【医師が解説】食品や化学物質で起きる「アナフィラキシーショック」対処法は?

健康

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アナフィラキシーとは、アレルギー原因物質(アレルゲン)が身体に入ってからすぐに各種のアレルギー症状が現れる過敏反応です。もしもアナフィラキシー体質と診断が出た場合、可能ならアドレナリン自己注射薬(エピペン)を処方してもらいましょう。

この記事の監修

耳鼻科医もぱん

2012年、国公立大学医学部医学科を卒業。大学病院勤務を経て、現在は総合病院に勤務する耳鼻科医。専門分野は、難聴や耳科手術。日本耳鼻咽喉科学会専門医、補聴器相談医、補聴器適合判定医師の資格と、大学病院で補聴器外来を担当した経験を持つ。

アナフィラキシーという言葉をご存じでしょうか。
「食べ物のアレルギーやハチ刺されで、アナフィラキシーを起こすと大変なことになるらしい」ということ自体を知っている人は多いと思います。また、「新型コロナウイルスワクチンでアナフィラキシーになった人がいる」と、ニュースで聞いたことのある人もいるでしょう。
しかし、実際にどのような症状が出るのか、家族や知人が目の前でアナフィラキシーを発症した時にどのように対処すれば良いのかを知っている人は少ないのではないでしょうか。

本記事では、アナフィラキシーの症状や原因、対処法について解説します。

アナフィラキシーとは?

アナフィラキシーとは、アレルギー原因物質(アレルゲン)が身体に入ってからすぐに各種のアレルギー症状が現れる過敏反応です。じんましんなどの皮膚症状、腹痛や嘔吐などの消化器症状、息苦しさなどの呼吸器症状が同時出現します。

また、「アナフィラキシーショック」とは、アナフィラキシーに加え、血圧低下や意識障害などの重篤な症状をともなう状態を指します。よって、アナフィラキシーはすぐに対処しなければ生命を脅かす状態となり、最悪の場合、死に至ることもあります。

2014年以降の統計を見ると、日本では年間50~70人程度がアナフィラキシーショックで亡くなっています。

厚生労働省「令和元年(2019)人口動態統計(確定数)の概況|人口動態統計 死亡数,死因(死因基本分類)・性別」の情報を基に作表

アナフィラキシーになりやすい人とは

アナフィラキシーを重篤化・増幅させる因子はさまざまです。まず、「年齢関連因子」といわれる人の成長過程においても、思春期から青年期においては飲んだり食べたりするものにバラエティが出てくるほか、飲酒をする人も出てくるなど、乳幼児期と比べてリスクをともなう行動が増加します。また、女性においては妊娠・出産時の薬の投与が起因することもあります。そして、加齢にともない薬を服用することが多くなることもまた、アナフィラキシーを起こす確率が増すことにつながっていきます。また、ぜんそくなどの呼吸器疾患や心血管疾患を持つ人、アレルギー性鼻炎、アレルギー性の湿疹を持つ人は、そうでない人と比べてアナフィラキシーを起こす確率は高いと言えるでしょう。

このほか、医薬品によるアレルギー反応の既往、食物アレルギー(特に卵・牛乳)、アトピー性皮膚炎、風邪などの急性感染症も、アナフィラキシーを引き起こす原因として挙げられていることが報告されています。(※1)

なお、食後に激しい運動をした場合、「食物依存性運動誘発アナフィラキシー」を引き起こすことがあります。症状としては、じんましんにはじまり、呼吸困難が生じてショック状態に至る場合があります。

アナフィラキシーが起こるしくみ

アナフィラキシーの原因はさまざまですが、もっとも多くみられる原因は、「食物」「ハチ毒」「医薬品」です。
一般的にアナフィラキシーは、有害なウイルスや細菌から身を守る免疫システムのエラーによって起きます。通常、ウイルスや細菌などの異物が体内に入ってくると、からだは「抗体」という武器を作って応戦します。たとえばハチ毒アレルギーでは「IgE抗体」がつくられ、からだは次に同じ毒が入ってくるときに備えます。しかし、再びハチ毒が入ってきたときに抗体が過剰反応してしまい、からだにさまざまな反応を引き起こしてしまうことがあるのです。なかでも複数の臓器や全身に症状が現れ、命の危険をともなうものをアナフィラキシーと呼びます。

また、無害なはずの食品成分に対してIgE抗体を作ってしまう体質の人もいます。食品アレルギーを持つ人がアナフィラキシーを重篤化させることがあるのはこのためです。ただし、アルコールや薬物などを誘因とするものの、IgE抗体が関与しない、あるいは誘因のわからないアナフィラキシーも存在しています。

