえます。

空室になるとローンの負担が大きくなる

家賃収入が入らない場合、ローン返済に充てる資金が少なくなるため、資金繰りに困ってしまうことも。ローン返済以外にも、火災保険料や固定資産税などランニングコストがかかります。満室経営ができるように空室対策をしっかり講じるようにしましょう。

プライバシー性が十分とはいえない

同じ建物に入居者と住んでいるため、プライバシーはそれほどありません。常に他人である入居者と隣り合わせで気が抜けない状態です。トラブルがないときは良いのですが、いったん問題が起きると、お互いに気詰まりな状況になる場合も考えられます。

取り壊しにくい

借地借家法により入居者の権利が守られているので、入居者に対し正当な理由なしで退去を迫ることはできません。ゆえに、自分の所有する建物であるにもかかわらず、取り壊しにくいのもデメリットです。
賃貸人の都合で立ち退いてもらう場合、立ち退き料を支払うケースが通例とされています。しかし、法的に決められているものではないため、必ず支払わなければならないものでもありません。こじれると厄介なぶん、入居者と円満な話し合いをする必要があります。

賃貸併用住宅を建てるときの注意点

賃貸併用住宅は通常のマイホームとは違うため、建てる際にはいくつかの注意点があります。

1.プライバシーの確保をする

賃貸併用住宅は、家族以外の他人と同じ建物に住む形式です。そのため、プライバシーはきちんと確保するようにしましょう。「入居者と玄関や入口を別々にする」「植栽などでオーナーの居住空間を見えにくくする」などの工夫をおすすめします。

2.防音対策を講じておく

世帯によって生活リズムが違うので、騒音トラブルにならないように防音対策をしておきましょう。1階にオーナーが住む場合、上階の賃貸部分の生活音が気になることもあるようです。反対に、小さな子どもがオーナー世帯にいる場合、泣き声や駆けまわる音や振動が階下に伝わることで、居住者からのクレームにつながることも考えられます。トラブルが起きてしまってからでは厄介なので、設計の段階から防音対策を講じておくのが得策です。

3.クレーム対応を避けたい場合は管理会社に委託する

自主管理オーナーは、家賃管理から入居者のトラブル対応、修繕工事の手配など、すべて自分でこなさなければなりません。これらの手間をかけたくない場合は、管理会社に委託するとよいでしょう。費用はかかりますが、管理会社を入れるとストレスなく賃貸経営を行えます。空室対策もしてもらえるので、安定した家賃収入が期待できます。

まとめ

賃貸併用住宅は、家賃という安定した収入も得られる「働くマイホーム」です。自宅に住みながらオーナーとしてアパート経営できる点は、生涯安定した収入を得ることにもつながります。相続税なども節税できますし、ライフスタイルに合わせて住まい方も変えられます。 土地活用を考えている方は、賃貸併用住宅も検討してみるとよいでしょう。