幸せなシニア以降の人生のために

売却した家に住み続けられる「リースバック」 メリットとデメリットは?

お金・資産

この記事をシェアしよう

「リースバック」とは、自宅を売却し、まとまったお金を受け取った後に家賃を払うことで同じ家に住み続けられる仕組みです。しかし、売却価格は相場より安くなることが多く、家賃も払わなくてはなりません。また、契約内容によっては、ずっと住み続けられる保証がない点にも注意が必要です。仕組みやデメリットを十分に理解したうえで利用しましょう。

この記事の監修

大西 勝士

フリーランスの金融ライター。会計事務所、一般企業の経理職、学習塾経営などを経て、2017年10月より現職。10年以上の投資経験とFP資格を活かし、複数のメディアで執筆しています。

高齢化によって老後資金の確保が心配ごとのひとつとして挙がっています。「自宅を売却してまとまった資金を手に入れたいが、引っ越しはしたくない」と考える人もいるでしょう。
こうした事情をお持ちの方にとって、リースバックは選択肢のひとつになるかもしれません。

「リースバック」とは、自宅を売却し、まとまったお金を受け取った後に家賃を払うことで同じ家に住み続けられる仕組みです。しかし、リースバックにはデメリットもあるため、全体像を理解したうえで利用することが大切です。

今回はリースバックの概要やメリット・デメリット、注意点について詳しく解説します。

老後生活の悩みの多くは「お金」

生命保険文化センターの調査(※1)によれば、老後生活に「不安感あり」と84.4%が回答しており、多くの人が老後に不安を感じていることが明らかになっています。
具体的には、「公的年金だけでは不十分」(82.8%)がもっとも多く、次いで「日常生活に支障が出る」(57.4%)となっています。また、「退職金や企業年金だけでは不十分」「自助努力による準備が不足する」「仕事が確保できない」といった回答も3割を超えています。

生命保険文化センター「老後の生活にどれくらい不安を感じている?」の情報を基に作図

この結果から、老後生活に対する不安として、お金に関する内容が高い割合を占めていることがわかります。

リースバックとは

リースバックとは、自宅をリースバック事業者に売却したうえで、その事業者と賃貸借契約を締結することで同じ家に住み続けられるサービスです。

通常の不動産売却の場合、自宅を売却した後は別の住まいを探さなくてはなりません。けれどもリースバックであれば、引っ越しをすることなく自宅の売却によってまとまった資金を入手できます。

先述のとおり、高齢化で老後が長くなったことによって老後資金に不安を抱く人が多いのが現状です。その点、リースバックは持ち家を活用した資金調達方法として、高齢者を中心に注目が高まっています。リースバック事業者によっては、一定の条件をもとに売却した自宅の買戻しが認められることもあります。

なお、自宅を活用した高齢者向けの資金調達方法には、自宅を担保に融資を受けられる「リバースモーゲージ」と呼ばれるものもあります。毎月の支払いは利息のみで、債務者が死亡した後に自宅(担保不動産)を売却して元本を返済する仕組みになっています。月々の返済額が軽減され、自分が亡くなったら自宅の売却でローンを返済できるので、老後資金を準備する手段として活用できます。
しかし、リバースモーゲージは元本を返済しない限り、支払いが一生続きます。また、担保不動産の価値下落によって、融資限度額が見直されるケースも考えられるので注意が必要です。

リースバックとリバースモーゲージは、自宅に住み続けながらまとまった資金を準備できることは共通しています。ただし、リースバックは不動産売却と賃貸借契約を組み合わせたサービスであり、リバースモーゲージはローン商品である点に違いがあります。

リースバックのメリット

ここで、リースバックのメリットを見ておきましょう。

売却後も同じ家に住み続けられる

リースバックは、自宅を売却した後も同じ家に住み続けられるのが最大の特徴です。現在の住まいが持ち家の場合、「できれば慣れ親しんだ自宅から離れたくない」と誰もが思うものでしょう。
その点、リースバックで自宅を売却すれば、買主に家賃を払うことで、いままでどおりの生活が維持できます。別の家を探して引っ越しする必要もないので、手間がかからず周囲から自宅を売却したことを気づかれにくいのもメリットです。

