30〜40代で気にしなければならない健康と予防対策

「産後うつ」になりやすいのはどんな人? 知っておきたい症状と相談先

健康

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産後うつの発症には、妊娠・出産にともなうホルモン変化が関与しているといわれています。産後うつは治療が必要な病気です。だれにでも起こりうるものであり、けっして赤ちゃんや本人のせいではありません。体力と気力の回復を図り、がんばりすぎない育児で産後うつを予防しましょう。

この記事の監修

中西 真理

医薬品卸にて一般の方や医療従事者向けの情報作成に従事。その後、調剤薬局に勤務。現在は、フリーライターとして主に病気や薬に関する記事を執筆。

女性にとって、出産は大きな環境変化をともなうものです。また、妊娠中や出産後は女性の生涯のなかでうつの症状が特にあらわれやすい時期でもあります。

日本産婦人科医会のウェブサイト(※1)によると、「産後うつ」を発症する割合は、10~15%。これは決して低い数値ではありません。産後うつになると物事を前向きに考えられなくなり、自ら命を絶ってしまう人もいます。

日本産婦人科医会ウェブサイト「産婦人科ゼミナール|関沢教授の周産期講座 11.妊産婦メンタルヘルスケアの重要性について」の情報を基に作図

また、生まれてきた赤ちゃんに関心を持てず、育児がおろそかになってしまっては、子どもの成長や発達に悪影響を及ぼしかねません。産後うつを防ぐにはどうすればよいのでしょうか。

この記事では、産後うつのリスク因子から発症を抑える方法を探るとともに、産後うつが疑われる症状や治療について解説します。
現在は、出産後の負担軽減に役立つ自治体や民間企業のサポートも多く存在します。この記事を参考に、ご本人とご家族が赤ちゃんとともに笑顔で過ごせる暮らしを送りましょう。

産後うつは妊娠中からのケアが必要

産後うつの発症には、妊娠・出産にともなうホルモン変化が関与しているといわれています。その点では、産後うつは特別なことではなく誰にでも起こりうるものといえるでしょう。しかし、以下のような背景があると、より発症しやすくなるといわれています。

  • 過去にうつなど精神的な病気にかかったことがある
  • 妊娠中に強い不安を感じていた/うつの症状があった
  • 家族との関係がうまくいっていない
  • 周囲のサポートが不十分(と感じている)

注目すべきは2つめの項目「妊娠中に強い不安を感じていた/うつの症状があった」です。産後うつは、うつの症状が産後いきなり現れるわけではなく、妊娠中から強い不安やうつ症状を訴えている場合も少なくありません。このようなことから、産後うつを防ぐためには妊娠中からの継続的なケアが必要と考えられます。

▼妊娠・出産時のうつ病で生じる悪循環

妊娠・出産に伴ううつ病の症状と治療 | e-ヘルスネット(厚生労働省)より転載

産後うつの発症リスクを抑えるためには、妊娠中から周囲に産後うつのリスクを伝え、SOSを発信しやすい環境を整えておくのがよいとされています。
里帰り出産を計画している方は、実家で十分に休養することが大切です。里帰りが難しい場合は、実母に自宅に来てもらいサポートを頼むのもよいでしょう。

いずれにせよ、産後うつの予防には周囲のサポートが欠かせません。夫など身近な人ときちんと話をして、妊娠中から産後うつについて理解を深めておくことが大切です。

産後うつの症状と治療

産後うつは、出産後2週間~数カ月のあいだに発症することが多い病気です。出産直後~2週間程度のあいだに現れるマタニティブルーは一過性で、出産後10日もすれば次第に症状は気にならなくなりますが、産後うつはメンタルの不調が2週間以上続きます。

日本周産期メンタルヘルス学会のウェブサイトには、産後うつに関する自己チェック項目が掲載されています。多くのチェックがつくような場合には、早めに医療機関を受診しましょう。

▼産後うつの症状(自己チェック項目) ※外部ウェブサイトに移動します

https://pmh.jp/information/leaflet_mother.pdf

もっとも、産後うつは本人の自覚がない場合もあります。そのため、周囲がこころや体調の変化に気付いてあげることも大切です。様子がいつもと違うと感じたら、産婦人科の受診や地域の保健センターへの相談をうながしましょう。

なお、産後うつの治療は症状により異なります。軽症の場合は薬を使わず、カウンセリングや心理療法などで症状の改善を目指します。周囲の理解とサポートを得るために、家族と一緒に治療を受けることをすすめられる場合もあります。
症状が重い場合は、薬物療法が考慮されます。薬は授乳に影響を与えにくいものから選択されますが、使用する薬剤や赤ちゃんの状態(月齢など)によっては断乳が求められるかもしれません。抵抗を感じるかもしれませんが、産後うつは治療が遅れると症状が長引くおそれがあります。医師としっかり相談し、納得のうえで治療を受けるようにしましょう。

出産後の負担を軽くする、頼もしいサポーター

「実家が遠方でなかなか頼れない」「夫が単身赴任中でワンオペ育児をしいられている」など、家族による十分なサポートが期待できない場合は、自治体や民間団体のサービスを積極的に利用しましょう。

自治体によるサポート

各自治体では子育てに関するさまざまなサポート事業を運営しています。お住まいの自治体のウェブサイトに情報が掲載されているので、目を通しておくと安心です。細かな利用条件が設定されている場合もあるため、事前にチェックしておきましょう。

子育て支援センター

育児相談や健康相談、発達相談など子育てに関するさまざまな支援が受けられます。ベビーシッターの情報や母親向けのサークルに関する情報も入手できます。

保健センター

保健師が中心となってさまざまな活動を行っている施設です。訪問・面接・電話などで育児相談やこころの悩みに対応しているところもあります。

ファミリーサポート

地域の人が協力会員となり、育児のサポートをしてくれる行政サービスです。1時間数百円程度の利用料で、赤ちゃんの一時預かりや子どもの送迎などを引き受けてもらえます。自治体が窓口となっているケースが多いです。

民間団体が運営する産後サポートサービス

民間サービスを利用する場合であっても、条件によっては自治体の補助が受けられることがあります。

産後ケアハウス

宿泊や日帰りで育児サポートが受けられるサービスです。助産師をはじめとするスタッフから、母親自身の心身のサポートや育児に関するアドバイスを受けることができます。

ベビーシッター

赤ちゃんを一時的に預かってくれる民間サービスです。

家事代行サービス

料理・洗濯・掃除・買い物など、家事を代行してくれるサービスです。産前産後の家庭に特化したサービスもあります。

終わりに

産後うつは治療が必要な病気です。だれにでも起こりうるものであり、けっして赤ちゃんや本人のせいではありません。

発症リスクを抑えるためには、家族だけではなく外部のサポートも積極的に利用して適度に「手を抜く」ことが大切です。体力と気力の回復を図り、がんばりすぎない育児で産後うつを予防しましょう。