退職金で住宅ローンを一括返済するのは得か? 損か?

お金・資産

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どのように住宅ローンを返済していくかを計画しておくことが大切です。

この記事の監修

北川晴彦

FPとして、お金・資産に関する悩みを総合的に解決している。家計の悩みだけではなく、税金や不動産・投資などの専門知識が求められる分野でのアドバイスを得意としている。

子育てが一段落すると、夫婦2人で暮らすのにちょうどいいサイズの家にしたいと思う人は多いのではないでしょうか。ただ、住宅ローンを利用した場合、返済期間が長すぎるのは、老後を考えると不安です。では、退職金で一括返済してしまうのが良いのでしょうか。

退職金で一括返済した方がいいかは一概に言えない

「住宅ローンは『借金』だから、ない方がいい」
そのように考えてしまうのも無理もありません。だからこそ、住宅ローンを退職金で一括返済するという選択肢が思い浮かびます。
しかし、一括返済をすることにはメリットもあればデメリットもあるため、一概にどちらが良いとは言い切れません。まずはメリット・デメリットを知ることから始めましょう。

一括返済をするメリットは?

住宅ローンを一括返済するメリットには、次のようなものがあります。

・退職後のローン返済がなくなる

総務省「家計調査報告(2018年)」によれば、高齢者世帯の住居費は、無職の夫婦で月額1万3,625円、無職の単身者で同1万8,268円となっています。(※)
ここから、無職の高齢者世帯は、多くが住宅ローンの返済を終えていると考えられます。もし、住宅ローンの返済が続いているのであれば、さらに多くの出費を覚悟しなければなりません。年金生活をする老後は、毎月の出費が少しでも抑えられていることも大切です。

・団体信用生命保険の保険料に相当する金利負担がなくなる

住宅ローンを借りた際に、少し金利を上乗せして団体信用生命保険に加入する場合があります。ローンの返済中に万が一のことがあれば、死亡保険金が金融機関に支払われることでローンの返済が不要になります。

一括返済をしないメリットは?

一方、一括返済をしないことにもメリットがあります。これは裏返すと、一括返済をすることにデメリットがある、とも言えます。

まず、一括返済をしないことで手元に資産が多く残ることが挙げられます。
退職後の生活では、収入を得る手段が少なくなります。そのため、手元に少しでも多くの資金を残しておくことが安心にもつながります。突然、入院することになったような場合でも、その費用に困る可能性は低くなるでしょう。

団体信用生命保険に加入している場合は、これも老後生活の安心につながります。
平均寿命が伸び続け、ローン返済までに生存している確率の方が高いのは事実ですが、保険に加入するのは「万が一のことがあった場合への備え」です。生きている可能性が高いからといって、それだけで保険を解約するのは、必ずしも正しいとは言えません。

一括返済をしないメリットは、もうひとつあります。それは、「金利が非常に低い」ことです。
もちろん金利が低いと言ってもゼロになるわけではありません。住宅ローンが残っている間は金利を負担しなければなりませんから、一括返済する場合よりも総返済額が多くなってしまいます。しかし、ローンを一括返済してしまわずに、退職金を資産運用に回すことも可能です。

仮に、住宅ローンが1,000万円残っているときに1%の金利がかかっているとすると、利息分が10万円発生します。一括返済した場合は、この10万円とそれ以降の利息が軽減されることになります。
ただ、500万円を運用に回して、年間3%の利回りで増やすことができれば、その利益は15万円となります。このように、上手に運用することができれば、住宅ローンの利息以上のリターンを得ることもできます。NISAなどの非課税制度を活用すれば、手元に残せるお金をさらに増やすこともできるでしょう。

ただ、資産運用は損失が発生することもあるものです。堅実な運用を心がけることができるか、本当に信用できるアドバイザーを見つけることができるかも重要ですから、安易に投資をするのはやめましょう。

「一括返済するかどうか」という考え方が間違い

このように、住宅ローンを退職金で一括返済するかどうかは、どちらを取っても一長一短があることがわかります。どちらかが正解というわけではないのです。

はじめに考えたいのは、「安心して老後生活を送ることができるかどうか」です。50代で家を購入した場合、ローンの返済完了が80才を過ぎているというのは、年金生活中のローン返済が10年以上続く状態です。これでは、年金だけで生活しているにもかかわらず、毎月の支出が非常に多くなってしまい、生活費の心配が大きくなってしまうかもしれません。

そこで、住宅ローンを組むときに、返済期間を働いている期間に合わせる方法があります。これからは、定年が引き上げられていき、65才や70才でも普通に働いている人が増えるでしょう。
年金の受給が始まる65才歳まで働くのであれば、ローンの返済を65才で終了させる。年金の受給開始を繰り下げて受給額を多くし、70才まで働いて、ローンの返済を70才で完了させるのも良いでしょう。
まお、2019年時点の制度では、年金の受給開始を1カ月遅らせると、年金額が0.7%上昇します。これは、5年繰り下げた場合、1年分の年金額は42.0%増える計算となります。

子どもが独立し、夫婦2人で生活するようになっているのであれば、生活費にも余裕があるはずですので、毎月の返済額を多めにしても無理なく返済していくことができるのではないでしょうか。

充分な老後資産が確保できているなら一括返済してもOK

老後生活を安心して送れるようにしながら住宅ローンの返済期間を決めることになりますが、そのうえで、一括返済や繰上げ返済をしていくことも考えていきましょう。

長寿化が進むため、かなり長生きした場合に備えて、浪費はしないように心がけていくことでしょう。その結果、当初の予測よりも支出を抑えることができれば、その分を一括返済や繰上げ返済に回していきましょう。ローンを借りている期間が長ければ長いほど、支払う利息の金額も大きくなってしまうのですから、明らかに返済できる余裕があるときにはローンを少なくするべきです。

まとめ

住宅ローンを退職金で一括返済すべきかどうかは、どちらが良いと言い切れるものではありません。家を購入するのも、そのために住宅ローンを組むのも、よりよい生活を送るためです。

だからこそ、住宅ローンが残っていても精神的に安心できる生活を送ることができる方が良いなら、無理に退職金で一括返済する必要はありません。逆に、多額のローンが残っていることが気になってしまうのであれば、無理のない範囲で一括返済や繰上げ返済を検討するのが良いでしょう。
働く期間や年金を受給し始める年齢なども総合的に考えて、どのように住宅ローンを返済していくかを計画しておくことが大切です。