自宅の売却によってまとまった資金が手に入る

老後に備えて「まとまったお金を準備したい」「住宅ローンを返済したい」と考えている人は多いでしょう。リースバックで自宅を売却すれば、老後資金としてまとまったお金を用意できます。売却価格が住宅ローン残債よりも多ければ、売却代金でローンを完済することも可能です。

家の所有リスクを回避できる

持ち家は老後の住まいを確保できる一方で、家の所有リスクも存在します。たとえば、地震や火災といった災害で建物に被害が出れば、修繕費用は自己負担となります。保険で備えるためには保険料の支払いが必要です。住めない状態になれば、仮住まいを探さなくてはなりません。また、実物資産である不動産は簡単に分割できないので、相続人が複数いる場合は相続トラブルの原因にもなりえます。その点、リースバックで自宅の所有権を手放せば、家の所有リスクを回避できます。

リースバックのデメリット

リースバックには、以下のようなデメリットがあることも知っておきましょう。

家賃の支払いが必要になる

リースバックは、自宅の売却後に買主と賃貸借契約を締結するため、毎月家賃が発生します。自宅の売却で一時的にまとまったお金を得ても、しっかりとした収支計画を立てておかなければ、老後資金が枯渇するおそれがあります。

自宅の所有権がなくなる

リースバックで自宅を売却すると、自宅の所有権はなくなります。いままでどおり同じ住まいで生活できますが、あくまでも物件の所有者は貸主です。所有者の許可がなければ、間取りの変更やリフォームなども自由にできなくなります。

売却価格が相場より安くなる場合がある

リースバックで自宅を売却すると、売却価格が相場より安くなる場合があります。売却後に賃貸借契約を締結することや買戻しに関する条件がつくことなどが理由として考えられます。
通常の不動産売却の査定金額と比較したうえで、リースバックを利用するか判断することが大切です。

ずっと住み続けられるとは限らない

リースバックは、契約内容によっては将来にわたって住み続けられるとは限りません。賃貸借契約には、「普通借家契約」と「定期借家契約」の2種類があります。契約期間が決まっている後者の場合、事業者の事情で契約更新が認められず、引っ越しが必要になる場合があります。

トラブルを回避するための注意点

リースバックは老後資金を準備する手段として活用できる一方で、「家賃を払えなくなった」「退去することになった」などのトラブルも発生しています。リースバックのメリットを享受しながら、トラブルを回避するための注意点をまとめました。

複数のリースバック業者を比較する

リースバックは事業者によって、売却価格や家賃、買戻し特約といった諸条件が異なります。リースバックを検討する際は複数の業者で査定を受けて、契約内容を比較することが大切です。
売却価格については通常の不動産売却の査定金額も確認しておくと、市場価格とどのくらい差があるかを判断できます。

普通借家契約が利用できる業者を選ぶ

リースバックで売却した後もなるべく長く同じ家に住み続けたい場合は、普通借家契約が利用できる事業者を選ぶといいでしょう。
先ほども触れたように、定期借家契約では契約期間が終了する際に更新できないと、退去しなくてはなりません。普通借家契約であれば、基本的には借主が希望する限り住み続けられるので安心です。

家族と相談してから利用する

自分の子どもなど自宅を相続する予定の人がいる場合は、相談してからリースバックを利用することが大切です。
リースバックで自宅を売却すると所有権がなくなってしまうので、何も相談せずに利用するとトラブルに発展しかねません。余計なトラブルを避けるためにも、リースバックは家族の理解を得てから利用しましょう。

まとめ

リースバックは自宅の売却後も同じ家に住み続けられるので、老後資金を準備する手段として注目されています。しかし、売却価格は相場より安くなることが多く、家賃も払わなくてはなりません。また、契約内容によっては、ずっと住み続けられる保証がない点にも注意が必要です。仕組みやデメリットを十分に理解したうえで利用しましょう。