民間の介護保険には加入すべき? 公的介護保険との違いと老後準備の考え方とは

お金・資産のこれから

万一に備える保険は、そのリスクが「絶対」ではないだけに加入すべきかどうか悩ましいものです。世帯の経済状況とともに、さまざまな介護保険商品をしっかり確認しながら、最善の備えを検討しましょう。

【執筆者】續 恵美子

歳を重ねるほど、介護の保障に不安を感じる人は少なくないようです。
介護の保障には公的介護保険がありますが、介護認定状況により全てのサービスを受けられるとは限りません。また、介護サービスを受けると自己負担が必要になります。

介護費用への備えにはさまざまな方法がありますが、そのひとつが「民間保険会社の介護保険」です。とはいえ、老後資金の準備もしながら、必要となるかどうかわからない将来の介護のために保険料を払い続けるのは、家計への負担も小さくありません。そのため、貯金という手段で対策しようと考える人も多いようです。

そこで今回は、介護の実態についてその費用面を中心に紹介していきます。民間の介護保険に加入するかどうか、そのヒントにしてみてはいかがでしょうか。

何が違う? 公的介護保険と民間の介護保険

2000年に「公的介護保険制度」が創設されて20年が経ちました。介護が必要になったときの保障として公的介護保険で介護サービスを受けられることは、いまでは多くの人がご存じだと思います。介護保険で利用できるサービスは、大きく分けると次のようなものがあります(※1)。

  • 介護サービスの利用にかかる相談、ケアプランの作成
  • 自宅で受けられる家事援助等のサービス
  • 施設などに出かけて日帰りで行うデイサービス
  • 施設などで生活(宿泊)しながら、長時間または短時間で受けられるサービス
  • 訪問・通い・宿泊を組み合わせて受けられるサービス
  • 福祉用具の利用にかかるサービス

これらのうち、具体的にどのサービスをどれだけ利用できるかは、認定された要支援度および要介護度により異なります。また、どの場合にも、何かをしてもらったり、何かができたりという、いわゆる「現物給付」です。

いずれかのサービスを受けると、原則としてそのサービスに対する利用額の1割が自己負担になります。利用者の所得によっては自己負担割合が2割あるいは3割になる場合もあります。

要介護度ごとに決められている限度額を超えてサービスを受けることもできますが、その分は全額が自己負担になります。また、施設における食費など、公的介護保険の対象外となるものもあり、その分は全額自己負担になります。

対する民間の介護保険は、お金が支給される仕組みです。具体的には保険会社や保険商品によりますが、一般的には契約した金額が年金や一時金として支給されます。
年金あるいは一時金が支給される基準として、「要介護○以上と認定されれば」というように公的介護保険の要介護度に連動させるものや、保険会社が独自に基準を設けているものがあります。

▼公的介護保険と民間介護保険の違いのまとめ

公的介護保険

民間介護保険

給付形態

現物給付

現金給付

給付内容

  • 在宅での家事・生活援助等のサービス
  • 施設でのケアサービス
  • 施設での宿泊サービス
  • 福祉用具貸出サービス など
  • 介護一時金
  • 介護年金
  • 上記2つの併用

給付基準

要支援12、要介護15のいずれかに認定されることが必要

(認定された要(支援)介護度により受けられるサービス内容が異なる)

保険会社が定めた基準による

(公的介護保険の要介護度に連動させているところもある)

筆者作表

民間の介護保険には加入するべき?

