老後の生活資金に困らないための基礎知識

老後に備えての資産運用 始める人が増えている「投資信託」とは

お金・資産のこれから

投資信託は少額から投資でき、運用をプロに任せられるので、初心者の方でも始めやすいのが特徴です。ただし、元本保証ではないので、余裕資金の範囲で投資することが大切です。また、短期の値動きに一喜一憂せず、長期投資をするのがポイントです。

【ライタープロフィール】大西カツシ

住宅ローンの返済や教育費などで、老後資金が準備できないという人は多いのではないでしょうか。老後に備えて資産運用を始めたいと思っても、投資経験がないと、どんな金融商品を選べばいいかわからないかもしれません。
そんななか、老後資金の備えのために「投資信託」を始める人が増えています。低金利の状態が続いており、銀行預金のままで資産を大きく増やすのは難しいことが背景にあるようです。
投資信託は元本保証ではありませんが、銀行預金よりも資産を増やせる可能性があります。ただし、投資信託はデメリットもあるので、実際に投資を始める前に特徴を理解しておくことが大切です。

今回は、投資信託の特徴やメリット・デメリット、選び方などについて詳しく解説します。

投資信託はどんな金融商品?

投資信託とは、投資家から集めた資金をひとつにまとめ、運用のプロが株式や債券などで運用する金融商品です。運用で得た利益は、投資家それぞれの投資額に応じて分配されます。

投資対象や運用方針は、ファンドによってさまざまです。たとえば、国内株式だけに投資するファンドもあれば、ひとつの契約で国内外の株式・債券・不動産などに分散投資できるファンドもあります。 投資信託は、少額から投資可能で、運用をプロに任せられることから初心者の方でも始めやすいのが特徴です。銀行預金のように元本保証ではないので、運用がうまくいって利益を得られることもあれば、株価の下落などによって損をすることもあります。しかし、ファンドの選び方や購入方法を工夫することで、リスクの軽減は可能です。また、銀行預金だけで運用するより大きな資産を作れる可能性もあります。

投資信託で資産運用を始めるメリット

投資信託で運用を始めるメリットは以下の2つです。

銀行預金に比べてお金が増えやすい

投資信託は一般に利回りが高く、複利効果が期待できるため、銀行預金に比べてお金が増えやすいのがメリットです。将来の利回りを正確に予測することはできませんが、金融庁の資料によると、国内外の資産に分散投資することで、年平均2~4%程度の利回りが期待できることがわかります。

金融庁「つみたてNISA早わかりガイドブック」の情報を基に作図

なお、月5万円積み立て、年平均3%で運用できた場合の運用成果は以下の通りです。

積立期間

投資元本

運用収益

資産合計

5年

300万円

23.2万円

323.2万円

10年

600万円

98.7万円

698.7万円

15年

900万円

234.9万円

1,134.9万円

20年

1,200万円

441.5万円

1,641.5万円

金融庁「資産運用シミュレーション」で計算

運用収益を再投資していくことで複利効果が期待できるため、積立期間が長くなるほど運用収益の増え方が大きくなります。これはあくまでもシミュレーション結果であり、このとおりに運用できるとは限りませんが、銀行預金よりも資産を大きく増やせる可能性はあります。運用成果によっては、投資信託の収益で老後の生活費だけでなく、自宅のリフォーム資金なども準備できるかもしれません。

資産寿命を延ばせる

平均寿命が延びたことで、老後資金をどう確保するかが現役世代の課題になっています。投資信託は運用しながらも少しずつ取り崩すことで、資産寿命を延ばせるのもメリットです。たとえば、銀行預金2,000万円を70才から毎年120万円(月10万円)取り崩すと、87歳(17年目)ですべて使い切ってしまいますが、投資信託2,000万円を3%で運用しながら取り崩す場合は、70歳から毎年120万円(月10万円)を取り崩しても、93歳まで資産を使うことができます。

なお、これらはあくまでもシミュレーション結果です。運用成果や資産額、取り崩す金額によって資産寿命は変わってきますが、投資信託をうまく活用すれば老後の資産が長持ちします。

投資信託のデメリットと注意点

投資信託は元本保証ではなく、株価や為替などの影響を受けて基準価額が変動するため、一時的に資産が目減りする可能性があります。投資信託で資産形成に取り組むときは、短期の値動きに一喜一憂せず、長期投資を心がけましょう。また、資産運用ではリスクをとりすぎないことも大切です。株価は上昇と下落を繰り返しており、暴落しても長期的には回復する可能性が高いものの、回復までに時間がかかることもあります。銀行預金など元本保証の商品をしっかり確保して、リスクのあることを踏まえたうえで運用できる金額だけを投資信託に振り向けるようにしましょう。

