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介護保険サービスを受けるには要介護認定が必須! 申請から認定までの流れと注意点

お金・資産

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介護保険は、本人にとって最適な要介護度で利用するのがベストであり、要介護認定で普段の状況を正しく理解してもらうことが重要です。要介護認定は介護保険の給付額を決定づける重要な審査なので、しっかり頭に入れていきましょう。

この記事の監修

渡辺 有美

独身時代は都市銀行に勤務し、その後、結婚と子育てを経て介護の道へ。介護福祉士としてデイサービス・特養・訪問介護の現場で10年以上働いた経験を活かし、高齢者の方々の役に立つ記事を多数執筆しています。

介護が必要な人にとって、頼りになるのが「介護保険」です。さまざまな介護サービスを非常に少ない負担で利用できるため、当人や家族にとっては自分たちの生活を支える柱のひとつといえるでしょう。

介護保険は、「要介護度」によって利用範囲が決められており、それを判定する審査を「要介護認定」といいます。要介護度はその後の介護生活の質に大きく関わってくるため、どの介護度に認定されるかは利用者にとって重大な問題です。

今回は、この「要介護認定」について、申請方法や調査の内容、受ける側の心構えなどを中心にお話ししていきます。介護保険の給付額を決定づける重要な審査なので、しっかり頭に入れていきましょう。

介護保険サービスとは?

40才になると健康保険加入者はすべて介護保険に加入します。ただ、肝心の「どんな時に使えるのか」「いくらぐらい給付されるのか」といった介護保険の中身については、実はよく知らない......という人もいるのではないでしょうか。

介護保険とは、被保険者の介護にかかる費用の一部が給付される保険のことで、個人の介護の負担を社会全体で支えることを目的に作られた制度です。内容を大まかにご説明しましょう。

介護保険を利用できる人

介護保険の加入者は、65才以上の「第1号被保険者」と、40才から64才までの「第2号被保険者」の2種類に分けられています。このうち介護保険を利用できるのは、原則として「第1号被保険者の人が、要支援や要介護の状態になったとき」。

ただ、第2号被保険者の場合も、以下の特定疾病により要介護状態になった場合に限り、受給者の資格が得られます。

  • 末期がん
  • 関節リウマチ
  • 筋萎縮性側索硬化症
  • 後縦靱帯骨化症
  • 骨折をともなう骨粗鬆症
  • 初老期における認知症
  • 進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症及びパーキンソン病
  • 脊髄小脳変性症
  • 脊柱管狭窄症
  • 早老症
  • 多系統萎縮症
  • 糖尿病性神経障害、糖尿病性腎症および糖尿病性網膜症
  • 脳血管疾患
  • 閉塞性動脈硬化症
  • 慢性閉塞性肺疾患
  • 変形性関節症(両側の膝関節又は股関節に著しい変形をともなう)

介護保険で受けられるサービス

介護保険というと、デイサービスや訪問介護を思い浮かべる人が多いと思いますが、ほかにもさまざまなサービスがあります。主な内容は以下のとおりです。

  • 訪問系サービス......訪問介護、訪問看護、訪問入浴など
  • 通所系サービス......デイサービス(通所介護)、通所リハビリテーションなど
  • 短期滞在系サービス......ショートステイなど
  • 施設サービス......特別養護老人ホーム(特養)、介護老人保健施設(老健)など

このほかに、車イスや杖などをレンタルする「福祉用具貸与」や、自宅の手すり設置や段差解消のリフォームをおこなう「住宅改修費支給」などがあります。

介護サービスの自己負担はどのくらい?

介護保険サービスを利用したときの自己負担額は、基本的に介護サービス費用の1割ですが、一定以上の収入がある人は2~3割の負担になるケースもあります。

民間企業で同じサービスを利用すれば100%実費になることを考えると、かかった費用の7~9割が支給される介護保険は、利用者にとって非常にお得な制度といえるでしょう。さらに、自己負担額が一定の金額を超えると、超過分が戻ってくる「高額介護サービス費制度」もあります。

一方、支給限度額を超えた分の「サービス利用料」、施設サービスを利用した際の「食費」「生活費」「居住費」等は原則として自己負担になります。条件によっては負担軽減措置が受けられるケースもありますが、念のため自己負担となる出費についてもしっかり把握しておきましょう。

厚生労働省 老健局「公的介護保険制度の現状と今後の役割 平成30年度」の情報を基に作図

要介護認定とは?

