アテロームは、皮ふの下に袋状のものができて、そのなかに角質(いわゆる「あか」)や皮脂がたまったものです。皮ふに気になるできものがある場合は、早期治療のためにも皮ふ科などを受診し、適切な診断と治療を受けるようにしましょう。
この記事の監修

顔やからだにできたおできやしこり。全然治らず、むしろどんどん大きくなっている場合は、「アテローム(粉瘤)」という皮ふの病気かもしれません。
多くの場合、アテロームは良性で痛みもかゆみもともないません。しかし、放置すると炎症を起こしたり、巨大化したりすることもあります。また、ごくまれにがん化することもあります。そのため、気が付いたら早めに切除を検討したほうがよいでしょう。
なお、よく間違えがちなニキビなどの吹き出物とアテロームの見分け方、治療方法は下記のとおりです。
▼粉瘤とニキビ(吹き出物)の違い
|
粉瘤 |
ニキビ(吹き出物) |
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大きさ |
数mm~10cmを超えるものまでさまざま |
数mm程度 |
開口部の有無 |
真ん中に開口部(黒い点)がある |
開口部はない |
ニオイ |
ニオイを放つことがある |
ニオイはない |
できる場所 |
全身 |
皮脂の分泌量の多いところ |
治療方法 |
切除 |
飲み薬・塗り薬で対応できる |
この記事では、アテロームができる原因と特徴、治療方法について解説します。
アテロームの原因と特徴
アテロームは、皮ふの下に袋状のものができて、そのなかに角質(いわゆる「あか」)や皮脂がたまったものです。袋ができる原因は明らかになっていませんが、外傷・打撲を負ったあとや、ニキビ跡などにできることがあります。また、イボのウイルスが関与しているものもあります。
アテロームは部位を問わず全身にできます。特にできやすいのは顔や首、背中、耳の後ろなどです。足の裏にできるアテロームは、常に体重がかかっているため皮ふの外に盛り上がってくることはなく、タコや魚の目と間違うこともあります。
なお、アテロームにはいくつかの種類があります。
表皮嚢腫
多くはこのタイプです。毛穴の上部の皮ふがめくりかえり、その下に嚢腫(のうしゅ)と呼ばれる、袋状のものができます。
外毛根鞘性嚢腫
頭にできることが多いアテロームです。触れると硬く感じます。
多発性毛包嚢腫
わきや胸、首、背中、腕などに多発するタイプのアテロームです。数十個できる場合もあります。
アテロームの治療
アテロームのなかには、放置しておいても大きくならずにいつの間にか消えてしまうものもあります。しかし、多くは自然治癒することがなく、完治を望む場合には医療機関で治療を受けなければなりません。ただし、治療方針は炎症の有無により異なります。
炎症が起きていない場合
アテロームを表皮と一緒に切り取り、切開した部分を縫う手術が行われます。細菌感染がなければ、袋の部分はまわりの組織から簡単にはがれますが、癒着している場合は、その部分の皮ふを一緒に取り除いて再発を防ぎます。
近年はニキビ跡程度の傷跡で済む「くり抜き法(へそ抜き法)」と呼ばれる手術も多く行われています。
炎症のないアテロームの手術は日帰り入院で対応できるケースが多くなっています。ただし、巨大なもの、患部が深いものについては入院が求められる場合もあります。
炎症が起きている場合
炎症が起きている場合は手術で取り除くことはできません。まずは炎症をおさえるために皮ふを切開して膿を排出します。症状によっては袋内の洗浄のために連日の通院が必要になります。袋を取り除く手術は炎症が落ち着いたあと、しばらくしてから行われます。
気になるおでき・しこりはつぶす前に受診を
アテロームは、市販薬などを使ったセルフケアで治せる病気ではありません。おできやしこりなど、皮ふにふくらみがあるとつぶしたくなるものですが、無理につぶすと炎症を起こしたりその後の治療が難しくなったりします。
また、一部のアテロームが、がん化した例も報告されています。たとえがんでなくとも、アテロームとの鑑別が難しい病気は多数あるため、自己判断は禁物です。
▼アテロームとよく似ている皮ふ腫瘍の例
皮ふ腫瘍 |
特徴 |
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石灰化上皮腫(毛母腫) |
皮ふの下に石のような硬いしこりができる。若年者の顔や首、腕にできることが多い。アテロームより硬い |
皮様嚢腫 |
上まぶたから眉毛、頭によくできる。生まれつきある人も。アテロームよりやわらかい。骨に癒着している |
脂肪腫 |
皮ふの下にできる脂肪の塊。皮ふとの癒着は少ない |
ガングリオン |
関節や筋の上にできる。のう胞のなかにゼリー状の液がたまっている。 |
耳前瘻孔 |
生まれつきある耳前上方の穴。細菌が入り込んで炎症を起こすことも |
外歯瘻 |
虫歯や歯周病が原因でたまった膿が皮ふをとおして排出される病気。下あごにできることが多い |
皮ふに気になるできものがある場合は、早期治療のためにも皮ふ科などを受診し、適切な診断と治療を受けるようにしましょう。