「プラセンタ」の副作用は? サプリの効果や注意点を医師が解説

健康

この記事をシェアしよう

プラセンタとは英語で「Placenta」と書き、「胎盤」を意味します。プラセンタ療法の効果と安全性を学び、適切なエイジングケアを行いましょう。

この記事の監修

紗来(さらい)

都内での初期研修・後期研修ののち、大学・基幹病院での臨床・研究に従事。国内外の論文(エビデンス)をもとにした一般向けのわかりやすい医療記事の執筆が得意。趣味が高じてファイナンシャルプランナー2級・福祉住環境コーディネーター3級を取得。

美容効果をうたった化粧品や栄養ドリンクに「プラセンタ」の文字を見たことはありませんか? プラセンタには美容に良いというイメージがあり興味はあるけれど、「胎盤抽出物」という文字を見ると、ちょっと不安になりますよね。プラセンタは古くから美容や滋養強壮目的に使用されているものの、細かな成分や働きは良くわからないままでした。しかし、最近になって科学的根拠を示す研究が報告されはじめ、注目度が高まっています。

この記事では、謎の多いプラセンタについて、その科学的効果と安全性について解説します。

プラセンタとは

プラセンタとは英語で「Placenta」と書き、「胎盤」を意味します。もともとはラテン語から来ており、人間の胎盤が円盤状で、平らなパンケーキに似ていることに由来しているようです。
胎盤とは、妊娠中に子宮と胎児(赤ちゃん)の間に作られる海綿状の構造物で、胎児への酸素や栄養の供給、老廃物の除去など、さまざまな機能を持っています。

プラセンタ療法の歴史

ヒト以外の多くの動物は、草食動物を含めて出産後に自分の胎盤を食べます。そのため、「胎盤はからだに良いものではないか?」と古くから考えられ、胎盤そのものや、胎盤を乾燥させたものを、滋養強壮目的に摂取することが行われていました。
その後、1900年代に入り胎盤そのものを皮下に埋め込んだり、胎盤内のエキスを抽出したものをからだに注射したりする方法が考案され、栄養剤として用いられるようになった歴史があります。
日本ではヒトプラセンタ製剤として「ラエンネック」「メルスモン」の医薬品が承認され、慢性肝疾患・更年期障害・乳汁分泌不全などに注射薬として用いられてきました。また、健康・美容食品としてサプリメントや化粧品が広く販売されています。(※1)(※2)

プラセンタは何に「効く」とされているのか

医薬品として用いられているラエンネックの効能は「慢性肝疾患における肝機能の改善」、メルスモンの効能は「更年期障害、乳汁分泌不全」です。(※1)
そのほかプラセンタエキスは、「アレルギー疾患、更年期障害や乳汁分泌不全、肝臓疾患、精神科疾患、整形外科疾患、がん治療時の投与によるQOLの向上、疲労回復、肌荒れや乾燥肌などの皮膚疾患に有効である」とされています。(※3)

プラセンタの有効成分

プラセンタは「胎盤からの抽出成分」を用いているものの、科学的な成分は解明されていません。「ラエンネック」「メルスモン」は、ともに加水分解や酵素処理を行ってエキスを抽出しており、そのなかには、たんぱく質、脂質、炭水化物、ビタミン、ミネラルなど、さまざまな成長因子が存在するとされています。
たとえば、「ラエンネック」からは、セリンという物質の一種が肝臓の炎症を改善させる可能性が示されています(※1)。また、「メルスモン」からはリジン、アラニン、アスパラギン酸などの低分子アミノ酸を中心とした多くの成分が検出されています(※2)。しかし、いずれも「この成分が効く」といったものは分かっておらず、それがプラセンタ療法を受ける「怪しさ」であり、プラセンタ療法の「神秘性」ともいえるでしょう。

プラセンタの種類と安全性

「ラエンネック」「メルスモン」はヒト胎盤が原料です。一方で、サプリメントや化粧品に用いられるプラセンタはヒト以外の動物の胎盤が原料です。以前はウシの胎盤が使用されることもありましたが、BSE(いわゆる「狂牛病」)問題を契機に厚生労働省から通知が出され、国内で製造されているプラセンタ製品の多くはブタやウマから製造されています。また、プラセンタの成分は解明されていないため、科学的な合成は困難です(※4)(※5)。

プラセンタ療法の科学的根拠と治療の実際

実際、プラセンタはどのようにして治療に用いられているのでしょう。そして、プラセンタ治療に科学的な根拠はあるのでしょうか。プラセンタ療法に用いられる、以下の3つの投与方法をみていきましょう。

