デジタルデータを"遺品"にしないために 生前整理の重要性と進め方

お金・資産

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元気なうちに自分の先々について備える「終活」は、もはや多くの人に浸透しています。しかし、遺品はモノだけではなく、情報にも広がっています。つまり、スマホやパソコンのデータについても、親や自分の亡き後のことを考えておく必要があるのです。

この記事の監修

清水 沙矢香

2002年京都大学理学部卒業後、TBS報道局で社会部記者、経済部記者、CSニュース番組のプロデューサーなどを務める。ライターに転向後は、取材経験や各種統計の分析を元に幅広い視座からのオピニオンを関連企業に寄稿。
趣味はサックス演奏。自らのユニットを率いてライブ活動を行う。
Twitter:@M6Sayaka

親にも自分にも、いずれ最期はやってきます。できれば遺品整理で遺される人を困らせたくはないものです。

その際、物品だけでなく、スマホやパソコンに残された「デジタルデータ」の処分・処理もしておきたいところです。
ネット銀行や証券、暗号資産といったマネー関係はその存在自体を家族が把握していない場合もあり、存在が分かったとしても「IDやパスワードを知らない」「知識がないのでどうしたら良いかわからない」ということがおこりかねません。そして、それだけならまだしも、それ以上の問題も起きているようです。

「終活」が必要なのはモノだけではない

元気なうちに自分の先々について備える「終活」は、もはや多くの人に浸透しています。モノを減らす、意思表示をしておく、といった形で取り組みを考えている人も実際多いでしょう。
しかし、遺品はモノだけではなく、情報にも広がっています。つまり、スマホやパソコンのデータについても、親や自分の亡き後のことを考えておく必要があるのです。

総務省の調査によると、「80歳以上」でも6割近い人がインターネットを利用していることが分かります。

総務省「令和元年通信利用動向調査の結果|P2. 1 インターネットの利用動向」の情報を基に作図

また、利用している機器は、「パソコン」と「スマホ」が多く、両方の端末をインターネット利用時に使っている人は「60~69歳」では約半数、「70~79歳」でも3割近く存在しています。

総務省「令和元年通信利用動向調査の結果|P2. 1 インターネットの利用動向」の情報を基に作図

連絡先やSNSのアカウント、写真、仕事の資料など、たくさんの情報をスマホやパソコンで管理している人は多いでしょう。しかし、他人がこれらのデータを引き出そうにもスマホやパソコンには他人が操作できないようにパスワードでロックがかけられています。そのため、親の死を電話やSNSで周囲に知らせようにも、このロックを解除できない限り、連絡先もSNSの記録もわからない、生前の写真を取り出すこともできないなど、困りごとが出てきます。

これらに加え、デジタル遺品のなかには、お金にかかわるものもあります。放置すると、遺族に税金などの金銭的負担を強いられるケースもあります。

ネット銀行、証券、仮想通貨など金融資産も

スマホやパソコンで気をつけなければならないのは、ネット銀行やネット証券、暗号資産取引など、デジタルで管理されている金融資産です。

ネット銀行の場合はキャッシュカードが発行されていますので、IDやパスワードがなくても銀行に問い合わせれば必要書類を揃えることで対応してもらえます。しかし、誰が払い戻しを受けるのか、資産分割をどうするのかを遺族はその場で決める必要があり、金額が大きければ大きいほど、相続税などの負担が重くなります。

やっかいなのがネット証券やFXです。預金の場合は残高が変わることはありませんが、証券やFXの場合は大きな含み損を抱えている場合もありますし、放置してしまうと損益が拡大することもあります。すると、負の部分までもがそのまま遺族に引き継がれてしまいます。
相続された側が投資に詳しくない場合はなおさら困ってしまうことでしょう。

暗号資産も取り扱いは煩雑です。日本の証券会社を通じた取引の場合はネット証券のように手続きを踏むことで日本円に換算して処理してもらえますが、海外の取引所を利用している場合、制度が不明瞭なケースもあります。知識がなければ、対応はより難しくなります。

また、IDやパスワードが分かったとしても、他人によるログインは不正アクセス禁止法に抵触するおそれがあるため、安易に操作することはリスクをはらんでいるとも言えるでしょう。

「デジタル終活」実施者はごくわずか

マクロミルの調査によると、インターネット利用者のうち、「自分のもしもの際にデジタルデータがどうなるのかを不安だ」と感じている人は高齢者でも少なくないようです。なかでも男性70代のうち、「とてもあてはまる」「ややあてはまる」と答えた割合は50%を超えており、終活の一環としてデジタルデータの整理に関心が高まっていることが示唆されています。他方、デジタル終活の実施率は4%(※1)という実態も浮き彫りになっています。

このままでは遺される家族に手続きだけでなく、金銭面でも負担をしいることになるなど心配ごとは尽きません。気力のある元気なうちにデジタル終活を進めておきたいものです。

株式会社マクロミル「終活の意識と実態調査」の情報を基に作図

アナログ記録の重要性~エンディングノートのすすめ

近年では「エンディングノート」についても知られるようになっています。自分の終末期、あるいは認知症の進行などで意思の疎通が難しくなったときに備えて、どのような葬儀を望むか、遺品・遺産をどのように扱ってほしいのかなどを元気なうちに書き残しておくというものです。

物品についてはもちろんのこと、デジタル遺品の場合には、どのような種類があるのかを備忘しておきましょう。可能であればIDやパスワードを記録しておきたいところですが、「それはちょっと......」という場合には、せめてどこに問い合わせれば良いのか、どのような手続きをすれば良いのかを記しておきましょう。

大切なのは、その情報をどのように扱ってほしいのか、ご自身の意思も記録しておくことです。金融資産の場合、マイナスになっていたら家族の経済的負担になってしまう、と考えてしまうかもしれませんが、放っておくほうがリスクになってしまうケースがあることも考えましょう。

また、SNSに関しては、アカウントを閉鎖してほしいのか、家族が引き続き管理してほしいのか、その意思を書き残しておきましょう。本人は気に留めていなくても周囲は扱いに困ることになるかもしれません。エンディングノートの作成はアナログな方法ですが、確実な手段となるはずです。

なお、エンディングノートを多くの人が必要としている一方、実際に「書いている」人はほんのわずか、というデータも存在しています。

一般社団法人 終活協議会「エンディングノートについての意識調査アンケート(2020年12月~2021年3月)」の情報を基に作図

終わりに

エンディングノートの準備は、早くに始めるに越したことはありません。"もしも"はいつ誰に起きるかわからないからです。

人には必ず最期がやってきます。普段忙しいという人も、先々子どもに手間をかけないようにしておきたいものです。また、親に勧める場合にも、「自分らしく最期を迎えてほしいから」と子どもの立場からの希望を伝え、その準備のひとつとして提案するのであれば、心理的ハードルは多少下がるかもしれません。

旅立つほうも残されるほうもよいお別れができるよう、生前整理はキレイに済ませておきたいものです。

※ 株式会社マクロミル「終活の意識と実態調査