公的介護保険と民間の介護保険、それぞれの仕組みを簡単に説明しましたが、両者の違いや関係は、公的医療保険と民間の医療保険の違いをイメージするとわかりやすいと思います。

たとえば病気になって医療機関で診療・治療を受けたときに(国民)健康保険を利用しますが、その時に3割の自己負担分を支払います。
74歳以上になると(国民)健康保険ではなく、後期高齢者医療制度になりますが、原則1割の自己負担割合が、所得によっては3割になる人もいます。
入院した時の差額ベッド代や食事代など(国民)健康保険対象とならない医療費もあり、その分は全額自己負担になります。

仮に医療費がかかっても、貯蓄でまかなえる場合には、あえて民間の保険に加入する必要はありません。しかし、これらの経済的負担はいつ、どれだけ必要になるのかは予想がつきません。預貯金を取り崩すと困るような場合の対策として、現金で給付される民間の医療保険に加入するものです。

介護保険も同様です。介護の保障は公的介護サービス(給付)がベースにあるとはいえ、介護用品を購入したとき、介護サービスを利用したときの自己負担分など継続的な費用がかかるものです。介護の程度や場合によっては住居のリフォームが必要になるなど、公的介護保険ではまかなえない大きな経済的な負担が必要になることもあります。
「現金給付」である民間の介護保険はこのような経済的負担を軽減させる役割を持っていますが、必要となる負担が貯蓄でまかなえる程度であればあえて民間の介護保険に加入する必要はないでしょう。

しかし、いつ、誰に、どのような介護が必要となる事態が訪れるかは、なかなか予測できません。逆に、いつ、どのような人に、どのような程度の介護が必要となっているかを知っておくと、民間の介護保険に加入すべきか、あるいはどのような保障をどの程度つければ良いかの判断基準になりそうです。

要介護認定者の数は20年で約3倍!?

厚生労働省の調べによると、公的介護保険が創設された2000年4月末時点で要介護(要支援)認定を受けた人の数は218万人(※2)でした。それから20年経った現在(2020年1月末)の暫定人数は、667万人と約3.06倍に増えています。ちなみに第1号被保険者(65歳以上の人)に対する65歳以上の認定者数の割合は約18.4%です。(※3)

要支援・要介護度の別を見ると、最も多いのが要介護度1で、全体の約20.2%、次いで要介護度2(17.3%)、要支援2(14.2%)、要支援1(14.1%)と続きます。それぞれ年齢が上がるにつれ、要支援・要介護認定者の数が増える傾向にあり、なかでも75歳を超えるとその割合が大きくなっています。

厚生労働省「介護保険事業状況報告(暫定)|令和2年1月分 第2-1表 要介護(要支援)認定者数・男女計」を元に筆者作成

男女別では、男性が210.5万人、女性が456.9万人と女性のほうが圧倒的に多く、全体の約7割を占めています(※3)。

介護が必要になった主な原因も気になるのではないでしょうか。内閣府の高齢社会白書(令和元年)によると、要支援や要介護状態となった原因は多いものから順に次のようになっています。

1位:認知症(18.7%)
2位:脳血管疾患(脳卒中)(15.1%)
3位:高齢による衰弱(13.8%)
4位:骨折・転倒(12.5%)

ちなみに、男性は「脳血管疾患(脳卒中)」が23.0%、女性は「認知症」が20.5%と特に多い状況です(※4)。

介護費用の状況は?

次に、介護が必要となった人がどれだけ介護費用を負担しているかを知っておきましょう。
生命保険文化センターが毎年実施している「生命保険に関する全国実態調査(平成30年度)」によると、介護の経験がある人が介護に要した費用の平均額は、一時費用で平均69万円(※5)でした。なお、この数字は公的介護保険サービスの自己負担費用を含み、住宅改造や介護用ベッドの購入など一時的にかかった費用などの合計額を平均したものです。ただし、要介護(要支援)度によっても必要となる費用には差があり、次のようになっています。

▼要介護別の一時的な介護費用の合計(単位:円)

公的介護保険利用経験あり

公的介護保険

利用なし

要支援

要介護

平均

1

2

1

2

3

4

5

17万

76万

51万

59万

93万

55万

81万

69万

34万

生命保険文化センター「生命保険に関する全国実態調査(平成30年度)」164Pを基に筆者作表

なお、月々支払っている(支払っていた)費用は、1カ月当たり平均で7.8万円(※5)。要介護(要支援)度ごとの平均額は次のとおりです。

▼要介護度別の月額費用(単位:円)

