今すぐ取りかかりたい「資産整理」 デジタル資産も忘れずに

お金・資産

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相続税の問題や親族間のトラブルはないとしても、故人の資産の把握をするだけで家族に大きな負担がかかるケースが増えているようです。資産の確認と整理はいつでも思い立ったときに、定期的にやっていくのがおすすめです。

この記事の監修

續 恵美子

生命保険会社で15年働いた後、FPとしての独立を夢みて退職。その矢先に縁あり南フランスに住むことに――。夢と仕事とお金の良好な関係を保つことの厳しさを自ら体験。生きるうえで大切な夢とお金のことを伝えることをミッションとして、マネー記事の執筆や家計相談などで活動中。

「大した資産はないから遺言や相続対策のようなものは必要ない」。このように考えている人はいませんか? 自分にもしものことがあった場合、残された家族は葬儀費用の支払いや預貯金口座の相続手続きをはじめ、さまざまなお金関連の手続きをしなければなりません。

相続税の問題や親族間のトラブルはないとしても、故人の資産の把握をするだけで家族に大きな負担がかかるケースが増えているようです。

自分の死後に家族が困らないよう、自分の資産をすっきりと「整理」しておくことも大切です。

相続手続きとは

人が死亡したときにはさまざまは手続きが必要で、手続きの種類によっては期限が決められているものもあります。しかし、身近な人の死に立ち会ったことがないと、人が亡くなった後にどのような手続きが発生するのか具体的にわからないことも多いものです。いくつか代表的なものを見ていきましょう。

死亡届

人が死亡したときは、その人の死亡を知った日から7日以内(国外で死亡した場合は3カ月以内)に死亡届を役場に提出しなければなりません。なお、届出をする人は、死亡した人の親族や同居者、家主、地主、後見人など、法律で手続きできる人が決まっています。
死亡者が世帯主であった場合には、世帯主変更届なども必要です。

病院での精算

入院中の死亡など、医療機関にかかっていた場合には入院費用等の精算が必要です。

葬儀手配

通常、人が亡くなってすぐに行われるのは葬儀です。どのような葬儀にするかは親族の事情にもよりますが、一般的には葬儀社に手配をして、葬儀場などで弔問客を迎えて、通夜・告別式を行うことが多いでしょう。
葬儀社等への支払い、火葬の費用、お寺などへの支払いなどの葬儀費用は、相続税の計算の際に相続財産の価額から差し引くことができます。
相続税がかかるかどうかに関係なく、かかった費用はすべてメモしておき、領収証などはきちんと整理しておくことが大切です。

銀行口座

入院費用や葬儀費用など、故人の預金から出すという人は少なくありません。しかし、通常の場合、金融機関では、名義人が亡くなったことがわかった段階で、口座を凍結します。
相続法の改正により、2019年7月からは故人の預金残高の一定額までは現金の引き出しができるようになっていますが、そのための手続きが必要です。
なお、凍結とは預金の引出しができなくなるだけではありません。ほかにも、遺産分割が終了するまで、預入れ、振込の受入れ、口座振替などもできなくなってしまいます。

各種支払い関係

公共料金やローン、自動車保険、携帯電話、クレジットカードなど、故人が支払いしていたものがあれば、名義変更や解約などの各種手続きも必要です。特に故人名義の口座から自動振替されていたものは、口座が凍結されれば振替されなくなってしまいます。この場合、未納となってしまうことも考えられるため、注意が必要です。

生命保険

故人が被保険者または契約者になっていた生命保険や医療保険があれば、死亡保険金受取りや契約者名義変更などの手続きが必要です。

さまざまな金融資産、手続きせずに放っておくとどうなる?

死亡届や葬儀の手配は放っておくことはないはずですが、銀行や各種契約に関する手続きは、家族がその存在を知らなければ手続きが速やかにできなくなることもあるでしょう。
実はそのまま放っておくと、場合によっては経済的なダメージを受けてしまう場合もあります。これらの手続きをせずに時が経過するとどんなダメージがあるのかを知っておきましょう。

預金口座

2018年1月に施行された「休眠預金等活用法」により、2009年1月1日以降の取引から数えて10年以上取引きがない口座は休眠預金とみなされます。「取引き」とは、引出し、預入れ、振込み、口座振替、通帳記帳などのことを言い、本人以外に家族が知らなければ10年間そのままの状態ということも考えられます。
ちなみに、休眠預金の対象となるのは普通預金だけではありません。定期預金なども対象になりますので、家族も知らない預金が含まれているかもしれません。

休眠預金の対象になるもの

休眠預金の対象にならないもの

  • 普通預金
  • 定期預金
  • 当座預金
  • 別段預金
  • 貯蓄預金
  • 定期積金
  • 相互掛金
  • 金銭信託(元本補填のもの)
  • 金融債(保護預かりのもの)
  • 外貨預金
  • 譲渡性預金
  • 金融債(保護預かりなし)
  • 財形年金・住宅
  • 仕組預金
  • マル優口座

一般社団法人 全国銀行協会「休眠預金ってご存じですか?」を基に筆者作表

預金保険機構残高が1万円以上ある場合には金融機関から通知が発送され、受取りが確認されれば休眠預金とはされずにそのまま継続されます。1万円未満の場合には通知が発送されないまま、休眠預金とみなされます。