アナフィラキシーの症状は、数分から数時間以内に現れます。多くが30分以内です。初期症状が現れてから10分~30時間後に遅発的に再び症状が現れることもあります。たとえば、食物が原因の場合は、以下の2タイプがあります。(※2)

  • 口腔粘膜でアレルゲン(原因物質)が吸収され、5分以内に口やのどがイガイガするなどの粘膜症状、その後他の症状が現れるタイプ
  • 小腸からアレルゲンが吸収され、30分~2時間経ってから症状が現れるタイプ

医薬品の場合、注射薬(特に血管内投与)は内服薬に比べて症状出現が早いため、注意が必要です。(※1)

新型コロナウイルスワクチンとアナフィラキシーショック

新型コロナウイルス(COVID-19)ワクチンの接種が全国で始まって久しいですが、アナフィラキシーショックが起きたニュースを耳にする機会も出てきました。
厚生労働省の資料によると、たとえばファイザー社製ワクチンのアナフィラキシー報告状況は下記のようになっています。

厚生労働省「国内でのアナフィラキシーの発生状況について|P7. アナフィラキシーの報告状況について(ファイザー社製COVID-19ワクチン)」を基に作図

国によって頻度にばらつきがあることが見受けられますが、厚生労働省は下記のように分析しています。

日本の報告数は、医療機関からの報告数そのものであることから(中略)アナフィラキシーに該当しない可能性がある。
海外においては、接種開始当初は報告の頻度が高かったことや、丁寧に報告を求めた研究報告においては、発生頻度が高かったとの報告もある。
海外においては、接種対象者の背景が我が国と異なる可能性(日本は医療従事者に加えて高齢者にも接種)がある。

引用:厚生労働省「国内でのアナフィラキシーの発生状況について|P10.国内でのアナフィラキシーの発生状況について」

また、同じ資料内で厚生労働省は、「2021年3月11日までに報告されたアナフィラキシーは即時に処置が行われ、全て軽快または回復した」としています(※3)。

家族がアナフィラキシーショックを起こしたら

食後や薬剤の投与後、またはハチに刺されたあとに次のような症状が現れた場合は、アナフィラキシーを疑い、早急の対応を取りましょう。

厚生労働省資料「第2回アレルギー疾患対策推進協議会 2016年2月12日(金)食物アレルギー|P9.食物アレルギーの症状(4)」、東京都保健福祉局「食物アレルギー緊急時対応マニュアル(平成30年3月版)|P3. アナフィラキシー出現時に取るべき体位」を基に作図

なお、エピペンを所持している場合は、ただちに使用します。「エピペン」とは、アナフィラキシーが現れたときに使用する補助治療剤(アドレナリン自己注射薬)です。医師の治療を受けるまでのあいだ、症状の進行を一時的に緩和します。アナフィラキシーを起こすリスクが高い人に処方されている場合があります。また、緊急性が高い場合は救急車を要請します。呼吸や脈が止まっているときは心肺蘇生(胸骨圧迫と人工呼吸)を行います。

食物アレルギーの場合は、食べた物を口から出し、口をしっかりとすすぎます。ハチ毒の場合は、近くにハチがいるならその場から離れます。毒針が皮ふに残っているなら除去しましょう。

日頃からの注意で可能な限り予防を

アナフィラキシーの予防には、原因となるアレルゲンを特定し、回避することが重要です。
どのアレルゲンが原因になるのかは人によって違います。確定するには、血液検査や皮ふテストなどの検査が必要です。
もしもアナフィラキシー体質と診断が出た場合、可能ならアドレナリン自己注射薬(エピペン)を処方してもらいましょう。第三者に情報を明示するために、原因物質や医薬品を記載した名刺サイズのカードを持ち歩くこともよいでしょう。
なお、ハチ毒などではアレルゲン免疫療法による治療が可能な場合があります。いずれの場合もアレルギー専門医へ受診してください。

また、喘息の方は、激しい運動で発作を起こすことがあるため、注意が必要です。
アトピー性皮膚炎の方は、皮膚を強くこすらないように気をつけ、長時間日光を浴びないようにします。
食物依存性運動誘発アナフィラキシーになったことがある方は、原因となる食べ物を避けることに加えて、食後3時間以内の運動を控えた方がよいでしょう。(※4)

体調が思わしくないときはアナフィラキシーが起きやすくなります。普段から体調管理に気をつけておくことが肝心です。