老後の生活資金に困らないための基礎知識

貯金だけでは老後貧乏かも リタイア後に取り組みたい資産運用

お金・資産

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老後の生活費に不安がある場合は、高齢者になっても資産を運用しながら取り崩すことを考える必要があります。高齢者の資産運用は「リスクのとりすぎ」と「判断力の低下」に注意が必要です。保有資産のうち、一定額は預貯金や元本保証の個人向け国債などで保有し、リスクをとりすぎないようにしましょう。

この記事の監修

大西カツシ

フリーランスの金融ライター。一般企業の経理職、会計事務所などを経て独立。保有資格は2級FP技能士・AFP。投資経験(10年以上)とFP資格を活かして、主に投資や資産形成に関する記事を執筆しています。

平均寿命が伸びて高齢化が進み、「人生100年時代」と言われるようになりました。
寿命が伸びるのは喜ばしいことである一方で、老後の生活費をどう確保するのかが課題になっています。

現在の日本は低金利が続いており、銀行に預けてもお金は増えないため、預貯金だけで資産を長持ちさせるのは難しい状況です。そのため、老後生活に入ってからも資産運用を真剣に考える必要があります。ただし、資産運用は元本割れリスクがありますし、高齢期には判断力の低下にも注意しなくてはなりません。

今回は、老後に入ってからの資産運用で注意すべきことや投資商品の選び方について説明します。

預貯金だけで老後資金は大丈夫!?

金融審議会の市場ワーキング・グループが作成した報告書によると、高齢無職世帯(夫65歳以上、妻60歳以上の夫婦のみの無職世帯)の場合、毎月の生活費は5万円不足し、20年で約1,300万円、30年で約2,000万円の取り崩しが必要になるという試算が出ています。

金融審議会 市場ワーキング・グループ報告書「高齢社会における資産形成・管理(令和元年6月3日)」P10、P16の情報を基に作図

この報告書は、「老後2000万円問題」として話題になったので、ご存知の方も多いのではないでしょうか。これは、あくまでも平均的な高齢無職世帯のモデルケースであり、この数字がそのまま当てはまるわけではありませんが、参考にはなるでしょう。

公的年金だけで毎月の生活費が不足する場合は、預貯金などの資産を取り崩して補わなくてはなりません。また、「子や孫に住宅購入費や教育費などを援助したい」「趣味や旅行を楽しみたい」など、老後に余裕のある生活を送りたい場合は、まとまったお金がより必要になります。

高齢者にも資産運用が必要な時代に

日本では、2016年1月にマイナス金利政策が導入され、現在も低金利が続いています。大手銀行や地方銀行では、2020年4月から一斉に定期預金金利が年0.01%から年0.002%に引き下げ、普通預金金利(年0.001%)とほぼ変わらない水準になりました。

老後に向けてまとまったお金を用意したいところですが、銀行に預けるだけでお金を大きく増やすのは難しい状況です。このような経済下では、老後生活に入ってからも、資産を運用しながら取り崩すことを真剣に考える必要があります。運用で資産を増やすことできれば、預貯金のみで保有するよりも資産が長持ちするかもしれません。

運用すると資産はどれくらい長持ちするのか

資産運用によって、資産はどれくらい長持ちするのでしょうか。たとえば、65歳から預貯金3,000万円を毎年120万円(月10万円)取り崩すと、89歳で資産はなくなってしまいますが、65歳からこの3,000万円を利回り3%で運用しながら毎年120万円取り崩せば、100歳(35年後)の時点でもまだ1,000万円以上の資産が残ります。

▼65歳から預貯金3,000万円を毎年120万円(月10万円)取り崩した場合

年齢

65歳

70歳

80歳

90歳

100歳

金融資産残高

3,000万円

2,400万円

1,200万円

0万円

累計取崩額

0万円

600万円

1,800万円

3,000万円

 

▼65歳から預貯金3,000万円を利回り3%で運用しながら毎年120万円取り崩した場合

年齢

65歳

70歳

80歳

90歳

100歳

金融資産残高

3,000万円

2,840万円

2,442万円

1,906万円

1,186万円

累計取崩額

0万円

600万円

1,800万円

3,000万円

4,200万円

これは、あくまでもシミュレーション結果であり、このとおりに運用できる保証はありません。また、金融資産の金額や運用利回りによって、資産を維持できる期間は変わってきます。それでも、預貯金だけで保有するよりも資産運用するほうが、資産が長持ちする可能性のあることがわかります。

高齢者の投資商品の選び方

老後生活に入ってからも、資産運用しながら生活費の不足分を取り崩す場合、どのような投資商品を選べばいいのでしょうか。
しばらく使う予定がない資産のうち、リスクをとって運用するぶんは、たとえば「インデックスファンド」に投資することを検討しても良いかもしれません。

インデックスファンドとは、特定の指数(日経平均株価など)に連動する投資成果を目指して運用される投資信託です。日経平均株価に連動する商品であれば、日経平均株価が上がるとインデックスファンドの基準価額も上がります。運用コストが比較的低く、投資テーマが古くならないので、安心して長期保有できるのが特徴です。

インデックスファンドは、日本証券業協会の「高齢者に対する投資勧誘ガイドライン」において、役席者(支店長など)の事前承認なしで勧誘可能な商品の一例として紹介されています。

投資先は、信託報酬が低く、購入時手数料や信託財産留保額(解約時にかかる費用)が無料のファンドを選ぶといいでしょう。また、投資対象は日本株だけでなく、先進国株や新興国株なども組み合わせることで、リスク分散効果が期待できます。

高齢者の資産運用の注意点

老後生活に入ってからの資産運用では、「リスクのとりすぎ」と「判断力の低下」に注意が必要です。

資産運用は元本保証ではなく、たとえば株式投資の場合、株価が下がって元本割れするリスクがあります。お金を増やしたいからといって、保有資産をすべてインデックスファンドなどのリスク資産に投資してしまうと、株価が暴落したときに資産を大きく減らすことになりかねません。最近では、新型コロナウイルス感染拡大の影響で、株価が一時的に大きく下落する場面もありました。
保有資産のうち、一定額は預貯金や元本保証の個人向け国債などで保有し、リスクをとりすぎないようにしましょう。

高齢期においては、判断力の低下にも注意が必要です。
日本証券業協会の「高齢者に対する投資勧誘ガイドライン」では、75歳以上の方を「高齢顧客」と定義し、金融機関に対して投資商品の販売について慎重な対応を求めています。たとえば、75歳以上の高齢顧客に対して比較的リスクが高い投資商品(勧誘留意商品)を勧める場合、役席者の事前承認が必要です。また、80歳以上の高齢顧客の場合は、原則として勧誘の翌日以降の受注となります。(※)
ガイドラインの内容からも、高齢期になって判断力が低下すると、適切な投資判断が難しくなることがわかります。

大切な資産を守るためには、信頼できる家族などと資産状況を共有し、金融機関との取引では同席してもらうなどのサポートを受けることも大切です。

まとめ

老後の生活費に不安がある場合は、高齢者になっても資産を運用しながら取り崩すことを考える必要があります。うまく運用できれば、預貯金のみで保有するよりも資産が長持ちするかもしれません。ただし、資産運用は元本割れすることも考えられますので、リスクをとりすぎないようにしましょう。

また、高齢期においては、判断力の低下にも注意が必要です。大切な資産を守るために、信頼できる家族など、運用や資産管理についてサポートを受けられる人を探しておきましょう。

※日本証券業協会「高齢顧客に対する勧誘による販売について」
http://www.jsda.or.jp/about/public/bosyu/files/20130913_sannkou_JK.pdf