100万円の資産運用

余裕資金100万円があったらどうする? リスクとリターンから考える投資の考え方

お金・資産

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現金の価値は一定のように感じるかもしれませんが、実は変動していくものです。たくさんある金融サービスのなかから、何を選べばよいのかを検討しながら、納得のいく資産形成ができるとよいですね。

この記事の監修

貝田凡太

公認会計士試験に合格後、大手監査法人にて財務諸表監査業務、内部統制監査業務などに従事。勉強を兼ねて株式を購入したのをきっかけに、投資に興味を持つようになる。その後、制限のない投資環境を求めて退職し、専業トレーダーとして独立。現在は、投資に関するテーマを中心にライターとしても活動中。

手元にある100万円を安全に守り使う方法として、普通預金を思い浮かべる人は多いでしょう。しかし、長期的な目線で考えると、実は現金もノーリスクというわけにはいきません。
資産を普通預金や現金だけで持っておくと、状況によっては価値が大きく目減りしてしまうリスクがあります。

今回は、もし手元に余裕資金として100万円があれば、どのように運用すればいいのか、資産運用の初心者の方に向け解説します。
ご自身の資産を守るための選択肢として考えるきっかけになると幸いです。

「現金はノーリスク」は誤り

現金の価値は一定のように感じるかもしれませんが、実は変動していくものです。

(図:筆者作成)

たとえば、現在とあるホテルの宿泊料が1泊1万円だとすると、100万円あれば100泊することができます。しかし、このホテルの宿泊料が1泊1万2,500円に値上がりすると、100万円で宿泊できるのは80泊になります。これはつまり、時間の経過とともに20泊分(20%)だけ現金の価値が下がっていることになります。

このような形でモノやサービスの値段が上昇することを「インフレーション(略称:インフレ)」、上昇割合を「インフレ率」と呼びます。インフレにともない、現金の価値は目減りしてしまうわけです。

経済が正常であれば、緩やかなインフレになります。1年当たりのインフレ率は小さいですが、長期スパンで見た場合の影響の大きさは無視できません。

(図:筆者作成)

仮に1年当たりのインフレ率2%(日銀が目標とする値)が30年続いたとすると、物価は1.81倍になります。先ほどのホテルの例に当てはめると1泊約1万8,113円となり、上図のとおり100万円では55泊しかできません。現金の価値が実に45%も目減りした計算です。

資産を現金の形で保有しておくことは、一見安全なように感じるかもしれません。しかし、インフレを踏まえて長期的な目線で見ると、現金も決してノーリスクとは言えないということを、しっかり頭に入れておきたいところです。

100万円の投資先候補

インフレで資産価値の下落を回避するためには、インフレ率以上の利回りで資産運用をする必要があります。特にインフレと連動して資産価値が上昇するものを投資先として選ぶのが、インフレに対応するうえでのポイントとなるでしょう。
100万円の代表的な投資先候補には、以下が挙げられます。

  • 株式
  • 債券
  • 投資信託
  • 上場投資信託(ETF)

それぞれについて、メリットとデメリットを中心に説明していきます。

株式

「株式」とは、株式会社が投資家から出資金を集めるために発行するものです。株式を購入するとその会社の出資者(株主)となり、利益の一部を配当として受け取ったり、株主優待を受けたりすることができます。

上場株式は市場で売買されており、株式の価格(株価)は日々変動しています。基本的にその会社の業績が好転すれば株価は上がり、業績が悪化すれば株価は下がります。この株価の上下動を利用して売買益を得ることも可能です(うまく売買できなければ、売買損となることもあります)。

株式会社はモノやサービスを販売して利益をあげており、インフレによってモノやサービスの価格が上昇すれば、それだけ利益も大きくなると考えられます。そのため、基本的に株価はインフレに連動して上昇しやすく、この点は大きなメリットと言えるでしょう。一方で、株式投資で利益をあげるには、これから業績が上向いていく企業を予想したり、経済動向や市場参加者の思惑を分析したりする必要があり、情報収集や知識向上に時間を割く必要があります。また、株式投資には一定規模の金額が必要となるため、様々な銘柄を購入するとなると100万円ではやや少ないと感じることもあるかもしれません。
うまくいけば大きな利益をあげることも可能な株式投資ですが、それ相応のリスクがともなうということ、また、それなりの時間とお金をかける必要があることを、よく理解したうえで始められるとよいでしょう。

