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【医師が解説】気になる男性更年期障害の症状 治療法と対策は?

健康

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男性更年期と密接なかかわりのあるホルモンを「テストステロン」といいます。テストステロンが減少すると、からだにさまざまな変化をもたらすことになります。男性更年期を理解し、超高齢化社会に向けて中高年男性の生活の質を向上させましょう。

この記事の監修

紗来(さらい)

都内での初期研修・後期研修ののち、大学・基幹病院での臨床・研究に従事。国内外の論文(エビデンス)をもとにした一般向けのわかりやすい医療記事の執筆が得意。趣味が高じてファイナンシャルプランナー2級・福祉住環境コーディネーター3級を取得。

年齢とともに疲れやすくなっている中高年男性の方、それは年齢のせいだと思ってはいませんか? 「なかなか疲れが取れない」「気分があがらない」といった症状は、男性更年期にともなうものかもしれません。

女性は加齢にともなう女性ホルモン(エストロゲン)の低下によって、更年期障害が起こることはよく知られています。一方、男性にも加齢にともなう男性ホルモン(アンドロゲン)の低下により、更年期障害が起こります。しかし、その存在はあまり知られていません。

日本は超高齢化社会に突入しており、高齢者の健康で自立した生活の実現が強く求められています。高齢社会を前に、中高年男性の生活の質を向上させましょう。

テストステロンの働きと加齢にともなうテストステロンの変化

男性ホルモンはアンドロゲンとも呼ばれています。これは、複数のホルモンの総称です。そのうち、男性更年期と密接なかかわりのあるホルモンを「テストステロン」といいます。テストステロンは主に精巣で作られ、全身のさまざまな臓器に作用します。(※1)

臓器

作用

性欲

攻撃性の維持

筋肉

筋力の維持

腎臓

造血ホルモン(エリスロポエチン)の分泌

骨髄

造血細胞の刺激

皮膚

毛髪の育成

皮脂の産生

脂肪

脂肪の燃焼

生殖器

精子形成

性機能の向上

そのため、テストステロンが減少すると、からだにさまざまな変化をもたらすことになります。

このテストステロンは一般に20代でピークを迎えたのち、年々少しずつ低下。50歳以降では年1%の割合で低下していくと言われています。(※2)
その理由として、加齢とともに精巣のテストステロンを作る細胞(Leydig細胞)が減少したり、機能が低下したりすることが挙げられていますが、はっきりとしたことは分かっていません。また個人差も大きく、年を取ればテストステロンが必ず減るというわけでもありません。
男性更年期障害の診断治療にあたっては血液中のテストステロン濃度の測定が必須になります。

男性更年期診断の難しさ

男性更年期の症状はさまざまです。また、内科や心療科など多くの診療科が関わる領域であり、そのことが診断・治療を難しくしている一因です。

男性更年期には抑うつ症状を主訴とする精神症状も多い

ライフサイクルにおける中年期は、多くの男性にとっては体力的・精神的な負担が多い時期と言えます。40~50代は働きざかりと言える年齢で、仕事上の責任も大きいことでしょう。また、家庭内には家のローンや子どもの学校生活、受験などさまざまな事柄への対処が求められ、親に対しては介護の問題も出てくるかもしれません。パートナーとの関係を含め、心身の負担は大きいはずです。
よって、ご自身の症状がテストステロンの低下にともなうものか、精神的なものか、もしくはその両方なのか、判断することは難しいでしょう。

男性更年期は医療者にも知られていない

自分の症状は、どの科の受診が適当なのか分からない場合、まずは近くの医師に相談するのではないでしょうか。しかし、男性更年期の可能性を考えて診断に臨む医師は多いとは言えません。多くの訴えが年のせいとされ、場合によっては心療科を紹介され、漫然と内服薬が投与されるケースもみられます。

男性更年期の診断

男性更年期には、加齢やストレス、生活習慣病の増加、男性ホルモンの低下など多くの原因が関与しています。そのため、専門の医師にかかり、適切な診察を受けることが必要です。

