【老後破産】他人事ではない現実と回避するためにやるべきこと

お金・資産

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老後資金の問題についてなるべく早く取り組んでいきましょう。

この記事の監修

續 恵美子

生命保険会社で15年働いた後、FPとしての独立を夢みて退職。その矢先に縁あり南フランスに住むことに――。夢と仕事とお金の良好な関係を保つことの厳しさを自ら体験。生きるうえで大切な夢とお金のことを伝えることをミッションとして、マネー記事の執筆や家計相談などで活動中。

老後のことを考えると不安という人は多いですが、とりわけ不安に感じる人が多いのが老後資金の問題でしょう。公的年金だけで生活するのは難しいことはなんとなくわかっていても、「老後2000万円問題」や「老後破産」などの話題を見聞きすると、今の貯金や退職金で十分かどうか気になるものです。
これには長生きの問題も、少なからず影響します。老後生活でのやりくりは、公的年金と貯金の取り崩しで行う場合がほとんどです。場合によっては生存中に老後資金が枯渇してしまう老後破産の心配も出てきますが、リタイア前の対策で老後資金がゼロに近づく日をできるだけ遅くすることは可能です。決して他人事として放っておけないこの問題に、なるべく早く取り組んでいきましょう。

無視できない老後破産が増えている状況

現役で働いている人の多くは「貧困状態」や「生活保護」は自分とは縁がないと考えているでしょう。しかし現在、生活保護を受けているリタイア層の人たちも、かつてはそう思っていたかもしれません。
厚生労働省が公表している生活保護の被保護者調査によると、現在生活保護を受けている人の過半数は高齢者(※1)という状況です。 生活保護とは、年金や手当などの給付、預貯金などの金融資産や生活に利用されない土地・家屋などの資産、労力などすべての収入となり得るものを活用してもなお生活に困窮する人に対し、困窮の程度に応じて必要な保護を行い、健康で文化的な最低限度の生活を保障し、自立を助長する制度です(※2)。厚生労働大臣が定める基準で計算される最低生活費に収入が満たない場合に、その不足分が保護費として支給される仕組みです。
生活困窮の原因としては収入の減少や喪失、傷病、貯金等の減少・喪失などさまざまなことが考えられますが、前述、厚生労働省の資料を見る限りでは「貯金等の減少・喪失」が発端となって生活保護を受け始めた世帯が年々増えている様子です。

厚生労働省「被保護者調査 平成29年度(月次調査確定値)」のデータを基に作図

ここで高齢者世帯に注目してみましょう。
前述したように、現在、生活保護を受けている人の過半数は高齢者世帯という状況ですが、その割合は年々増えています。また、生活保護者の約9割が単身世帯であることを踏まえると、独居老人の破産が増えていることがうかがえます。

高齢者世帯が、生活保護を受けている割合(年次推移・1カ月平均)

 

平成29年度

平成28年度

平成27年度

平成26年度

平成25年度

世帯数

864,714

837,029

802,811

761,179

719,625

全世帯に対して占める割合

53.0%

51.4%

49.5%

47.5%

45.4%

なぜ老後破産が増えているのか

生活保護を受けている高齢者の世帯数は、約86万世帯ですが、生活保護を受けてはいないものの、貧困状態にある高齢者は200万人程度いるとも言われています。
先のグラフで「預貯金の減少・喪失」が理由で生活保護を受け始めた人が増えている様子と、高齢者世帯の被保護者が増えている状況を重ね合わせて考えると、老後破産の状態になる人が増えているのは、現役時代に準備していた老後資金の不足が原因のひとつといえるでしょう。
というのも、現在、公的年金を受給している高齢者世帯の約半数は、収入源が公的年金だけという世帯です。家族などからの援助を頼れるなら別ですが、ほかに収入がなく生活費などの支出が、受け取る年金額よりも多ければ貯蓄を取り崩すほかありません。預貯金が十分に準備できていなかったり、準備した以上に支出が多かったりすると破産状態になってしまうことは容易に想像できます。

厚生労働省「平成30年 国民生活基礎調査」図11を基に作図

一般的にはリタイア後の預貯金は、現役時代のように預貯金残高が増えたり減ったりせず、残高が少しずつ目減りし続けていくものです。現役時には生活保護とは縁遠くても、定年までの資産形成状態とリタイア後の支出管理の状況によっては、誰でも破産の可能性があることは否めません。
預貯金が目減りするスピードは世帯によって異なりますが、なかには現役の時と同じ感覚で高額消費や不要な買い物を続ける方もいるでしょう。また、医療費や介護費用、介護にともなうリフォーム費用など予定していなかった支出が必要になるケースもあります。
老後破産の原因は個々の世帯で異なる事情があるのが通常ですが、我が家には関係ないと思わずにリタイア後の経済行動の心がけとして覚えておきましょう。

将来の自分は自分で守ろう!老後破産を回避する方法は?

