賃貸で老後を暮らす両親の生活に、必要な支援やお金は?

お金・資産

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両親が賃貸住宅で暮らし続けていくために、利用できる制度などについてご紹介します。

この記事の監修

清水 沙矢香

2002年京都大学理学部卒業後、大手放送局に主に記者として勤務。2017年退職後、Webライターとして、経済を中心とした取材経験や各種統計の分析を元に、お金やライフスタイルなどについて関連企業に寄稿。
趣味はサックス演奏。自らのユニットを率いてライブ活動を行う。

「持ち家を売却した」「マイホームを購入していない」などの事情から、高齢者が賃貸住宅で暮らすことは珍しくありません。しかし、収入を年金に頼るようになると、身体的なことだけでなく、家賃を払いつづけられるのか、安いところに引っ越すにしても、入居審査や保証人はどうすれば良いのか、といったお金の面での不安も出てくると思います。
そこで今回は、両親が賃貸住宅で暮らし続けていくために、利用できる制度などについてご紹介します。

賃貸でも安心して老後を暮らしたい心情と、不安要素

内閣府の調査では、60歳以上の人のうち9割が「現在住んでいる地域に住み続ける予定がある」と答えています。持ち家の人のほうが割合は高く95.5%にのぼりますが、賃貸住宅で暮らす人もまた、75.4%がそのように回答しています(※1)。近所づきあいや買い物などの利便性、病院への通いやすさも含め、「慣れた生活圏で今後も暮らし続けたい」意向が強いようです。
しかし、賃貸住宅で暮らす方は、「高齢期の賃貸を断られる」「家賃等を払い続けられない」など、持ち家の人には無い不安を抱えており、これらを解消していく必要があります。

内閣府「令和元年版高齢社会白書」 1 住まいに関する意識図1-3-3を基に作図

高齢者の収入から「払える家賃」を把握

仕事をしなくなると、当然収入は減り、年金に頼る生活となります。そうなった時の家計の現状を把握しておく必要があるでしょう。高齢になるにつれて、必要になる医療費が増えたり、何らかの生活支援のためのサービスを受ける必要性が出てきたりもするため、余裕を持って見積もらなくてはなりません。
年金だけの生活で、賃貸住宅に住み続けられるか? 誰もが気になるところですが、これは、貯蓄金額によります。

参考値として総務省の「2018年家計調査報告(※2)」を見ると、高齢夫婦かつ無職の世帯の1カ月の可処分所得は19万3743円、不足額は41,872円というデータが出ています。この不足分は、預貯金など資産の取り崩しで補っていることが予測できます。

ただし、可処分所得と不足額を合わせた全体の消費支出額23万5615円のうち「住居」に割く支出割合は5.8%(金額に換算すると約1万3700円)であることを踏まえると、これは持ち家世帯の話である、と推察できます。

賃貸に住む場合は、家賃との差額だけ不足分は広がり、預貯金などの取り崩しがさらに必要になることが考えられます。不足額を抑えるには、いまよりも家賃のかからない賃貸への住み替えを検討するのが良いでしょう。早めの計画が功を奏します。その際、いまの住居の近くであればベストですが、難しいようであれば、たとえば家族の近くなど何かあったときに頼れる人が身近にいる土地も候補に挙げられます。

高齢者の賃貸契約、保証人に関する不安

いざ住み替えるとなった時に生じる不安が、入居審査にあたっての「保証人」の問題です。 全体的に和らぎつつあるものの、高齢者の入居に拒否感がある貸主はまだまだ多いことが、国土交通省の調査から分かっています。(※3)。主に家賃の不払いに対する不安が強く、中には高齢者のみの世帯に対して入居を制限しているケースがあることも事実です。

国土交通省「家賃債務保証の現状」住宅確保要配慮者に対する賃貸人の入居制限の状況を基に作図

この不安を解消できそうな手段として、一般社団法人高齢者住宅財団が行なっている「家賃債務保証サービス」があります。
このサービスは、滞納家賃の12カ月分、原状回復や訴訟費用を月額家賃の9カ月分に相当する金額までを保証するというもので、60歳以上であれば年齢の上限なく受けられます。ただし、保証金が大家に支払われるのは、退去が完了し、家賃などの債務額が確定してからです。また、これは一時的な立て替えであり、債務がなくなるわけではありません。
ただ、この制度を利用することで、「借りやすくなる」という利点があります。貸主や賃貸仲介会社に、制度が利用できるか確認しましょう。

高齢者の生活に配慮した住宅

高齢者に対する優遇や補助金制度を利用できる住宅もあります。独立行政法人都市再生機構(UR都市機構)が高齢者向けに運営している各種住宅です。家賃の面だけではなく、設備や住環境が配慮されています。
たとえば「高齢者向け優良賃貸住宅」の場合、60歳以上で所得が一定以下の人に対し、国やURが家賃の一部を負担する形で、一般市場よりも賃料負担が安く済むというものがあります。
住宅の構造としては、床の段差の緩和や手すりの設置といった配慮があります。また、有料ではありますが事故や急病などの事態には、提携する民間事業者が駆けつけてくれるサービスがあり、そのためにトイレや浴室にコールボタンが設置されています。住宅によっては、センサーを使って生活リズムを把握し、異常があれば通報するという設備が付いているところもあります。所得水準にもよりますが、「家賃負担の軽減」と「緊急時への構え」の両方が備わっているとも言えるでしょう。
ただ、先着順の物件もあるものの、希望者が多く抽選となる物件もありますので、希望すれば誰でも入れるというわけではありません。また、先着順で利用できるURの賃貸物件としては「高齢者向け特別設備改善住宅」があります。こちらも、高齢者の利用を考えた設備が整えられています。URでは、他にも特徴ある高齢者向け住宅を扱っています。

早めの計画と対処を

老後の生活は預貯金の取り崩しを前提としていることが多いのは事実です。老後を賃貸で暮らし続けるためには、特に備えが必要と言えそうです。また、高齢になっても働き続ける人は多い傾向にありますが、何歳まで働けるという保証はなく、家計に当て込むのにはリスクがともないます。いつ病気やケガで入院するかわかりませんし、高齢になるほどその可能性は高まりますので、よほどの額でない限り、給与所得は一定の余裕を作るためとし、家計とは別に捉えた方が良いでしょう。
また、現段階である程度まとまった預貯金があるようでしたら、要介護認定がなくても利用できる、民間のいわゆる「老人ホーム」もありますので、住宅の確保という面で考えると選択肢のひとつになりえるでしょう。

「老後」は何年続くかわからないものです。子から親への仕送りという形で支援していくのも良いでしょうが、そのような形を良しとしない場合も考えられます。早めに家計の現状を把握し、いざという時の備えをしておくと安心です。

※「令和2年度平均年収と学歴調査

出典

※1 内閣府「令和元年版高齢社会白書」(全体版)2 地域生活に関する状況
https://www8.cao.go.jp/kourei/whitepaper/w-2019/html/zenbun/s1_3_1_2.html

※2 総務省「2018年家計調査報告」
https://www.stat.go.jp/data/kakei/sokuhou/tsuki/pdf/fies_gaikyo2018.pdf