日本Men'sHealth医学会ではメンズヘルス医療を受けられる病院をウェブサイトで紹介しています。受診の参考にするとよいでしょう。

日本Men'sHealth医学会

男性更年期の診断・治療の流れ

診断にあたっては、下記のステップを踏むことになります。

  • うつ病を含めた診断を行う
  • 症状の原因となるような内科的な病気がないか調査する
  • 症状にテストステロン不足によるものが疑われる場合は、LOH(Late-Onset Hypogonadism)症候群を疑い、テストステロンの測定・補充を検討する

男性更年期の診療の第一歩は、ていねいな問診とカウンセリングです。
患者さんのなかにはすでに心療科を受診し、向精神薬を服用している方もいますが、向精神薬の一部には男性ホルモンを低下させる作用のある薬もあるので注意が必要です。
また、男性更年期の症状は、すべてがテストステロンの低下によるわけではありません。他の病気によって症状が見られている場合もあるので、内臓の病気や、がんなどの悪性疾患を含めて検査を行うと同時に、必要に応じて他の診療科と連係することが重要です。

LOH症候群とは

LOH症候群とは、Late-Onset Hypogonadism(加齢性男性性腺機能低下症候群)の略語で、「加齢にともなう血中男性ホルモン(テストステロン)の低下に基づく生化学的な症候群」と定義されています。(※1)

LOH症候群の診断

LOH症候群は血液中のテストステロンの測定と、質問票によって診断されます。日本ではテストステロンのなかで、男性ホルモンとしての働きをもつ遊離型テストステロンを測定します。また、17個の質問からなる「Aging males'symptoms(AMS)スコア」を用いて心身の状況を評価します。遊離テストステロン値が低く、質問票からもLOH症候群が疑われる場合は、治療の対象となります。

LOH症候群に対するテストステロン補充

日本国内では、2~4週ごとのテストステロン(エナルモンデポー)の筋肉注射による補充と、テストステロンが含まれた軟膏(グローミン)の塗布による陰嚢皮膚などからの補充が推奨されています。(※5)グローミン軟膏は薬局での購入も可能ですが、医師に相談のうえ使用することをおすすめします。
なお、治療中は定期的な血液中のテストステロン値の測定が必要です。

テストステロンを増やすには?

補充以外のテストステロンを増やす方法として、テストステロン分泌と関わっていると言われている栄養素の取得が検討できます。下記栄養素にはテストステロンが含有されています。

  • 亜鉛
  • ビタミンD
  • マグネシウム
  • ポリフェノール

また、運動・睡眠・ストレスといった生活習慣とテストステロン分泌との関連も指摘されていることから、生活習慣の改善も効果がありそうです。

男性更年期に対するその他の治療

男性更年期はテストステロン不足だけでなく、さまざまな原因が関わっています。
そのため、テストステロンの値に異常がない場合や、テストステロン補充による副作用が心配される場合は、以下の治療が選択肢になります。

  • 漢方
  • 生活習慣の改善・カウンセリング
  • 抗うつ薬
  • EDに対するPDE-5阻害薬(バイアグラ等)

治療の選択には専門性が必要です。専門医に相談のうえ、適切なアドバイスを受けましょう。

まとめ

男性更年期にともなう諸症状は、だれにでもかならず起こり得ます。また、その原因は、加齢やストレス、生活習慣病の増加、男性ホルモンの低下など、さまざまな原因が関与していると考えられます。

男性更年期を理解し、超高齢化社会に向けて中高年男性の生活の質(Quality of Life:QOL)を向上させましょう。

【参照】

※1 日本泌尿器科学会/日本Men's Health医学会「LOH 症候群診療ガイドライン」検討ワーキング委員会, 加齢男性性腺機能低下症候群(LOH症候群)診療の手引き, 2007

※2 岩本晃明, 日本人成人男子の総テストステロン,遊離テストステロンの基準値の設定, 日泌会誌 2004;95:751-760

※3 岩本晃明, 加齢男性性腺機能低下症候群(LOH症候群)をどのように理解し対処すべきか テストステロンの役割, 総合健診 2012; 39-6: 771-777