【医師が解説】知っているようで知らない「コエンザイムQ10」 効果や副作用を理解して上手に活用しよう

健康

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コエンザイムは訳すと、「補酵素」となります。補酵素は、読んで字のごとく酵素の働きを助ける物質の呼び名です。さまざまな健康効果が期待されていますが、その効果に関してはっきりしたことは分かっていません。バランスの良い食事や運動、十分な睡眠など、さまざまなことを組み合わせて生活に生かしましょう。

この記事の監修

紗来(さらい)

都内での初期研修・後期研修ののち、大学・基幹病院での臨床・研究に従事。国内外の論文(エビデンス)をもとにした一般向けのわかりやすい医療記事の執筆が得意。趣味が高じてファイナンシャルプランナー2級・福祉住環境コーディネーター3級を取得。

テレビで見る健康食品のCMや、ドラッグストアで見るサプリメント。「コエンザイム」「コエンザイムQ10配合」といった言葉を目にしたことがある人も多いでしょう。
健康に良いイメージはあるけれど、そもそもコエンザイムとは何か十分に説明できる人は少ないのではないでしょうか。

この記事では、コエンザイム(補酵素)という物質のことをはじめ、「コエンザイムQ10」のこと、その効果や有効的な摂取方法について解説します。

コエンザイムとは

「コエンザイム」と「コエンザイムQ10」は別の言葉です。正確には、さまざまな種類のコエンザイムの中に、コエンザイムQ10が含まれます。

コエンザイムとは「補酵素」

コエンザイムは訳すと、「補酵素」となります。補酵素は、読んで字のごとく酵素の働きを助ける物質の呼び名です。

酵素とは

さまざまな化学反応を助ける、たんぱく質を中心とした化合物が「酵素」です。酵素は特定の条件や特定の物質に対して働くことが特徴で、たとえば洗濯洗剤は働きの違う酵素を混ぜ合わせることで、それぞれが皮脂・泥といった衣服の汚れを分解し、せっけんによる洗浄力を高めています。
この酵素が働く条件のひとつに特定の物質の存在があります。これこそが、酵素の働きを補う物質「補酵素」です。補酵素にはビタミンB群やナイアシン(ニコチン酸)などがあり、そのひとつの補酵素Qと呼ばれるものが、「コエンザイムQ10」です。

コエンザイムQ10について

コエンザイムQ10は補酵素(コエンザイム)のひとつで、下記の2つの特徴から、「コエンザイムQ10(CoQ10)」と呼ばれています。(※1)

  • 化学構造がQuinone(キノン)型である
  • イソプレノイド側鎖という化学構造が10個ある

現在、CoQ10はフィッシュオイル(オメガ3脂肪酸)、マルチビタミンに次いで世界で3番目に消費されているサプリメントです。以前は「ビタミンQ」と呼ばれていましたが、体内で合成することが難しいビタミンとは異なり、CoQ10はヒトの体内で合成することが可能です。そのため、ビタミンではなく、あくまで補酵素として扱われています。

コエンザイムQ10の特徴

CoQ10は脂溶性で、からだの中のあらゆる臓器に存在することが分かっています。心臓、肝臓、腎臓、膵臓に含まれるCoQ10は多い一方で、脳や肺に含まれる量は多くありません。(※2)

酸化型と還元型コエンザイムQ10

体内で存在するCoQ10の種類は、下記のとおり3つあります。

  • 酸化型CoQ10・・・ユビキノンと呼ばれ、体内のエネルギー合成に関わる
  • 還元型CoQ10・・・ユビキノールと呼ばれ、体内での抗酸化作用に関わっている
  • セミキノンラジカル・・・酸化型CoQ10と還元型CoQ10の中間にあたる

通常、血液中のCoQ10の95%以上は「還元型」の状態で存在し、必要に応じて合成されています。

コエンザイムQ10の加齢・病気による低下

CoQ10はからだで合成することが可能ですが、臓器での濃度は20代をピークに年齢とともに減少することが指摘されています。特に心臓では20代のCoQ10濃度の40%程度まで低下することが報告されています。また、糖尿病の方はそうでない方と比べて30%程度までCoQ10の量が低下するともわかっています。(※2)
このような加齢・健康の研究が、CoQ10の補充が支持される理由です。

コエンザイムQ10の働き

体内でのCoQ10の働きは、大きく分けて二つあります。(※3)

1.ミトコンドリアでのエネルギー産生を高める

私たちの細胞は、炭水化物や脂肪をアデノシン三リン酸(ATP)に変化することで、エネルギー源としています。このエネルギー合成の効率を高めるのがCoQ10です。絶え間なく動く心臓にCoQ10がもっとも多く含まれていることからも、CoQ10はエネルギー産生に重要といえるでしょう。

