50代から気をつける病気。予防・対策

【看護師が解説】腰椎椎間板ヘルニアを早く治すために 腰痛を悪化させない生活習慣

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椎間板ヘルニアとは、背骨を構成する椎骨と椎骨の間にある椎間板が飛び出て、神経を圧迫することでさまざまな症状を引き起こす病気です。腰痛やしびれなど症状を感じたら、早めの受診と健康的な生活習慣で、さらなる悪化を防ぎましょう。

この記事の監修

浅野すずか

看護師として病院や介護の現場で勤務後、子育てをきっかけにライターに転身。看護師の経験を活かし、主に医療や介護の分野において根拠に基づいた分かりやすい記事を執筆。

腰痛は誰にでも起こる症状です。これまで腰を痛めた経験がある人も多いことでしょう。腰痛の原因となり得る病気のひとつが「腰椎椎間板ヘルニア」です。

腰椎椎間板ヘルニアになると、腰痛や足のしびれで日常生活が思うようにいかなくなります。一度症状が治ったとしても再発することがあり、悪化させないためには普段の生活で腰の負担を軽減していく必要があります。

今回は、腰椎椎間板ヘルニアの概要や原因だけでなく、悪化させないための生活習慣を解説します。できるところから取り入れて、イキイキとした毎日を送りましょう。

腰椎椎間板ヘルニアとはどんな病気?

椎間板ヘルニアとは、背骨を構成する椎骨と椎骨の間にある椎間板が飛び出て、神経を圧迫することでさまざまな症状を引き起こす病気です。ヘルニアとは、本来あるべき位置から飛び出ることを意味します。

背骨は、首(頸椎)からおしり(尾骨)まであり、頸椎でヘルニアが起きれば「頸椎椎間板ヘルニア」、胸椎で起これば「胸椎椎間板ヘルニア」となります。

今回解説する腰椎椎間板ヘルニアは、椎間板ヘルニアのなかでもよく見られる病気です。

ヘルニアの腰痛以外の症状のひとつに、おしりから足にかけての痛みやしびれがあります。悪化すると足に力が入らなくなったり、膀胱直腸障害(失禁や残尿感など)が起きたりします。また、下図のように疼痛性側弯(痛みのため背骨が横に曲がる)が起こることもあります。

診断は、以下の検査から総合的に判断します。

  • 問診:痛みの程度や場所などを確認します。
  • 下肢進展挙上テスト(SLR)、大腿神経進展テスト(FNS):足を上げたり膝を曲げたりして、痛みがどのように出るかチェックします。
  • レントゲン
  • MRI:確定診断のため大切な検査ですが、ヘルニアの所見があっても症状がないこともあります。

治療法には、「保存療法」と「手術療法」があり、多くの場合で保存療法が行われます。この場合、下記のような処置がとられます。

  • 安静にする(場合によってはコルセットを着用します)
  • 鎮痛剤の内服
  • ブロック注射(局所麻酔薬を神経の辺りに注射して痛みを和らげます)

なお、50~80%は、手術をしなくても痛みは回復するという報告があります。(※1)

手術は、膀胱直腸障害がある場合や保存療法で症状が改善しない場合に行います。現在では、よりからだに負担の少ない内視鏡手術も多く行われるようになりました。

腰椎椎間板ヘルニアの原因とは? 発症しやすい人の特徴

腰椎椎間板ヘルニアは、主に以下の原因で起こります。

1.加齢

年齢とともに椎間板が変性していくことで、発症リスクが高くなります。椎間板ヘルニア患者の年齢は50代がもっとも多く、男性は女性の約2倍の頻度でみられます。(※2)

2.重労働

重い荷物を持ったり運んだりすると、腰に大きな負担がかかります。また、上半身を無理にひねる体勢にも要注意です。

3.姿勢の悪さ

デスクワークや車の運転で長時間座っていると、腰椎にかかる圧力が強まります。さらに、中腰や猫背など腰に負担のかかる姿勢を長く続けていると、腰椎椎間板ヘルニアのリスクになります。コロナ禍でテレワークが進み、座る時間が増えたという方は特に気を付けたいところです。

4.喫煙

意外に思うかもしれませんが、たばこも腰椎椎間板ヘルニアの原因です。たばこを吸うと、血行が悪くなり椎間板の劣化や変形につながります。

 