公的介護保険利用経験あり

公的介護保険

利用なし

要支援

要介護

平均

1

2

1

2

3

4

5

5.8万

5.4万

4.5万

5.7万

8.7万

9.9万

10.5万

8.0万

4.4万円

生命保険文化センター「生命保険に関する全国実態調査(平成30年度)」165Pを基に筆者作表

なお、介護を始めてからの期間(介護中の場合は経過期間)は平均54.5カ月(4年7カ月)(※5)となっています。仮に、これらの平均額と平均期間を用いて計算してみると、介護費用として合計505万円かかることになります。

69万円+(8万円×54.5カ月)=505万円

要介護の状態や在宅の場合はリフォームなどがどれだけ必要になるかといった条件によって変わりますが、ひとつの目安として知っておくといいでしょう。

民間の介護保険に加入するなら

民間の介護保険を検討するかどうかは、もしも自分や配偶者が要介護(要支援)者になった場合に約500万円を預貯金から負担できるかを検討してみるといいでしょう。

介護を必要とするのは75歳頃からのケースが多いのは先に見たとおりです。リタイアして10年近く経過した後に必要になる場合が多いですから、老後資金とともに準備をしておくことや、リタイア後に貯蓄を取り崩し過ぎないようにできるかどうかも合わせて考えてみましょう。もしも、準備に不安を感じるようであれば生命保険会社にお金を管理してもらうつもりで民間の介護保険に加入するのもいいかもしれません。

ただし、保険商品によっては解約返戻金や死亡保険金(給付金)がないものもあり、介護を必要とすることがなければ払い込んだ保険料は掛け捨てになってしまいます。そこで、万一の介護リスクを考えて加入を検討する場合には、比較的軽度の介護で給付されるものを選ぶのもいいでしょう。なかには要介護3相当の状態にならなければ支給されないもの、要支援2の状態で支給されるものなどさまざまです。

現在の要介護認定の状況を見ると、要介護1から下の認定者が多い状況ですから、保険金を受給できる可能性が高いかどうかをきちんと確認しておきましょう。保険会社が指定する支給要件までは進行していなくても、一定の要支援(要介護)状態になれば保険料の払込みが免除になるものもあります。保険料の払込みが免除になっても保障は続きますので、介護の状態が進行し、支給要件に該当すると一時金や年金を受けられます。

万一に備える保険は、そのリスクが「絶対」ではないだけに加入すべきかどうか悩ましいものですが、たとえば夫婦で貯蓄と保険に分けて準備をする方法もあります。世帯の経済状況とともに、さまざまな介護保険商品をしっかり確認しながら、最善の備えを検討しましょう。

※1 厚生労働省「消費者のための介護サービス情報ガイド」
https://www.mhlw.go.jp/content/000402889.pdf

※2 厚生労働省「公的介護保険制度の現状と今後の役割 平成30年度」
https://www.mhlw.go.jp/content/0000213177.pdf

※3 厚生労働省「介護保険事業状況報告の概要(令和2年1月暫定版)」
https://www.mhlw.go.jp/topics/kaigo/osirase/jigyo/m20/dl/2001a.pdf

※4 内閣府「令和元年版高齢社会白書」
https://www8.cao.go.jp/kourei/whitepaper/w-2019/zenbun/pdf/1s2s_02_01.pdf

※5 生命保険文化センター「生命保険に関する全国実態調査(平成30年度)」
https://www.jili.or.jp/research/report/pdf/h30zenkoku/2018honshi_all.pdf

執筆者

續 恵美子

ファイナンシャルプランナー(CFP®)

生命保険会社で15年働いた後、FPとしての独立を夢みて退職。その矢先に縁あり南フランスに住むことに――。夢と仕事とお金の良好な関係を保つことの厳しさを自ら体験。生きるうえで大切な夢とお金のことを伝えることをミッションとして、マネー記事の執筆や家計相談などで活動中。