50代から気をつける病気。予防・対策

交通事故よりも多いヒートショック死 対策を看護師が解説

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「ヒートショック」とは、気温の急激な変化によって血圧が変動し、さまざまな病気を引き起こすことをいいます。ヒートショックは、少しの工夫が予防につながります。家族みんなで意識して、健康な生活を送りましょう。

この記事の監修

浅野すずか

看護師として病院や介護の現場で勤務後、子育てをきっかけにライターに転身。看護師の経験を活かし、主に医療や介護の分野において根拠に基づいた分かりやすい記事を執筆。

「一番風呂はよくない」という話を聞いたことはありませんか? 理由のひとつは、脱衣所と浴室の気温差によって、ヒートショックのリスクが高まるためです。

「ヒートショック」は、何の前触れもなく起こるため、非常に怖い現象です。最悪の場合、死に至ることもあります。高齢者に多く起こりますが、どの年代でも起こりうるため注意が必要です。

今回は、ヒートショックが起きやすい条件や予防法について紹介します。

ヒートショックとは?

「ヒートショック」とは、気温の急激な変化によって血圧が変動し、さまざまな病気を引き起こすことをいいます。

血圧はさまざまな要因で変動しますが、そのうちのひとつが気温です。気温が低いと、血管が収縮し、血圧が上昇します。反対に気温が高くなると血管が拡張するため、血圧は低下します。気温差が大きいと血圧の変動も大きくなってしまうため、病気を引き起こすことがあります。

ヒートショックによる事故は多く発生しています。消費者庁によると、高齢者の事故のうち「不慮の溺死及び溺水」による死亡者数は増加傾向にあり、平成28年は6,759人にのぼっています。このうち「家」や「居住施設」の浴槽における死亡者数は4,821人。交通事故の死亡者数よりも多い人数です。

消費者庁 「ニュースリリース 冬季に多発する入浴中の事故に御注意ください!-11 月 26 日は「いい風呂」の日-みんなで知ろう、防ごう、高齢者の事故 ②」の情報を基に作図

平成19年と平成28年の比較では、すべての年代で死亡者数が増えており、特に75歳以上の高齢者が多くなっています。

消費者庁 「ニュースリリース 冬季に多発する入浴中の事故に御注意ください!-11 月 26 日は「いい風呂」の日-みんなで知ろう、防ごう、高齢者の事故 ②

このように、浴槽での事故は身近に起こりえます。また、ヒートショックは浴室だけでなく、暖房設備がなく気温が低くなりやすい場所(たとえば、トイレや北側にある部屋など)でも起こります。

ヒートショックはなぜ怖い? 起こりうる影響と重症化する理由

なぜヒートショックは、こんなにも怖いのでしょうか。
その理由として、下記の3つが考えられます。

1.突然起こる

ヒートショックは、体調が安定していても突然起こる場合があります。血圧は変動しているにもかかわらず、自覚症状があまりなく、自分自身ではなかなか気づきにくいためです。自覚症状がないのにさまざまな病気の要因となるため、高血圧は「サイレントキラー」とも呼ばれています。

2.死に至ることがある

ヒートショックは、心筋梗塞や脳出血など重大な病気を引き起こします。
たとえば、心筋梗塞は心臓の血管がつまり、心臓の細胞に栄養がいかず壊死してしまう病気ですが、高血圧や動脈硬化などの生活習慣病があると、ヒートショックによって血管がつまり、心筋梗塞につながります。心筋梗塞になると激しい胸痛が起こり、最悪の場合、死に至ることもあります。

3.発見が遅れやすい

ヒートショックの多くは、入浴中に起こります。入浴中はひとりになるため、家族と同居していたとしても発見が遅れてしまいます。そうなると治療も遅れるので、死に至る確率が高くなるのです。

