幸せなシニア以降の人生のために

万が一への備えとして 離婚で家の財産分与はどうなる? 税金や住宅ローンは? 

お金・資産

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離婚は現代の日本では珍しいことではなく、いつ自分の身に起こらないとも限りません。いままでの結婚生活で築き上げた財産の処理などが深く絡んでくる場合には、あらゆるリスクに対処する必要があることを踏まえ、慎重に対応していく必要があります。

この記事の監修

矢口ミカ

複数のメディアで執筆中です。宅建の資格を活かし、家族が所有する投資用不動産の入居者管理もしています。住まいに関する資格である整理収納アドバイザー1級、福祉住環境コーディネーター2級も取得済みです。趣味は整理収納と料理。

厚生労働省が発表した「令和2年度の人口動態総覧」によると、平成31年4月から令和2年3月のあいだに離婚した人は21万3,349人で、平成31年度の21万2,871人とほぼ同数となっています。(※1)

離婚は現代の日本では珍しいことではなく、いつ自分の身に起こらないとも限りません。ただ、若い世代で共有財産などがない場合は、面倒なく別れることもできるかもしれませんが、シニア世代の場合はいままでの結婚生活で築き上げた財産の処理などが深く絡んでくる場合があります。

今回は、財産分与のなかでも分けることが難しい家や土地など、「不動産」の財産分与についてリスクを中心に詳しく解説します。

離婚する際の財産分与とは

ここでは、離婚する際の財産分与に関する定義や対象となる財産などについて、詳しく解説します。

1.財産分与とは、共有財産の分与を請求できる制度

財産分与とは、離婚をした者の一方が他方に対して「財産の分与を請求する」ことができる制度であり、主に下記のようなものが挙げられます。

  • 夫婦が共同生活を送るなかで形成した財産の公平な分配
  • 離婚後の生活保障
  • 離婚の原因を作ったことへの損害賠償

なかでも、最初に挙げた「夫婦が共同生活を送るなかで形成した財産の公平な分配」は、財産分与の基本として考えられています。(※2)

2.対象となる財産

対象となる財産は、婚姻期間中に夫婦共同で築いた財産です。夫婦のいずれか一方の名義になっている財産であっても、実際には夫婦の協力によって形成されたものであれば財産分与の対象となります。
たとえば、夫の収入で土地建物を購入し、夫だけが名義になっている場合でも、妻が家事等を分担して夫に協力していたら、その土地や建物は実質的には夫婦の財産として考えられます。

3.財産分与の請求時期

財産分与は離婚までに協議を済ませておき、離婚と同時に分与でもよいですし、離婚後に分与を請求することも可能です。ただし、離婚から2年が経過すると家庭裁判所に申立てができなくなるので注意が必要です。(※3)

4.財産分与の分類

財産分与の種類は大まかに以下の3つに分類されます。

清算的財産分与

夫婦が協力して築いた婚姻中の財産関係の清算のために行われるもの

慰謝料的財産分与

慰謝料を払う現金が不足する場合等に、その不足分を財産分与で調整するもの

扶養的財産分与

離婚後の一方の配偶者の扶養のために行われるもの

財産分与が慰謝料や離婚後の扶養料に相当する不動産の取得と認められる「慰謝料的財産分与」「扶養的財産分与」の場合は、不動産取得税が課税されることにも留意しましょう。また、財産分与の対象となった不動産に、その不動産を取得した人が住む場合には、一定要件を満たせば、中古住宅を取得した場合の不動産取得税の軽減措置の適用が受けられます。

離婚により財産分与を受ける場合には税金も絡みます。どのような財産で分与を受けるか等、事前に話し合うことが必要です。

5.財産分与の割合は基本的に2分の1

不動産は登記簿上の持ち分に夫婦で差異がある場合でも、離婚時には夫婦で折半することになります。実際、家庭裁判所の審判では夫婦の財産を2分の1ずつに分けるよう命じられるケースが多く見られます。これは、共働きでも夫婦の一方が専業主婦または主夫であるケースの場合でも違いはありません。不動産などきれいに分割しにくい財産についても原則は同じです。