このように腰椎椎間板ヘルニアの原因はさまざまありますが、ひとつではなく複数の原因が合わさることも多いです。

腰椎椎間板ヘルニアだけでない! 腰痛を引き起こす病気

腰椎椎間板ヘルニアはよく耳にする病気なので、腰痛があると「もしかしてヘルニアかな?」と心配になる方もいるでしょう。しかし、腰痛を引き起こす病気は他にもあります。
シニア世代が気を付けたい病気は、主に2つです。

1.ぎっくり腰

腰の靭帯や筋肉に急激な負荷がかかって発症します。遠くにあるものを取ろうとして手を伸ばす、くしゃみをするなど、ささいなことでも起きてしまう場合があります。ぎっくり腰になると立てなくなり、動くのも難しいほど痛みが強くなります。

2.腰部脊柱管狭窄症(ようぶせきちゅうかんきょうさくしょう)

脊髄を囲んでいる脊柱管が狭くなり、神経を圧迫することで出る症状です。腰痛やしびれで、悪化すると歩けなくなることもあります。特徴的な症状は、間欠性跛行(かんけつせいはこう)です。歩くと痛みが出ますが、しばらく休むと治ってまた歩けるようになります。
年齢とともに発症するリスクが高くなる病気のひとつです。

腰椎椎間板ヘルニアの予防法と悪化させないポイント

腰椎椎間板ヘルニアになると、腰痛や足のしびれなどつらい症状に悩まされます。発症を予防するためには、普段の生活から気を付けることが大切です。ここでは、悪化を防ぐための5つのポイントを紹介します。

1.姿勢に気を付ける

できるだけ長時間座らないようにしましょう。休憩時間には歩く、ストレッチをするなど適度にからだを動かしましょう。
また、座るときの姿勢にも気を付けてください。厚生労働省の資料(※3)によると、背もたれの角度は90°より95°のほうが負担は少なく、さらに腰のあたりにクッションを入れるとより負担が軽減できるとされています。
座る時間が長くなりがちな方は、背もたれの角度を調整できるイスを選び、クッションを使ってより楽な姿勢を見つけてみてください。

厚生労働省 「運送業務で働く人のための腰痛予防のポイントとエクササイズ|P14 (6)長時間の車両運転等の作業 ①適切な座作業の姿勢 図4-1-10」より転載

2.重いものを持つときは腰ではなく膝を使う

重いものを持ち上げるとき、つい腰の曲げ伸ばしをしがちですが、この動作は腰に負担をかけてしまいます。腰ではなく、膝の曲げ伸ばしを使って持ち上げるようにしましょう。

3.禁煙する

たばこは、腰椎椎間板ヘルニアの原因になります。喫煙習慣がある方は禁煙しましょう。
自分の意志だけではなかなか難しい場合は、禁煙外来の利用をおすすめします。条件を満たせば、健康保険の利用も可能です。

4.定期的に運動をする

運動によって筋力をつけることで、正しい姿勢が維持しやすくなります。症状が出始めた急性期は安静が必要ですが、痛みがある程度落ち着いてきたら軽いウォーキングやストレッチから始めてみましょう。激しい運動は必要なく、毎日少しずつでも続けることが大切です。

5.症状を自覚したら早めに病院に行く

腰椎椎間板ヘルニアを疑う症状を感じたら、早めに病院を受診しましょう。担当の診療科は整形外科です。
腰痛は誰にでも起こりやすい症状であるため、「そのうち治るだろう」と気楽に考えてしまう人がいます。しかし、同じ腰痛でも原因が違う場合もあるので、診察してもらい適切な治療を受けると安心です。
また、腰痛がある方の中にはマッサージや整体に通っている方もいると思います。これらの否定はしませんが、腰痛の原因が分からないまま行うと悪化させる場合もあるため、一度病院で診察を受けてから行くようにしましょう。

まとめ

腰痛や足のしびれが悪化すれば、日常生活に支障をきたしてしまいます。一度よくなっても再発する可能性があるので、腰に負担がかからない生活習慣を意識することが大切です。

腰椎椎間板ヘルニアは、原因が重なれば誰にでも起こることです。腰痛やしびれなど症状を感じたら、早めの受診と健康的な生活習慣で、さらなる悪化を防ぎましょう。

※「令和2年度平均年収と学歴調査

【参照サイト】

※1 独立行政法人国立病院機構 相模原病院 「腰椎椎間板ヘルニアとは

※2 一般社団法人日本脊髄外科学会「腰椎椎間板ヘルニア

※3 厚生労働省 「運送業務で働く人のための腰痛予防のポイントとエクササイズ