生命保険

生命保険の手続きは「故人が被保険者になっていた場合」と「故人が契約者になっていた場合(被保険者は第三者)」で手続きが異なります。

故人が被保険者になっていた場合

受取人に指定されている人が死亡保険金の請求手続きを行いますが、保険契約があることを知らずに手続きをしないまま一定期間を経過すると時効になってしまいます。
時効の期間は各保険会社が約款で定めていますが、一般的には保険金や給付金を受け取る権利は「支払事由が発生した日の翌日から3年」で消滅します。

故人が契約者になっていた場合(被保険者は第三者)

相続人が契約者変更の手続きあるいは解約手続きを行います。しかし、家族が契約の存在を知らずに何も手続きをしなければ、契約はそのまま続きます。
保険料を払わなければ契約が失効してしまいます。失効するまでの猶予期間は保険料の払込み方法によって異なり、次表のようになります。

払込期月
(保険料を払込むべき月)

払込猶予期間

月払

月ごとの契約応当日の属する月の1日から末日まで

払込期月の翌月末日まで

半年払

半年ごとの契約応当日の属する月の1日から末日まで

払込期月の翌々月の月単位の契約応当日まで(契約応当日が2月、6月、11月の各末日の場合には、それぞれ、4月、8月、1月の各末日まで)

年払

年ごとの契約応当日の属する月の1日から末日まで

公益財団法人 生命保険文化センター「保険料の払込猶予期間と失効」を基に筆者作表

解約返戻金がある契約であれば、失効しないように解約返戻金の範囲内で保険料を自動的に立替え払いされることもあります。この場合でも、解約返戻金がなくなってしまうと失効してしまいますが、立て替えされたことにより利息が付いてしまうことも知っておきましょう。早めに解約しておけばよかったということもあるのです。

証券口座

証券口座で取引きする商品のなかには、売買などの取引きをしなければ手数料はかからないものもあります。しかし、投資信託は保有しているだけで信託報酬がかかり、信託財産から手数料を引かれ続けてしまいます。また、積み立て方式で投資信託や株式を購入する契約をしているようなケースでは、定期的に買付手数料が徴収される場合もあります。

クレジットカード

クレジットカードの種類にもよりますが、多くの場合は年会費を徴収されています。解約手続きをしなければ、クレジットカードは支払遅延などの事故がない限り、一般的に自動更新されます。通常、年会費は口座振替されていますから、預金口座がそのままで預金残高も十分にあるという状態だと、そのまま年会費を徴収され続けてしまいます。

ローン

住宅ローンや教育ローンなどの大きなローンは家族も把握しているケースがほとんどだと思います。しかし、カードローンやクレジットカードのキャッシングなどは、家族が知らない場合もあるようです。ローンは返済が滞ると通常の返済利息とは別に遅延損害金が課せられます。

以上、さまざまな金融資産を見てみました。大きくまとめると、預金などのプラスの資産は放っておくと減るおそれが、ローンなどのマイナス資産は増えるおそれのあることが分かります。いずれも注意が必要です。

デジタル資産はありませんか?

遺産にダメージを受ける前に、家族がやるべき手続きを行うことができれば問題はありません。しかし、インターネットを使った取引が多くなっている最近では、資産の把握をするのがより難しくなってきているようです。たとえば、ネット銀行やネット証券などで開設している口座。店舗のある機関で契約をしたものであっても、クレジットカードや携帯電話、カードローンなどはオンライン明細のものが多く、本人のアカウントにログインしなければ確認できません。
これらの「デジタル資産」と呼ばれるパソコンやスマートフォンにデータとして記録されている資産は、郵便物などで確認できず、本人が伝えてなければ家族も把握しにくいものです。

デジタル資産の主なものをまとめてみました。自分も持っているという人も多いのではないでしょうか。

主なデジタル資産の例

  • ネット銀行
  • ネット証券
  • ネット金融サービス(クレジットカード、カードローンなど)
  • 電子マネー
  • マイレージ、ポイント
  • 暗号資産(仮想通貨)
  • スマホ決済、など

出所)筆者作表

資産を整理するための「資産簿」を作っておきましょう

ここまで見てきたように、相続が発生すると遺族はさまざまな手続きをしなければなりません。家族のことを思えば、手続きをスムーズに進められるよう、所有している資産や契約についてわかるようにしておきたいものですね。その方法として、市販のノートでもいいので資産やパスポートを記載した「資産簿」のようなものを作っておくといいでしょう。
金融機関(会社)名、資産の種類、銀行通帳や生命保険証書などの保管場所、デジタル資産の場合はIDとPWなどを書いておきましょう。最低でも会社名とIDくらいはわかるようにしておきたいものです。
また、パソコンやスマートフォン自体にパスワードでロックをかけている場合には、そのパスワードも伝えておくのが望ましいでしょう。ただし、大切な資産管理状況ですから、ノートの取り扱いには厳重な注意が必要です。

資産簿を書いていくうちに、自分でも忘れていた資産が見つかることも考えられます。使っていない預金通帳やクレジットカードが出てくるようなら、これを機会に整理してしまうのもいいでしょう。無駄な手数料を削減したり、複数の資産をまとめたりすることで利息を多めに得られるようになるかもしれません。

資産の件数が多ければ多いほど、家族がしなければならない手続きの数も増えてしまいます。一般的に相続にともなう解約手続きや名義変更手続きは、故人および相続人の戸籍(除籍)謄本、相続人の印鑑証明書等、多くの書類が必要です。手続きの件数が多ければ、そのぶんの手間に加えて証明書等の取得費用もかかることも考えておきたいですね。

なお、相続はいつ発生するかわからないもので、老後まで待つ必要性はありません。資産の確認と整理はいつでも思い立ったときに、定期的にやっていくのがおすすめです。