財産分与で家を分ける方法

現金や有価証券などの金融資産と違い、不動産は簡単に分けられる財産ではありません。ここでは、財産分与で家を分ける方法を具体的に解説します。

1.売却処分して代金を分割する

ひとつ目は、家やマンションを売却処分して代金を分割する方法です。住宅ローンがない場合、住宅の売却価格が住宅ローンの残額を上回る「アンダーローン」の状態であれば、そんなに難しいことではありません。売却したお金をそれぞれ分け合い、住宅ローンの残高があればきれいにローンを返済することが可能です。早めに買い手がつけば、早期に財産分与を完了することができます。
ちなみに、不動産を売却してもローンだけが残ってしまう「オーバーローン」の場合は、分割どころかマイナスの状態になってしまいます。

2.相手に持ち分を支払う

2つ目は住まいを相手に譲り、譲られたほうは相手に対して「相手の持ち分を支払う」方法です。この場合、固定資産税の納税通知書を確認したり、不動産鑑定士に依頼したりして住まいの評価額を調べ、算出された評価額の2分の1を、その住まいに住む人が住まない人に現金で支払います。
この場合、住宅ローンがない場合や相手側に支払う資力があれば問題はないのですが、住まいの売却価格より住宅ローンの残額が高い「オーバーローン」など、多額のローンが残っている場合は、譲り渡す際に金融機関の承認が必要となることが大半です(※4)。残りのローンの支払いについても、金融機関と話し合いが必要となります。

ローンを返済中の家を売却するには

不動産の売却には冷静な判断が必要です。離婚時には精神的に過剰な負担がのしかかり、早く解放されてすっきりしたいという気持ちになるかもしれません。かといって、感情に任せた対応は後悔を生む種になることも。事前に準備することで失敗を避けるようにしましょう。
ここでは、住宅ローン中の家を売却する際の確認事項を解説します。

1.土地・建物の権利関係の確認

まずは、土地や建物に設定される抵当権、借地権等の権利や所有者を登記事項証明書(登記簿)で確認することが必要です。登記事項証明書には、土地と建物の2種類があり、「表題部」「甲区」「乙区」に分かれています。「表題部」には、土地の場合、所在、地番、地目、地積が、建物の場合は所在、家屋番号、種類、構造、床面積が記載されています。
なお、土地、建物の所有者に関する権利や履歴は「甲区」で、所有権以外の権利(抵当権、地上権、賃借権、地役権、質権等)は「乙区」で確認できます。

2.連帯保証など債務関係を把握する

夫婦でローンを支払っている住まいからどちらかが出て行くと、契約違反になってしまうことが大半です(配偶者は原則としてその住宅に同居する)。そのため、離婚時には住宅ローンに関する債務関係も把握しなければなりません。
夫婦で住宅を取得した場合、連帯債務・保証関係は下記の3パターンがあります。

ペアローン

同一物件に対して夫婦がそれぞれ住宅ローンを借入れる2本立ての形です。それぞれが個別に債務を負うとともに、互いに連帯保証人になるのが特徴です。

連帯債務型

夫婦のうち片方が住宅ローンの主債務者となって住宅ローンを借入れ、もう片方は連帯債務者として同じ住宅ローンを借入れる形です。連帯債務者は主債務者と同等の返済義務が課せられるのが特徴です。

連帯保証型

夫婦のどちらかが住宅ローンを借入れて債務者として返済義務を負い、もうひとりがその連帯保証人となります。債務者が住宅ローンを滞納した場合は、代わりに返済する必要が生じます。

3.住宅ローンの残高確認

住宅ローンの残高確認も重要事項のひとつです。対象不動産のローンが残っている場合、まずは家の評価額とローン残額を比較してオーバーローンかアンダーローンかを確認したうえで、財産分与の対象になるかどうかが決まります。

オーバーローン

家の価値がローン残高より低く、不動産を売却しても、ローンだけが残ってしまうパターンです。資産価値がないため、財産分与の対象にはならないものとみなされます。家を売却することは難しいため、債務者がそのまま住んで住宅ローンを払うのが一般的です。

アンダーローン

家の価値がローン残高を上回り、不動産の売却により利益が得られるパターンです。この場合は、家を売却してローンを完済できます。その後は、ローンを完済して残ったお金を分けるか、債務者がそのまま住み続けて相手側に現金で持ち分を支払うか、どちらかの方法が取られます。