ヒートショックのリスクが高い人と起こりやすい条件

ヒートショックは誰にでも起こりうることですが、特にリスクが高い人がいます。また、起こりやすい場面もあります。ご自身に当てはまらないかチェックしてみてください。

1.高齢者

上述のとおり、ヒートショックは年齢が高くなるにつれてリスクが高くなります。理由は、年齢が高くなると生活習慣病になるリスクも高く、血圧の変動による影響も大きいためです。

2.生活習慣病を患っている

高血圧や動脈硬化などの生活習慣病もリスクのひとつです。生活習慣病があると、血圧の変動により心臓や血管に多くの負担がかかるため、ヒートショックを起こしやすくなります。

3.冬

冬は気温が下がるので浴室との温度差が大きくなります。実際、ヒートショックが起こりやすいのも冬です。
消費者庁によると、東京消防庁管内における高齢者の「おぼれる」事故による救急搬送者数は、冬に多くなる傾向があります。特に多いのが11月から3月にかけてで、年間の事故数全体の約7割にのぼります。

消費者庁「News Release 平成29年1月25日 冬季に多発する高齢者の入浴中の事故に御注意ください! 」の情報を基に作図

冬に多いヒートショックですが、夏にはまったく起こらないかというとそうではありません。冬に比べると少ないものの、夏でも起きていることが上記グラフからも分かります。
ヒートショックの原因は急激な温度差なので、たとえばエアコンの効いた涼しい部屋と温かい浴室では温度差が大きくなり、ヒートショックの要因となります。

4.家の構造

ヒートショックは浴室で起こりやすいのですが、その理由は家の構造にもあります。浴室は北側に位置していることが多く、気温が低くなりやすいのです。暖房設備を設置していない家も多く、室温を調整するのが難しいという特徴もあります。
特に家の築年数が経過している場合は断熱性能が高くないため、より気温差に留意する必要があります。

ヒートショックを予防したい! 生活で気を付けるポイントは?

ヒートショックは、死に至ることもあるため怖いと感じてしまいますが、予防方法があります。少し意識すればできることが多いので、ぜひ生活に取り入れてみてください。

浴室やトイレと、他の部屋の温度差を小さくする

ヒートショックが起こりやすい浴室やトイレと他の部屋との温度差に気を付けましょう。
浴室は備え付けの浴室暖房を使う、なければヒーターを活用するなどし、入浴前に温めておきます。浴槽のふたをあけておけば、湯気による浴室温度の上昇も見込めます。
湯船につかる前には、かけ湯で少しずつからだを温めるようにしましょう。からだが冷えたまま湯船につかると、血管が一気に拡張します。その後、湯船から出ると血管が収縮し、血圧の変動が大きくなってしまいます。低血圧からめまいを引き起こす危険性もあるので注意が必要です。
また、夏場はエアコンの温度設定を下げすぎないように注意しましょう。

入浴温度は適温に、長湯はしない

熱すぎるお湯と長い時間の入浴は、からだへの負担が大きくなります。好みがあるとは思いますが、お湯の温度は適温にして、長湯しないように気を付けてください。消費者庁(※)では、お湯の温度は41℃以下、10分以内の入浴がおすすめとしています。

入浴前は飲酒をしない

飲酒後の入浴は、血圧が下がりすぎてしまうおそれがあります。飲酒そのものにも血圧を下げる働きがあり、入浴するとさらに下がってしまうので、血圧の変動が激しくなるのです。
入浴は飲酒前に済ませるか、飲酒から時間を置いて入るようにしましょう。

入浴することを家族に伝える

家族と同居している人は、入浴前に家族に声をかけ、入浴時間を気にかけてもらうようにしましょう。万が一、ヒートショックが起こったときに早く発見してもらえます。普段よりも入浴時間が長いと感じるときは声をかけてもらうようにしておくと安心です。

まとめ

ヒートショックには、「高齢者」「冬」など起こりやすい条件がありますが、これらに関係なく誰にでも起こり得るものです。普段の生活のなかで、できるだけ温度差をなくすように気を付けましょう。

ヒートショックは、少しの工夫が予防につながります。家族みんなで意識して、健康な生活を送りましょう。