男性乳がんの罹患率や死亡率は? 気になる症状や治療法を薬剤師が解説

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乳がんは女性だけの病気ではなく、男性もかかりうる病気です。先入観を捨て、乳房や乳頭、乳輪まわりなどに気になる症状がある場合は、早めに医療機関を受診しましょう。なお、受診する診療科は乳腺外科が理想ですが、近隣にない場合は外科でも診察可能です。

この記事の監修

中西 真理

医薬品卸にて一般の方や医療従事者向けの情報作成に従事。その後、調剤薬局に勤務。現在は、フリーライターとして主に病気や薬に関する記事を執筆。

乳がんは、「女性特有の病気」と思われがちですが、全乳がんの約1%に「男性乳がん」が含まれています。

▼「男性乳がん」統計情報

新たに乳がんと診断された症例数(2018年)

661

人口10万人に対する罹患率(2018年)

1.1

死亡数(2019年)

96

人口10万人に対する死亡率(2019年)

0.2

国立がん研究センターがん対策情報センター「乳房:[国立がん研究センター がん統計]」の情報を基に筆者作成

男性は女性のように乳がん検診を受ける機会が少ないため、がんに気付いたときには病期(がんの進行度を示す指標)がかなり進んでいることも少なくありません。しかし、乳がんは早い段階で治療を開始すれば完治を目指せる病気です。

今回は、あまり知られていない男性乳がんの概要や受診を考慮すべき症状、治療法を解説します。

男性乳がんの概要と受診を考慮すべき症状

まずは男性乳がんの概要や危険因子、受診の目安となる症状を知っておきましょう。

男性乳がんの概要

男性乳がんは女性の乳がん同様、乳房に発生するがんです。痛みをともなうことはほとんどありません。ただ、男性の乳腺は女性より小さく、皮下脂肪も少ないことから、がん細胞が皮膚や筋膜に広がりやすいという特徴があります。
なお、男性乳がんが発生しやすいのは、乳房の外側です。両側にできることは少なく、片側のみにできる傾向があります。

男性乳がんの危険因子

男性乳がんの危険因子としては、近親者の乳がん罹患歴が重要です。近親者に乳がんになった人がいる場合、乳がんを発症する確率は2倍になるといわれています。その他、胸部の放射線治療歴、肝硬変やクラインフェルター症候群(男性の性染色体のうち、X染色体がひとつ以上多いことで生じる疾患)をはじめ、何らかの理由で体内の女性ホルモン量が多いことも、男性乳がんの危険因子です。

男性乳がんの自覚症状と受診を考慮すべき症状

男性乳がんの自覚症状としては、主に以下のようなものがあります。

  • 乳輪、乳房、わきの下のしこり(痛みはない)
  • 乳房の大きさ、形状の変化
  • 乳頭の異常(陥没、分泌物、外観の違和感など)
  • 乳頭からの分泌物(出血など)
  • 皮膚の赤みやくぼみ、しわ、ただれ、はれ

 

男性の場合、乳房周囲の変化を意識してチェックすることは少ないかもしれませんが、乳がんは自分で見つけることができる唯一のがんです。入浴時などに乳房まわりを定期的に確認し、上記のような症状がある場合は早めに医療機関を受診し、医師の診断を受けるようにしましょう。

男性乳がんの診断と治療

男性乳がんが疑われる場合は、問診や身体診察、血液検査のほか、エコー(超音波)検査やマンモグラフィー、MRI、CTなどの画像検査を必要に応じて行います。しこりがある場合は、組織を採取して病理検査を行うこともあります。

乳がんと診断された場合はさらにくわしい検査を行い、がん細胞が広がっている範囲やほかの部位への転移の有無を確認して病期を判定します。

治療方針は女性の乳がんとほぼ同じで、病期に応じて治療内容が決定されます。
がんが小さく切除が可能な時期であれば、外科手術で病巣を取り除くことが優先されます。病状によっては、手術前や手術後に薬物療法や放射線治療が行われることもあります。
一方、がんが大きく広がっていて切除が難しい場合やほかの場所へ転移している場合は、がんと一緒に生きていく治療が選択されます。このような場合は、がんの進行をおさえる薬物療法のほか、病期によっては緩和ケアが検討されます。

乳がん治療は早期発見がカギ! 定期的なチェックで見逃しを防ごう

乳がんは、罹患しても発見が早ければ治療できる病気です。下図は男性乳がんの5年生存率(5年経過後の生存率)です。
手術症例が少ないため、ひとつの症例が持つ割合は大きくなりますが、「女性乳がん」と同じような経過をたどると考えてよいでしょう。

全国がんセンター協議会ウェブサイト「全がん協加盟施設の生存率協同調査 / 全がん協生存率」の情報を基に作図

おわりに

乳がんは女性だけの病気ではなく、男性もかかりうる病気です。先入観を捨て、乳房や乳頭、乳輪まわりなどに気になる症状がある場合は、早めに医療機関を受診しましょう。

なお、受診する診療科は乳腺外科が理想ですが、近隣にない場合は外科でも診察可能です。「乳腺外科は女性の患者さんばかりで居心地が悪い」という場合は、家族やパートナーに同伴してもらい、一緒に診察に入れば大丈夫です。

いつまでも健康に過ごすために、気になる症状があればためらわずに受診しましょう。