介護保険のサービスを利用するには、まず介護が必要な状態かどうか、どのくらいの介護が必要かを事前に認定してもらう必要があり、そのために行われる審査を「要介護認定」といいます。

要介護度は、要支援1~2、要介護1~5の7つに区分されています。

厚生労働省老人保健課「資料:要介護認定の仕組みと手順」の情報を基に作図

要支援1~2は、起き上がりや立ち上がりといった動作が不安定で生活に多少の影響はあるものの、基本的なことは自力で行える段階です。

要介護2からは、歩行や入浴といった日常生活にサポートが必要になり、認知機能にも低下が現われ始めます。

要介護3以上になると、食事、排泄、着替え、入浴のほぼすべての介護が必要になり、要介護4や5になると寝たきりになる人も少なくありません。

要介護度が認定されると、利用者は要介護度別に決められている利用限度額の範囲内で、自分に必要な介護サービスを利用していくことになります。

厚生労働省「2019年介護報酬改定について」を基に作表

要介護認定の流れを押さえておきましょう

介護保険の利用を希望する場合は、市区町村の窓口や地域包括支援センターで申請書を提出します。
要介護認定は、「申請→訪問調査→一次判定→二次判定→要介護度の決定→本人へ通知」の流れで行われます。

訪問調査

申請後、日程を調整したのち調査員が本人のもとを訪れ、本人の状況を直接見ながら決められた項目にそって調査が行われます。

一次判定

訪問調査の結果と主治医の意見書をもとに、コンピューターによる一次判定が行われます。

二次判定

福祉・医療・保険分野の学識経験者らによる「介護認定審査会」において二次判定が行われます。一次判定の結果、主治医の意見書、訪問調査時の特記事項をもとに最終的な要介護度が決まります。

厚生労働省「要介護認定に係る制度概要」の情報を基に作図

訪問調査のポイント

要介護認定のステップのうち、認定結果に大きく影響するのが「訪問調査」です。訪問調査ではどのようなことをチェックされるのか、詳しくみていきましょう。

訪問調査でチェックされる項目

調査員が利用者のもとを訪れ、「認定調査票」の内容に沿って聞き取りをしていきます。
調査のポイントは、以下の5項目と、医療措置についてです。

①身体機能・起居動作
まひや拘縮の有無、視力や聴力といった「身体機能」、起き上がり・寝返り・立ち上がり・立位保持といった「起居動作」を確認します。

②生活機能
日常生活で必要となる、「食事」「排泄」「衣類の着脱」「移動」「外出頻度」などの様子を確認します。

③認知機能
意思の伝達ができるか、場所や季節を理解しているか、名前・生年月日・年齢を言えるかなどを確認します。

④精神・行動障害
「物盗られ妄想」に代表される被害妄想、作り話や同じ話を繰り返す、物忘れ、大声を出す、行動が自分本位、昼夜逆転など、精神状態や行動における問題点がないかチェックします。

⑤社会生活への適応
薬の服用、お金の管理、買い物、かんたんな料理など、社会生活への適応度をチェックします。

⑥その他:医療処置について
過去14日間に受けた、「点滴「透析」「ストーマ(人工肛門)」「酸素療法」「胃ろう」といった特別な医療措置の内容について確認します。(※)

訪問調査での注意点とは?

