メラノーマは、早期発見できれば手術で除去できるがんです。年に1度は全身をチェックして、メラノーマの早期発見に努めましょう。
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からだのあちらこちらにある、ほくろ。ほくろは多かれ少なかれ誰にでもあるものですが、ほくろと見分けがつきにくい悪性黒色腫(メラノーマ:皮膚がんの一種)に罹患する人は、50代以降、急激に増えています。
厚生労働省「平 成 29 年 全国がん登録 罹患数・率 報告」をもとに作図
メラノーマは、抗がん剤や放射線による治療が効きにくいがんです。また、初期にリンパ節に転移するケースもめずらしくありません。しかし、目に見える範囲や指に触れる範囲にできるメラノーマは、早期発見が可能です。
今回は、メラノーマの種類と注意すべきほくろやシミの特徴、そしてメラノーマの発生を防ぐために日常生活で気をつけたい点について解説します。
悪性黒色腫(メラノーマ)のタイプは主に4つ
メラノーマは大きく4つのタイプに分類され、それぞれできやすい部位や形が異なります。ここでは、それぞれの違いを比較してみましょう。
末端黒子型
足の裏や手のひら、手足の爪などにできるメラノーマであり、日本人に最も多いタイプです。初期は、形のはっきりしない褐色や黒褐色のシミとして現れ、進行すると色が部分的に濃くなったり、しこりができたりします。爪にできる場合は縦に黒い筋が入り、次第に爪全体へと広がります。
表在拡大型
からだの中心部や手足の付け根に近い部分に発生しやすいメラノーマです。日本人では肌の色が白い人には発生しやすいとされています。
表在拡大型のメラノーマは、境界がはっきりしない少し盛り上がったまだら状のシミとして現れます。成長速度はそれほど早くありません。
結節型
からだのあらゆる場所に発生します。40~50代と比較的若い頃に出現することが多く、早期に皮膚の深部に進行したり転移したりと、成長スピードは早いほうです。
結節型というとおり、黒色や濃淡の混ざった硬いしこり(結節)ができます。しこりはどんどん大きくなりますが、初期には結節の周りにシミはみられません。
悪性黒子型
高齢者の顔面に発生することが多いメラノーマです。首や手の甲など、日光を浴びやすい部分にも発生することがあります。日本人では最も少ないタイプです。最初は境界がはっきりしないまだら状のシミとして現れ、範囲がゆっくり拡大します。病期が進むとシミの一部にしこりが生じます。
▼メラノーマの種類と特徴
種類 |
特徴 |
発生部位 |
初期症状 |
---|---|---|---|
末端黒子型 |
日本人に最も多い。 |
足の裏・手のひら・手足の爪など。 |
形のはっきりしないシミ。爪の場合は、縦に黒い筋が入る。 |
表在拡大型 |
白人に多い。 日本人では肌の白い人に生じやすい。 進行は遅い。 |
胸や腹、背中などからだの中心部分、手足の付け根に近い部分など。 |
境界のはっきりしない盛り上がったシミ。色はまだら。 |
結節型 |
40~50代の発生が多く、進行が早い。 |
全身。 |
黒色や濃淡の混じった硬いしこり(結節)ができる。 |
悪性黒子型 |
日本人に最も少ない。 |
顔や首、手の甲など、日光にさらされやすいところ。 |
境界のはっきりしない平らなシミ。色はまだら。 |
国立がん研究センター がん情報サービス「それぞれのがんの解説>悪性黒色腫(皮膚)基礎知識」を参考に筆者作成
気をつけるべき、ほくろやシミの見わけかた
メラノーマには、いくつか特徴があります。
以下に挙げる5つの特徴のうち、4つ以上あてはまる場合は医療機関で詳しい検査を受けることを強くお勧めします。
▼メラノーマの特徴
形 |
左右非対称 |
---|---|
輪郭 |
ギザギザしている。境界がはっきりしない部分がある |
色 |
濃い部分と薄い部分がある |
大きさ |
長径が6mm以上ある |
経過 |
進行にともない隆起する |
「皮膚がんの早期発見で覚えておきたいこと~ ほくろと悪性黒色腫(メラノーマ)の5つの見分け方 ~ | プレスリリース | 東邦大学」を参考に筆者作成
色調の変化
- 薄い褐色だったものが濃い黒色に変化した
- 色調に濃淡が生じている
- 部分的に色が抜けてまだらになっている
大きさの変化
- ほくろが急激に大きくなり、5~6mm以上になる
形状の変化
- 輪郭がギザギザになっている
- しみ出したように輪郭がぼんやりしている
- しこりがある
硬さの変化
ほくろのような柔らかさはなく、一部あるいは全部が硬くなっている
国立がん研究センター がん情報サービス「それぞれのがんの解説>悪性黒色腫(皮膚)基礎知識」を参考に筆者作成
このほか、1~2年のあいだに次のような変化があるほくろ・シミは要注意です。また、ほくろやシミではありませんが、爪の縦方向に黒い筋が入り、半年~1年くらいのあいだに色が濃くなって筋の幅が広くなる場合もメラノーマが疑われます。
日常生活で注意すべきこと
メラノーマの危険因子として考えられているのは、紫外線や外的刺激です。
国立がん研究センターのウェブサイト(※)によると、海外では遺伝的にメラノーマが発生しやすい家系も報告されていますが、日本人では明らかにされていませんす。そのため、メラノーマの発生リスクをおさえるためには、以下の2点が重要になってきます。
日頃から適切な紫外線ケアを行う
紫外線ケアでは、日焼け止めクリームを利用するのがおすすめです。ただし、汗で流れてしまうこともあるため、こまめに塗り直すようにしましょう。なお、比較的メラノーマの罹患率が低い若い世代でも、紫外線ケアは必要です。
つつく、ほじる、焼くなど外的刺激を与えない
ほくろやシミに刺激を与えるのも避けなければなりません。気になるほくろを針で刺したりキズつけたりする人もいますが、絶対にやめましょう。
まとめ
メラノーマは、早期発見できれば手術で除去できるがんです。一方で、発見が遅れてからだのあちらこちらに転移すると治療が難しくなり、命にかかわる場合もあります。年に1度は全身をチェックして、メラノーマの早期発見に努めましょう。
※国立がん研究センター がん情報サービス「それぞれのがんの解説>悪性黒色腫(皮膚)基礎知識」
https://ganjoho.jp/public/cancer/melanoma/index.html