債券

「債券」とは、国や企業が投資家からお金を借り入れるために発行するものです。株式とは違いシンプルなお金の貸し借りの話なので、あらかじめ決められたタイミングで利子を受け取り、満期が来たら額面金額を返済してもらうことになります。なお、満期前の途中で換金することもできます。その場合、経済の状況により債券の売却価格は変動していくため、損失を被ることもあります。
満期まで保有する場合は、あらかじめ決められた金額を受け取ることができ、価格変動による損失が発生することはありません。
ただし、満期まで保有しようとした場合でも、債券の発行体が返済できなくなることもあります。これを避けるため、債券発行者の信用力をよく確認する必要があります。通常、信用力の低い発行体ほど利回りが高くなります。利回りだけで銘柄を選ぶことはリスクがともなうことを注意しましょう。

債券は将来に受け取ることのできる金額があらかじめ決まっており、比較的安定した資産運用を期待できる投資先です。ただし、受け取ることができる金額が一定であるため、インフレ率が高くなると実質的な利益は目減りしてしまいます。つまり、安全性だけを優先して低い利回りの銘柄を選ぶと、インフレに対応しきれないことがあるということです。
この点も踏まえながら、リスクとリターンのバランスの良い銘柄選びが必要になるという意味では、やはり知識と情報が必要となる投資先と言えるでしょう。

投資信託

「投資信託」では投資家から集めた資金を、あらかじめ決められた運用方針にしたがって運用会社が代わりに運用します。運用資金はあくまで投資家のものなので、運用がうまくいって運用資金が増えれば、投資家は利益を得ることができます。

投資信託には、株式を中心に投資するもの、債券を中心に投資するものなど、さまざまな商品があります。運用方針をしっかり理解して、将来のインフレ率以上の利回りが期待できるものを選ぶことが大切です。自分のイメージする運用方針の投資信託を購入できれば、あとは運用会社に任せることができます。具体的な投資先はプロである運用会社が選定するため、投資家は日々の管理に煩わされることがありません。

一方、運用会社は日々の管理を代行する対価として、「信託報酬」というものを運用資金から差し引くことになっています。つまり、一定の手数料を支払って、運用会社に管理を任せているという形ですね。

投資信託は少額から始めることが十分可能であり、100万円あれば複数のタイプの商品に問題なく分散投資できます。一定の手数料がかかるというデメリットはあるものの、手間が少なく初心者でも比較的始めやすい投資手段と言えそうです。

上場投資信託(ETF)

「ETF」とは、上場している投資信託のことです。仕組みは投資信託と同じですが、それを株式のような形で市場において売買できるようになっています。

運用方針は、日経平均株価やTOPIXといった指数と連動するように運用されるのが基本です。この点、投資信託と比較した場合、商品の選択肢が豊富とは言えないところがあります。一方、上場していない投資信託は1日1回しか取引できないため、売買の自由度という意味ではETFに軍配が上がります。株式投資をしている人にとっては、その延長線上で売買できるETFは使い勝手がよいと感じるかもしれません。

ETFと投資信託のどちらが向いているかは、人によって異なります。いずれを選ぶにしても、大事なのは運用方針と信託報酬です。これらをよく吟味したうえで、自分のイメージに合う商品を選ぶようにしましょう。

非課税制度も利用しよう

資産運用における投資先候補を紹介してきましたが、実際に資産運用を始める前に知っておきたいのが、投資で得た利益には、20.315%の税金が基本的に発生することです。つまり、10万円の利益が上がれば、2万315円の税金を支払わなければなりません。税金は、資産運用における利回りを引き下げてしまうことになります。

この点、投資の利益に対して税金が発生しなくなる、投資の優遇制度があります。これから資産運用を始めるにあたっては、以下の優遇制度はしっかり有効活用したいところです。

  • 一般NISA
  • つみたてNISA
  • iDeCo

上記の制度は、資産運用でインフレ率以上の利回りを実現するうえで、おおいに味方となってくれるはずです。証券会社などで口座開設する際には、これらについてしっかりチェックしておくことをおすすめします。

終わりに

現金で放置しておくだけでは、ご自身が保有する資産の価値を守れないことが考えられます。
資産を貯めるだけでなく、それを守り増やすためにはどうすればよいのか――たくさんある金融サービスのなかから、何を選べばよいのかを検討しながら、納得のいく資産形成ができるとよいですね。