ローン返済中に離婚する場合の注意事項

住宅ローンがない場合と違い、住宅ローンの返済中に離婚して財産分与をすることは簡単ではありません。ここでは、住宅ローン返済中に離婚する際の注意事項を解説しきます。

住宅ローンの名義変更は簡単ではない

住宅ローンの名義変更には、金融機関の承認が必要であり、離婚がその理由となる場合は、残債を一括返済するように迫られることもありえます。
住宅ローンは、契約者になる人の収入や勤務先、他の借入状況等を審査したうえで、融資や融資金額を決定しています。そのため、契約途中で審査対象者以外の人に名義変更をすることは基本的にできません。単独名義に変更したい場合は、ローンの借り換えなどを視野に入れる必要が出てくる場合もあります。

連帯保証人から外れることは難しい

保証人と一口に言っても、普通の保証人と連帯保証人では責任の重さが異なります。保証人には借主本人に請求を行うよう貸主に主張できる抗弁権が認められていますが、連帯保証人には借主と同等の責任があり、抗弁権はありません。そのため、債権者からの請求を拒否できないのです。

一括返済を請求されることも

返済途中で住宅を他人に譲り渡すときは、金融機関に融資金の一括返済を求められることもあります。融資住宅を無断で他人に譲渡することは契約違反に当たるため、一括返済のほかに違約金を請求されることもあり、注意が必要です。
金融機関の承諾を得て債務を他人に引き継げる場合もあるので、離婚等やむを得ない事情があるときは、返済中の金融機関に申し出ましょう。

離婚後も妻が居住する場合のリスク

離婚後も住み慣れたわが家で暮らしたい女性の場合、住宅ローンがあって、かつ所有権名義とローンの債務者が夫の場合は、何かと心配が多いかもしれません。
ここでは、離婚後も妻が居住する場合のリスクについて紹介します。

1.不動産の名義と住宅ローンの債務者が夫のまま

不動産の所有権は夫にあり、住宅ローンもそのまま夫が支払い続けるのであれば、妻は住み続けることができます。ただし、夫が住宅ローンの支払いを滞納し続けると、最悪の場合、立退かなくてはなりません。場合によっては、夫に家賃を支払うという方法も考えられます。

2.不動産名義を妻に変更、債務者は夫のまま

先述のとおり、多くの金融機関では所有者と債務者を同一としているため、家の所有者を変更するには銀行の承諾が必要になります。簡単には変更できませんが、相談してみる余地はあるでしょう。ただし、債務者は夫のままなので、夫が支払いを滞納したら、というリスクはつきまといます。

3.不動産の名義とローン債務者を妻に変更

名義と債務者が同一のため理想的な方法ですが、妻が正社員で安定した収入のある職業に就いている、または資力があると判断されない場合、金融機関の審査は通りません。そのため、専業主婦だった方、パート勤めの方の場合、現実的には難しいかもしれません。

まとめ

今回は、離婚で降りかかってくる財産分与のリスクについて詳しく解説しました。
住宅ローンがない、または売却によって利益が出る場合は、財産分与はスムーズに進む可能性が高いと言えます。しかし、住宅ローンの返済中でローン残高が多い場合は、売却したくても売れない状態になりかねず、最悪の場合、家を処分して借金だけが残ってしまうこともあり得ます。住宅ローンを返済中の方は、お金にまつわるリスクがつきまとうリスクのあることを理解しておきましょう。
また、家を売却して現金を得られたとしても次に住む家を購入しない限り、毎月の家賃が発生することも生活上の負担になりえます。賃貸に住む場合、シニアになるにつれ入居審査が厳しくなっていきます。

離婚して不動産を財産分与する際には、このようなあらゆるリスクに対処する必要があることを踏まえ、慎重に対応していく必要があります。

※1 厚生労働省「人口動態統計速報(令和2年3月分)|P2.人口動態総覧-対前年比較-」
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/geppo/s2020/dl/202003.pdf

※2、※3 法務省ウェブサイト「財産分与」
http://www.moj.go.jp/MINJI/minji07_00018.html

※4 住宅金融支援機構「返済途中で住宅を他人に譲り渡すとき」
https://www.jhf.go.jp/loan/hensai/attension_tocyu.html