2.ビタミンEと共同して抗酸化作用を示す

もうひとつの役割は、抗酸化物質としての働きです。細胞が酸化ストレスにさらされると、抗酸化物質のひとつであるビタミンEは、活性酸素を除去するかわりに自身が酸化してしまいます。この際に還元型CoQ10が、酸化したビタミンEから活性酸素を除去し、自らが酸化型CoQ10となることで細胞を酸化ストレスから守ります。酸化されたCoQ10は血液を流れ、肝臓で還元型に戻り、再び体内で活躍します。細胞によっては、還元型コエンザイムQ10自体が抗酸化物質としてはたらくことも特徴です。

コエンザイムQ10補充による健康効果

CoQ10の補充による健康増進効果、病気の予防効果はあるのでしょうか? これまでに発表された研究では、次のような事柄に対し効果が報告されています。(※4)(※5)(※6)

  • 心臓・血管への効果
  • 糖尿病
  • 片頭痛
  • アンチエイジング
  • がん
  • 運動パフォーマンスの向上
  • 男性不妊

このように、CoQ10の補充は健康に有益な可能性があります。しかし、報告された研究はいずれも小規模なもので、臨床的な証拠が限られていることから、EFSA(欧州食品安全機関)をはじめとした機関では医薬品としてのCoQ10を承認していません。

コエンザイムQ10の補充

では、CoQ10はどのくらいの量を、どのように摂取すればよいのでしょうか。
日本で医薬品として処方されていたCoQ10は、当初1日30mgの用量で承認されていましたが、サプリメントとしては、日本健康・栄養食品協会がデータに基づき、「1日300mgまで安全である」と報告しています。(※7)
報告された研究の多くが、1日100㎎~300㎎程度のCoQ10を摂取して実験を行っていることからも、妥当と言えるでしょう。

食事からも摂取できる

食事性CoQ10の豊富な摂取源は主に、肉、鳥肉、および魚です。特にイワシなどの青魚には多く、バターやチーズなどの 乳製品や豆類、ブロッコリーなどにも含まれています。(※3)
CoQ10は脂に溶けるため、油で炒めた場合は一定量が失われます。一方、茹でた場合にはほとんど失われることはありません。
食事から摂取可能なCoQ10は1日10㎎が限界と言われており、それ以上の摂取を考える場合はサプリメントが一般的です。(※6)

サプリメントが一般的

原料としてのCoQ10は単なる粉末ですが、腸からの吸収が増えるように乳化剤を添加していたり、合成が不要な還元型のまま吸収されることを売りにしていたりと、さまざまな商品が存在します。価格や飲みやすさなどを考慮しながら、ご自身の生活スタイルに合った商品を選ぶとよいでしょう。

注意も必要

基本的には過量摂取による健康被害は報告されていませんが、吐き気や腹痛などの症状が出る人がいます。また、CoQ10による薬剤性肺炎も報告されており、注意が必要です。(※8)
なお、妊婦や授乳婦への安全性を調べた研究はないため、CoQ10のサプリメントの摂取は避けたほうがよいでしょう。(※6)

まとめ

さまざまな健康効果が期待されるCoQ10ですが、その効果に関してはっきりしたことは分かっていません。サプリメントにすべてを頼るのではなく、バランスの良い食事や運動、十分な睡眠など、さまざまなことを組み合わせて生活に生かしましょう。

【参照】

※1 Raizner AE. Coenzyme Q10. Methodist Debakey Cardiovasc J. 2019 Jul-Sep;15(3):185-191.

※2 Kalén A, Appelkvist EL, Dallner G. Age-related changes in the lipid compositions of rat and human tissues. Lipids. 1989 Jul;24(7):579-84.

※3 菅野直之. コエンザイム Q10 . 日歯周誌 2017. 59(2):63-67

※4 厚生労働省eJIM | コエンザイムQ10 | サプリメント・ビタミン・ミネラル | 医療関係者の方へ | 「統合医療」情報発信サイト

※5 Arenas-Jal M. Coenzyme Q10 supplementation: Efficacy, safety, and formulation challenges. Compr Rev Food Sci Food Saf. 2020 Mar;19(2):574-594.

※6 Oregon State University Linus Pauling Institute Micronutrient Information Center:Coenzyme Q10

※7 コエンザイムQ10を含む食品の取扱いについて(◆平成18年08月23日食安新発第823001号)

※8 西野正人,宇佐神雅樹,杉村 悟,吉崎振起:コエン ザイム Q10 の関与が疑われた薬剤性肺炎の 1 例.日呼吸会誌 2006.44: 766-770