老後破産はもとより、経済的に困らない老後生活に向けて、いまからできる対策をご紹介します。定年までの期間の長短は違っても、これから老後を迎える誰もが取りたい行動です。

必要となる老後生活資金を知る

「2,000万円不足」という情報に惑わされず、ご自身の老後の生活資金はいくら必要になりそうか、あらためて見積もりを立てましょう。老後の必要資金は一般的に次の式に当てはめるとおおよその見積もりができます。

老後生活に必要な金額=毎月の基本生活費(a) × 12カ月 × 想定される年数(b) + 医療や介護などの費用(c)

(a):一般的には現役時の7割程度とされていますが、子どもへの援助の必要性など個々の事情に合わせるようにしましょう。
(b):リタイア生活の期間は人それぞれに異なりますが、人生100年時代と言われる昨今、長めに見積もるようにしましょう。30年程度にしておくのが無難です。
(c):医療費や介護費用を合わせ、一般的に200万円~300万円とされています。持ち家の状況によってはリフォーム費用も含めておきましょう。

自分が将来もらえる年金額を見積もる

自分と配偶者がもらえる予定の年金額を確認しておきましょう。毎年誕生月に日本年金機構から「ねんきん定期便」が送られてきます。50歳以上の人の分は、現時点の年金加入状況のまま60歳になるまで年金保険料を納め続けるものとして計算された公的年金の見込み額が記載されています。

日本年金機構「ねんきん定期見方ガイド(50歳以上の方)

この中で、65歳からの年金受け取り予想額は「b」と「i」の項目に記載されています。これまでの働き方によって国民年金だけの人や厚生年金も受給できる人などさまざまですが、「i」の部分では受給できる年金の内訳を確認することができます。
ただし、この先60歳までの間に役職定年などによる収入減少や、早期退職で加入する年金制度の変更があれば実際に受け取れる年金額は、記載された金額よりも少なくなる可能性があります。この点には注意してください。

収入を増やす

専業主婦期間が長い人は、ずっと働いていた人よりも年金額は少なくなります。今からでもパートなどで働き、収入を得始めるのもいいでしょう。いまは高齢者が働く環境も整いつつありますから、60歳以降もそのまま働き続けられる可能性は十分にあります。また、年金の繰り下げ受給も検討してみましょう。公的年金制度では1カ月受給を繰り下げるごとに0.7%増額されます。仮に1年繰り下げるなら8.4%増える計算になります。預貯金利息よりもお得ですから、最初の1~2年は年金をもらわず預貯金だけで生活できるように調整するのもいいでしょう。

ローンはなるべく早く完済する

住宅ローンを組んだ当初は、退職金で完済する予定にしていた人も多いと思います。しかし、長生きが老後における経済的リスクとなり得る昨今では、できるだけ老後に使えるお金を蓄えておくことが必須です。住宅ローンをまだ返済中の人はできるだけ早めに見直し、借り換えや繰り上げ返済で定年前に完済できるようにしたいものです。退職金はローン完済ではなく、定年後のための資金として活用するようにしましょう。

まとめ

老後破産を回避するために実行したい対策をいくつか紹介しましたが、どれも早いうちから検討し、行動に移すことが大切です。老後資金はしっかり貯めても多すぎることはないはずです。もう十分に準備したという人も、まだまだという人も、これから定年に向け準備のスピードを上げていきましょう。お金で悩まない老後のために現在の家計を見直し、節約にもぜひ目を向けましょう。

※「令和2年度平均年収と学歴調査

出所

※1 厚生労働省「生活保護の被保護者調査(平成29年度(月次調査確定値))の結果」
https://www.e-stat.go.jp/stat-search/file-download?statInfId=000031797196&fileKind=2

※2 厚生労働省「生活保護制度」より要約
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/seikatsuhogo/seikatuhogo/index.html