老後に備えるための投資信託の選び方

国内ではさまざまな投資信託が販売されています。ただ、運用方針や投資対象はファンドによって異なるため、どんな投資信託を選べばいいかわからないのではないでしょうか。ここでは、老後に備えるための投資信託の選び方を紹介します。

インデックスファンドに投資する

投資信託は「インデックスファンド」と「アクティブファンド」の2種類があります。インデックスファンドとは、日経平均株価やTOPIX(東証株価指数)など特定の指数に連動する運用成果を目指して運用される投資信託です。日経平均株価のインデックスファンドであれば、日経平均株価が上昇すると利益が出て、下落すると損失が発生します。インデックスファンドは運用成果がわかりやすく、運用コストが比較的低いのが特徴です。

一方、アクティブファンドは、市場平均を上回る運用成果を目指して運用される投資信託です。大きな利益を得られる可能性もありますが、市場平均を上回る利益を得られる保証はなく、運用コストが高い傾向にあります。老後のために資産形成に取り組むのであれば、市場平均の利益が期待できるインデックスファンドが適しています。

運用コストが低いファンドを選ぶ

投資信託で利益を得るには、運用コストが低いファンドを選ぶことも大切です。投資信託では、以下の運用コストがかかります。

  • 購入時手数料
  • 信託財産留保額(解約手数料に相当)
  • 信託報酬

まずは、購入時手数料・信託財産留保額が無料のファンドを選びましょう。信託報酬とは、投資信託を運用・管理してもらうための経費です。別途支払うのではなく、投資信託の保有中は運用資産から毎日差し引かれます。投資信託を選ぶときは、信託報酬が年率0.2%未満のインデックスファンドを選ぶとよいでしょう。運用コストは運用成績に大きな影響を与えるため、なるべくコストが低いファンドを選ぶことが大切です。

毎月分配型は避ける

投資信託の中には、「毎月分配型」と呼ばれるファンドがあります。毎月分配金が支払われるため、定期収入を得られることに魅力を感じるかもしれませんが、老後のための資産形成には向いていません。分配金を出さずに利益を再投資したほうが、複利効果によって長期的には資産が増えやすくなるからです。また、毎月分配金は運用コストが高いファンドが多く、元本を取り崩して分配金が支払われるケースもあります。資産形成には不向きなので、毎月分配型のファンドは避けましょう。

投資信託を運用するときに活用したい制度

ここでは、投資信託を運用するときに活用したい制度を2つ紹介します。

NISA(一般NISA、つみたてNISA)

NISA(ニーサ:少額投資非課税制度)とは、投資信託を非課税で運用できる制度です。投資信託の利益には通常約20%の税金がかかりますが、NISA口座で購入すると非課税になります。
「一般NISA」と「つみたてNISA」の2つがあり、どちらかを選択して利用できます。一般NISAは年120万円が上限で、非課税期間は最大5年間です。一方、つみたてNISAは年40万が上限で、非課税期間は最大20年間、購入方法は積立投資に限定されています。投資信託を一括購入する場合は一般NISA、積立投資ならつみたてNISAを活用するといいでしょう。

iDeCo(個人型確定拠出年金)

iDeCo(イデコ)は任意で加入できる年金制度です。個人で掛金を拠出して投資信託などで運用を行います。掛金は全額所得控除で、運用益は非課税になり、受け取るときも税制優遇を受けられるのがメリットです。自営業者や専業主婦、公務員、一部の会社員が加入できます。掛金の上限は加入者の状況によって異なり、自営業者は月68,000円(年816,000円)、企業年金制度がない会社員で月23,000円(年276,000円)です。現在加入できるのは60歳までですが、今後65歳まで延長される見込みで、50代の方でも加入するメリットはあります。

このように、NISAとiDeCoは税制優遇を受けられるお得な制度なので、投資信託で資産形成に取り組むならうまく活用しましょう。

まとめ

投資信託は少額から投資でき、運用をプロに任せられるので、初心者の方でも始めやすいのが特徴です。老後の備えとして投資信託を活用すれば、銀行預金よりも資産を増やせる可能性があります。ただし、元本保証ではないので、余裕資金の範囲で投資することが大切です。この記事で紹介した注意点や選び方を参考に、投資信託で資産形成を始めてみてはいかがでしょうか。

ライタープロフィール

大西カツシ

2級FP技能士・AFP

フリーランスの金融ライター。一般企業の経理職、会計事務所などを経て独立。保有資格は2級FP技能士・AFP。投資経験(10年以上)とFP資格を活かして、主に投資や資産形成に関する記事を執筆しています。