コレステロールを下げるには? 生活習慣病予防の新常識を薬剤師が解説

健康

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生活習慣病のひとつである「脂質異常症」とは、血液中のコレステロールや中性脂肪(トリグリセライド)の濃度が基準値から外れた状態をいいます。脂質異常症は防ぐことができる病気です。将来のために日常生活を見直し、脂質異常症を予防しましょう。

この記事の監修

中西 真理

医薬品卸にて一般の方や医療従事者向けの情報作成に従事。その後、調剤薬局に勤務。現在は、フリーライターとして主に病気や薬に関する記事を執筆。

健康診断などでコレステロール値の異常を指摘されたものの、気になる自覚症状がないからと、そのまま放置している人はいませんか?

生活習慣病のひとつである「脂質異常症」とは、血液中のコレステロールや中性脂肪(トリグリセライド)の濃度が基準値から外れた状態をいいます。

平成29年の調査(※1)によると、全国の脂質異常症の患者数は220万5千人、そのうち約7割を女性が占めています。
また、令和元年の「国民健康・栄養調査報告」(※2)をみると、脂質異常症の疑いがあるものの未治療の人は24%と、その割合は決して少なくありません。

脂質異常症は、痛くもかゆくもない病気です。しかし、動脈硬化を促進する危険因子であり、放置するのは大変危険です。

今回は、脂質異常症の診断基準と治療目標、そして脂質異常症を防ぐために日常生活で留意したいことを解説します。

脂質異常症の診断基準

2006年まで脂質異常症は、「高脂血症」と呼ばれ、総コレステロール値も診断基準のひとつとされていました。しかし、「善玉コレステロールの少ない低HDLコレステロール血症を高脂血症と呼ぶのは適当ではない」「善玉コレステロールの多い高HDLコレステロール血症も高脂血症と診断されてしまうおそれがある」などの理由から、2007年に名称と診断基準が変更されました。

厚生労働省が運営する「e-ヘルスネット」によると、現在の診断基準は、以下のとおりです。

▼脂質異常症の診断基準(10時間以上の絶食後採血)

LDL(悪玉)コレステロール

140mg/dL以上

LDLコレステロール血症

120139mg/dL

境界域高LDLコレステロール血症

HDL(善玉)コレステロール

40 mg/dL未満

HDLコレステロール血症

中性脂肪(トリグリセライド)

150 mg/dL以上

高トリグリセライド血症

Non-HDLコレステロール

(総コレステロール値からHDLコレステロール値を引いたもの)

170mg/dL以上

non-HDLコレステロール血症

150169mg/dL

境界域高non-HDLコレステロール血症

山岸良匡. 脂質異常症. e-ヘルスネット.  厚生労働省. (2019) を参考に筆者作成

脂質異常症の治療目標

もっとも、LDL(悪玉)コレステロール値が高い場合であっても、すぐに薬物治療が開始されるわけではありません。心疾患の既往歴や生活背景なども考慮して将来のリスクに応じた目標値を設定し、生活習慣の改善策の提案など治療内容の決定を行います。

一般社団法人 日本動脈硬化学会パンフレット「動脈硬化は怖い病気のはじまり」の情報を基に作図

脂質異常症にならないための生活習慣

脂質異常症と診断されて生活習慣の改善を試みても、多くの人はコレステロール値が思うように下がらず、最終的には薬物療法を開始せざるを得ないのが現実です。そのような事態を防ぐためには、脂質異常症と診断される前から生活習慣を改善することが本来望ましい姿です。

ここからは、脂質異常症と診断される前から取り組みたい生活習慣の見直しや食事の注意点、おすすめの運動内容について解説します。

生活習慣の見直し

喫煙すると、悪玉コレステロールと中性脂肪が増え、善玉コレステロールが低下することが知られています。喫煙習慣のある人は喫煙本数を減らしましょう。可能なら禁煙を目指してください。喫煙習慣のない人も受動喫煙には注意しなければなりません。
適正体重を維持することも大切です。肥満気味の人は、中性脂肪が高値になりがちになる一方で、善玉コレステロールが少なる傾向があります。

健康的な食生活

食生活は、コレステロール値に大きな影響を与えます。まず、カロリーオーバーはできるだけ避けるようにしましょう。特に甘いもの、揚げ物、炭水化物のとり過ぎには要注意です。食べ過ぎてしまった場合は、運動をするなどしてエネルギーを消費するようにしてください。
また、脂質の量だけではなく種類にも注意が必要です。動物性の油脂(肉類の油・乳製品に含まれる脂肪分など)は、悪玉コレステロールと中性脂肪を増やしやすいとして知られています。一方、魚油や植物性の油脂は、悪玉コレステロールや中性脂肪を減らして善玉コレステロールを増やすのに役立ちます。油脂の種類にもこだわって、コレステロール値をコントロールするようにしましょう。

アルコールの過剰摂取もおすすめできません。アルコールを摂取すると、中性脂肪の量が増えます。また、つまみなどを食べることでカロリーオーバーや脂肪の過剰摂取にもつながるため、適量を守るようにしましょう。

他方、積極的にとりたいのが食物繊維です。食物繊維には、コレステロールを体外に排出する働きがあります。野菜や海藻類、きのこ類からはビタミンやミネラルも摂取できます。栄養バランスを整えるためにも、食物繊維を野菜などから積極的に摂取するようにしましょう。

運動習慣を身に付ける

運動は、ウォーキングや水泳など有酸素運動がおすすめです。1日30分の運動を週に3回程度行うのが理想ですが、1日の運動を小分けにして行っても構いません(例:1回10分×3回など)。
忙しくて十分な時間がとれない場合は、日常生活のなかに運動を取り入れる工夫をしましょう。エレベーターではなく階段を使う、通勤時に一駅手前で降りて歩く、休憩時に少し遠くのコンビニエンスストアまで買い物に行くといったことでも、運動量を増やすことができます。

▼脂質異常症を防ぐ生活習慣

悪玉コレステロールを減らしたい場合

・飽和脂肪酸(おもに動物性脂肪)の量を減らす

・鶏卵の摂取量を減らす など

中性脂肪を減らしたい場合

・エネルギーオーバーを避ける

・甘いもの・揚げ物・炭水化物を食べ過ぎない

・ソフトドリンクの飲用量を減らす

・適量の不飽和脂肪酸(魚油・植物油など)を摂取する

・運動

・適正体重の維持 など

善玉コレステロールを増やしたい場合

・禁煙

・運動

・適正体重の維持 など

山岸良匡. 脂質異常症. e-ヘルスネット.  厚生労働省. (2019) を参考に筆者作成

終わりに

「コレステロール=悪いもの」ととらえがちですが、コレステロールは細胞膜を構成したりホルモンの材料になったりと、からだに欠かせない成分です。また、中性脂肪はからだを動かす際のエネルギー源であり、体温の維持に必要なものです。
このように、コレステロールも中性脂肪もヒトの体内で重要な役割を担っていますが、血液中の濃度が高くなり過ぎると動脈硬化を促進することになります。しかし、脂質異常症は防ぐことができる病気です。将来のために日常生活を見直し、脂質異常症を予防しましょう。