利用者としてもっとも避けたいのが、本人の状態に適さない要介護度に認定されてしまうことでしょう。実際に、想定よりも軽い認定が出てしまう例はたびたび見受けられ、その原因のひとつとして考えられるのが、「本人の要介護状態が調査員に正しく伝わっていない」というケースです。
このような事態を避けるため、訪問調査のときに本人や家族が気をつけたい注意ポイントをお話しします。

調査には家族が同席する

本人だけでも訪問調査を受けることはできますが、より正しい判定を受けるためには、できれば家族が訪問調査に同席するのが望ましいです。なぜなら見慣れない調査員を前に緊張して、いつもとまったく異なる言動をとる高齢者は決して少なくないからです。特に認知症の人は、家族の前と他人の前では別人のようなふるまいをすることが往々にしてあります。「他人の前ではきちんとしないといけない」という意識も働き、いつもは時間のかかる動作をサッとこなしたり、普段と違いスムーズに受け答えができたりといった例も珍しくありません。そのため、当日は本人の調子に左右されないよう、なるべく本人の普段の様子を熟知している家族が立ち合い、正確な状況を伝えるようにしましょう。

「介護保険認定申請書」に、当日の立ち合い者を記入する欄があります。申請時に、この欄に名前・住所・連絡先を記載しておくと、日程調整の段階で立ち合い者に連絡をしてくれるケースもあります。都合の悪い曜日や時間がある場合は、申請時に伝えておきましょう。

認定調査票の内容を把握しておく

訪問調査を受ける前の準備として、前述の「認定調査票」の中身をよくチェックしておきましょう。
当日何を聞かれるのか、どんな点を調査されるのをあらかじめ知っておき、ありのままの状態を伝えられるよう備えておくと、調査員により正しい情報が伝わりやすくなります。

伝えたいことを事前にメモしておく

本人の現在の状況を正しく理解してもらうのに、30分~1時間という時間は少々短く感じるかもしれません。調査員のペースで調査が進行してしまい、後になって伝え忘れに気づいて後悔することのないよう重要なことは事前にメモにおこしておくのがおすすめです。これまでの病歴、手術の有無、ケガのほか、日常生活での問題点や困っていることをできるだけ具体的に記載しておき、伝え漏れを防ぎましょう。

また、「薬をよく飲み忘れる」「最近食欲が落ちていて心配」など、家族から見て不安な点があればそれも一緒に伝えておくことが大切です。要介護認定調査票には特記事項を記入する欄があり、そこへ何か記載されていると二次判定の「介護認定審査会」の際に認定の参考にしてもらえます。

ささいなことであっても、本人や家族が不便や不安を感じているようであれば、念のため調査員に伝えるようにしましょう。

現状をありのままに伝える

要介護度によって、受けられる介護サービスの内容や幅が変わってきます。ただ、要介護度が高いほうが有利かというと、一概にそうともいえません。たしかに要介護度が上がるほどサービスをたくさん利用できるのは事実ですが、同じサービスを利用しても要介護度が高いほうが、自己負担が高くなってしまうケースがあります。本来ならもっと安く利用できたかもしれないサービスに、要介護度が高いという理由で出費が増えてしまっては、本末転倒になりかねません。
訪問調査では必ずありのままの現状を伝え、実際の要介護度にマッチした認定を受けるようにしましょう。

認定結果に納得が行かないときは?

もし要介護度の認定結果に不満があるときは、要介護認定のやり直しができる場合があります。認定の通知を受けた次の日から60日以内に、都道府県に設置されている「介護保険審議会」に「不服申し立て」をすると、認定結果が妥当かどうかの判断がなされます。ここで認定のやり直しが認められた場合は、再び要介護認定を受けることができます。

もうひとつの方法が、「区分変更」です。これは、認定結果が出たあとに心身の状態が変化し、要介護度と実際の状況が合わなくなった場合に申請します。

不服申し立ての場合、審査結果が出るまでに数カ月かかるため、区分変更を検討したほうが、手続きがスムーズになるケースが多いです。まずは、ケアマネジャーや地域包括支援センターに相談してみましょう。

まとめ

介護保険は、本人にとって最適な要介護度で利用するのがベストであり、そのためには要介護認定で普段の状況を正しく理解してもらうことが重要です。どんな調査が行われるのかを事前に把握しておき、ぜひ十分な準備をして当日を迎えましょう。

※「令和2年度平均年収と学歴調査

参考

※ 厚生労働省「要介護認定 認定調査員テキスト 改訂版」
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12300000-Roukenkyoku/0000077237.pdf