老後の生活資金に困らないための基礎知識

老後資金に退職金を当てにするなら知っておきたい税金の話

お金・資産のこれから

退職金をどのように受け取るのが有利かは、状況によって異なります。まずは退職金の見込額を把握し、勤続年数から退職所得控除額を計算することから始めましょう。

【ライタープロフィール】大西カツシ

勤務先に退職金制度があれば、退職するときに退職金を受け取ることができます。
一般的には勤続年数が長いとまとまった退職金を受け取れるため、老後資金として退職金を当てにしている方も多いのではないでしょうか。また、退職金を受け取るときには税金がかかるのか、かかるとしたらどれくらいかかるのか、気になる方も多いと思います。退職金は所得税・住民税の課税対象になりますが、退職金の額や受け取り方法によって税金は変わってきます。老後資金に退職金を当てにするなら、事前に退職金の見込額を把握したうえで、どのように受け取るのが有利かを考えておくことが大切です。
今回は、退職金の平均支給額や受け取り方法、税金について解説します。

退職金の平均支給額

退職金にかかる税金を確認するには、退職金の見込額を把握しておく必要があります。厚生労働省の資料によると、勤続20年以上かつ45歳以上の退職者が受け取る平均退職給付額は以下の通りです。

厚生労働省「平成30年就労条件総合調査 結果の概況 P19」の情報を基に筆者作図

退職金の平均支給額は、最終学歴や退職事由によって異なります。たとえば、定年退職者の場合、大学・大学院卒は1,983万円、高校卒は1,618万円です。また、同じ大学・大学院卒でも、退職事由が定年や会社都合であれば約2,000万円支給されますが、自己都合の場合は1,519万円と低くなります。
厚生労働省の資料は参考にはなりますが、あくまでも平均額であるため、ご自身にそのまま当てはまるかどうかはわかりません。老後資金に退職金を当てにしているのであれば、勤務先の担当部署に確認するなどして、退職金の見込額を把握しておきましょう。

退職金の税金は受け取り方法で異なる

退職金は所得税・住民税の課税対象ですが、受け取り方法によって所得の分類が異なるため、税金も変わってきます。退職金の受け取り方法は以下2つです。

  • 「一時金」として一括で受け取る
  • 「年金」として分割で受け取る

一時金で受け取る場合は「退職所得」となり、退職所得控除が適用されます。一方、年金の場合は「公的年金等に係る雑所得」に分類され、公的年金等控除が適用されます。
勤務先の退職金制度によっては、一時金と年金を併用できる場合もあるので、併用を検討する場合は勤務先に確認してみましょう。

一時金で受け取る場合(退職所得)の税金の計算方法

退職金を一時金で受け取る場合、次の算式で退職所得の金額を計算します。

(収入金額-退職所得控除額)×1/2=退職所得の金額

上記の収入金額は、源泉徴収される前の退職金の額です。退職所得控除額の計算方法は以下の通りです。

勤続年数(A)

退職所得控除額

20年以下

40万円×A(80万円未満の場合は80万円)

20年超

800万円+70万円×(A-20年)

国税庁「No.1420 退職金を受け取ったとき(退職所得)」の情報を基に作図筆者作表

たとえば、勤続年数が30年であれば、退職所得控除額は1,500万円(800万円+70万円×(30年-20年)です。

退職金は長年の功労に報いる目的で支給されるので、勤続年数が長くなるほど退職所得控除額も大きくなる仕組みになっています。勤務先から受け取る退職金の額が退職所得控除額の範囲に収まっていれば、退職所得が発生しないため、税金はかかりません。
もしも退職所得が発生した場合は、他の所得とは合算せず(分離課税)、退職所得に所得金額に応じた税率を掛けて所得税・住民税を計算します。(※1)

まずはご自身の勤続年数から退職所得控除額を計算し、退職金に税金がかかるかどうか確認してみましょう。

「退職所得の受給に関する申告書」を提出すれば確定申告は不要

退職金を受け取るときは、確定申告が必要になるのかも気になるのではないでしょうか。
退職金を一時金で受け取る場合、退職時に「退職所得の受給に関する申告書」を勤務先に提出すれば確定申告は不要です。(※2)勤務先が退職金から税金を差し引いて、代わりに納税してくれます。通常は勤務先から案内されますが、「退職所得の受給に関する申告書」について案内がない場合は担当部署に確認しましょう。

年金で受け取る場合の税金の計算方法

退職金を年金として受け取る場合は、年金の収入額(公的年金等と合算)から公的年金等控除額を差し引いた所得金額(公的年金等に係る雑所得の金額)に税金がかかります。公的年金等控除額の計算方法は以下の通りです。

年金を受け取る人
の年齢

公的年金等の収入金額

公的年金等控除額

65歳未満

130万円未満

70万円

130万円以上 410万円未満

収入金額×25%+37.5万円

410万円以上 770万円未満

収入金額×15%+78.5万円

770万円以上

収入金額×5%+155.5万円

65歳以上

330万円未満

120万円

330万円以上 410万円未満

収入金額×25%+37.5万円

410万円以上 770万円未満

収入金額×15%+78.5万円

770万円以上

収入金額×5%+155.5万円

国税庁「No.1600 公的年金等の課税関係」の情報を基に筆者作図

たとえば、65歳以上で公的年金等の収入金額が350万円の場合、公的年金等控除額は125万円(350万円×25%+37.5万円)になります。そして、公的年金等にかかる雑所得の金額225万円(350万円-125万円)が、所得税・住民税の課税対象となります。公的年金等は支給時に源泉徴収されます。また、公的年金等の収入金額が400万円以下で、かつ公的年金等にかかる雑所得以外の所得金額が20万円以下であれば、確定申告は不要です。(※3)

退職金の受け取り方法は一時金と年金のどちらが得なのか

退職金を受け取るとき、ひとつの会社に長く勤めて退職する方は、一時金で受け取るほうが有利かもしれません。勤続年数が長いほど、退職所得控除額は大きくなるからです。退職金の額が退職所得控除額の範囲に収まれば税金はかからないので、その場合は一時金を選択するといいでしょう。ただし、退職金をどのように受け取るのが有利かは、状況によって異なります。まずは退職金の見込額を把握し、勤続年数から退職所得控除額を計算することから始めましょう。
退職金の受け取り方法をご自身で判断できない場合は、税理士などの専門家に相談するのが確実です。

※1 国税庁「退職所得の源泉徴収税額の速算表」
https://www.nta.go.jp/m/taxanswer/2732_besshi.htm

※2 知るぽると(金融広報中央委員会)「退職金や年金にかかる税金」
https://www.shiruporuto.jp/public/house/tax/syotoku/syotoku008.html

※3 国税庁「高齢者と税(年金と税)」
https://www.nta.go.jp/publication/pamph/koho/kurashi/html/03_1.htm

ライタープロフィール

大西カツシ

2級FP技能士・AFP

フリーランスの金融ライター。一般企業の経理職、会計事務所などを経て独立。保有資格は2級FP技能士・AFP。投資経験(10年以上)とFP資格を活かして、主に投資や資産形成に関する記事を執筆しています。