注射

日本産婦人科学会は、「メルスロン」がホルモン補充療法の代わりとなるかどうか評価しましたが、プラセンタはホルモン成分を有さないため、代わりとはならないと結論付けました。しかし、「週3回、2週間の投与で更年期障害に有効性があった」との報告は、プラセンタ療法を支持する根拠とされています(※6)。また、プラセンタ治療を受けた非アルコール性脂肪性肝炎患者に対しても、肝機能障害に対して有用である可能性が示されています(※7)。医師の診断のもと、標準的な治療に効果が見られない際、これらの治療を検討する余地がありそうです。

サプリメントなどの経口投与

プラセンタエキスは、主たる成分がタンパク質やアミノ酸であるとみられていたため、腸から吸収される際に消化されるのではないかと考えられていました。そのため、プラセンタエキスの経口摂取には懐疑的な意見が多かったのも事実です。しかし、サプリメントとしてのプラセンタの服用による更年期症状や肩こりの改善報告が存在するほか、小ジワを改善し、肌質を改善したという報告もあります。(※8)(※9)(※10)

化粧品などによる塗布

いままでプラセンタ配合化粧品の美容効果は、被験者の主観による評価が報告されてきました。しかし近年、肌の測定機器を用いた客観的評価も増えつつあります。
真皮まで到達した紫外線は炎症を起こし、肌のシミやシワの原因になります。その点、プラセンタエキスは、真皮のコラーゲンや肌の潤いを保つヒアルロン酸などの生成に関与し、肌の健康に重要な役割を果たすとされています(※11)(※12)(※13)。また、プラセンタには血流促進作用があり、塗布することで抗酸化作用、血行促進作用など、さまざまな効果が期待されています(※14)。

プラセンタ療法の気を付けたい副作用・注意点

プラセンタ療法による重大な合併症として、内服による薬剤性肺炎が報告されているほか、化粧品ではじんましん、赤み、腫れ、アレルギー反応等が報告されています(※15)。
プラセンタ自体の成分が未解明なことから、どのような成分が影響したことは分かっていません。そのため、プラセンタ療法を行う場合は注意が必要です。
また、感染症リスクをできる限り少なくするため、日本赤十字社では過去にプラセンタの注射薬を使用したことがある人からの献血を断っています(※16)。献血を希望される方は注意しましょう。

まとめ

いままで謎に包まれていたプラセンタに科学的根拠が見つかりつつあります。プラセンタ療法の効果と安全性を学び、適切なエイジングケアを行いましょう。

【参照】

※1 独立行政法人 医薬品医療機器総合機構: ラエンネック

※2 独立行政法人 医薬品医療機器総合機構: メルスモン

※3 長瀬眞彦. プラセンタ療法.Beauty Science No3.2014;4:83-89.

※4 厚生労働省 牛海綿状脳症(BSE)等に関するQ&A:ウシ等を原料とする医薬品、医薬部外品、化粧品及び医療機器の原産国や使用部位に関する基準を定める生物由来原料基準については、見直しは行っているのですか。

※5 独立行政法人 医薬品医療機器総合機構 生物由来原料基準 P9

※6 日本産婦人科学会:ホルモン補充ガイドライン2017<案> P185

※7 Shimokobe H, et al. Human placental extract treatment for non-alcoholic steatohepatitis non-responsive to lifestyle intervention: A pilot study. Hepatol Res. 2015 Sep;45(9):1034-1040

※8 Kitanohara M, et al. Effect of porcine placental extract on the mild menopausal symptoms of climacteric women. Climacteric. 2017 Apr;20(2):144-150

※9 Yoshikawa C, et al. Efficacy of porcine placental extract on wrinkle widths below the eye in climacteric women. Climacteric. 2014 Aug;17(4):370-6

※10 Koike K, Yamamoto Y, Suzuki N, et al.: Efficacy of porcine placental extract on shoulder stiffness in climacteric women. Climacteric. 2013; 16: 447-452

※11 Lupa DMW, et al. Characterization of skin aging︱ associated secreted proteins(SAASP)produced by dermal fibroblasts isolated from intrinsically aged human skin. J Investig Dermatol 2015; 135:

※12 Cho HR,et al. The effects of placental extract on fibroblast proliferation. J Cosmet Sci 2008; 59: 195-202.

※13 Yoshikawa C, et al. Effect of porcine placental extract on collagen production in human skin fibroblasts in vitro. Gynecol Obstet 2013; 3(6)

※14 Shukla VK, et al. A trial to determine the role of placental extract in the treatment of chronic non︱healing wounds. J Wound Care 2004; 13(5): 177-179.

※15 石本裕士.プラセンタによる薬剤性好酸球性肺炎の1例 日本呼吸器学会誌 2015: 4(6)464-467

※16 厚生労働省 ヒト胎盤エキス(プラセンタ)注射剤使用者の献血制限について