50代から気をつける病気。予防・対策

メタボの人は要注意! 甘く見ると大変なことになる脂肪肝の経過と健康対策について

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メタボは、別名「内臓脂肪症候群」と言われ、さまざまな病気を引き起こすと言われています。なかでも、「沈黙の臓器」と呼ばれる肝臓の病気につながる可能性が高いので、今のうちからバランスの良い食生活や運動など健康管理に気を付けていきましょう。

この記事の監修

surgyuichi

医学博士、外科専門医、消化器外科専門医、内視鏡外科学会技術認定医など。現在も外科医として数多くの手術をこなしながら、病気や医療に関する記事を執筆。

メタボリックシンドロームという言葉を聞いたことはありますか? 略して「メタボ」と呼ばれることもあります。

メタボリックシンドロームは、別名「内臓脂肪症候群」と言われ、内臓肥満に高血圧、脂質異常(高脂血症)、耐糖能異常(糖尿病の前段階)、喫煙などが加わることで、心筋梗塞、脳卒中(脳血管疾患)、糖尿病、COPD(慢性閉塞性肺疾患)、がんなど、さまざまな病気を引き起こすと言われています。
メタボリックシンドロームによって発症した病気を総称して「生活習慣病」と呼びます。

運動不足や不規則な食習慣も相まって、いまや全国民の3分の1がメタボリックシンドロームである、とまで言われるほど急増しています。

メタボリックシンドロームの人はそうでない人と比べ、生活習慣病にかかるリスクが約3倍高くなると言われています。また、脂肪肝、高尿酸血症(痛風)、腎臓病、睡眠時無呼吸症候群といったいろいろな病気にもつながります。

生活習慣病にかかわる医療費は、年々増加しています。厚生労働省の資料(※1)によると、平成29年度(2017年)の国民総医療費は約43兆円でしたが、そのうち生活習慣病を患う可能性が高い年齢層(45歳以上を対象)に対する医療費は、約35兆円でした。
たとえば、生活習慣病のひとつである脳卒中(脳血管障害)には1.7兆円の医療費が割かれていますが、これは45歳以上の医療費の約5%を占めています。
その他の生活習慣病にかかる医療費も加味すると、毎年莫大な医療費が使われていることは、容易に想像がつきます。

厚生労働省はこの膨張し続ける医療費を削減するため、予防医療としてメタボ健診(特定健診)などの対策を打っていますが、日常の生活習慣を大きく変化させるまでには至っていません。

今回はこれら生活習慣病のなかでも、肝臓に大きな影響を与える可能性のある「脂肪肝」に注目して解説していきます。

脂肪肝ってどんな病気? なぜなるの?

脂肪肝といえば、どのようなイメージがありますか? きっと、「体格の良い大酒飲みがなる病気」と思われたのではないでしょうか。

アルコール性脂肪肝は、その名のとおりアルコールの過飲による中性脂肪やコレステロールの蓄積が原因で発症します。日本酒5合以上を毎日飲むと1週間で、たちまち脂肪肝に。日本酒3合以上を5年以上飲む人でも、その多くが脂肪肝になっているとされています。

絶対的な治療方法は、飲酒量を減らすこと。ですので、断酒により、いつの間にか治ってしまっていることもあります。

脂肪肝はどうチェックする?

アルコール性脂肪肝になっても、初期のころは自覚症状がほとんどなく、採血で肝機能異常を軽く指摘される程度で済んでしまいます。繰り返し受ける健康診断の採血検査で、ある日肝機能異常を指摘され、初めてわかります。

採血検査の項目のうち、注目したいのは、「トランスアミナーゼ(AST、ALT)」の値です。お酒をよく飲む方は、「γーGPT」の数値にも注意しましょう。

採血で脂肪肝が疑われたら、次は腹部超音波検査を行います。脂肪肝の場合は腹部超音波検査で特徴的な検査所見が出ますので、生活歴などとあわせて診断します。

実は怖い脂肪肝

脂肪肝は、アルコール過剰摂取や食習慣などから、肝臓の組織に中性脂肪やコレステロールが沈着することで発症します。この脂肪肝に何らかのストレスがかかり、炎症を起こした状態を、「脂肪性肝炎」といいます。

肝臓は「沈黙の臓器」と呼ばれ、からだに何らかの異変を起こし始めたときには、もう手遅れとなっている場合が多い臓器のひとつです。脂肪肝も同様で、知らないあいだにゆっくりと進み、気付いたら肝硬変になってしまいます。

肝硬変は肝臓がんの前段階とも言われているため、肝硬変になる前に対策を立てる必要があります。

「フィブロスキャン」と呼ばれる腹部超音波検査で、肝臓の硬さ(肝硬変になっていないか)を調べる方法も確立されています。脂肪肝と診断された方はこの検査で、具体的な状態を把握することをおすすめします。

脂肪肝は特殊な場合を除き、治療によって元に戻る可能性があります。治療の原則は、「原因の排除」と「原因疾患の治療」です。肥満にともなう脂肪肝は、食事療法と運動療法が基本となりますが、アルコール性脂肪肝の場合は、禁酒が絶対です。食事をせずにお酒だけ飲む方も多いと思いますが、必ずバランスの取れた食事と一緒に飲酒をしましょう。アルコール依存がある場合は、禁酒を含めた治療を受けましょう。

特殊な脂肪肝「NAFLD」

これまでは「脂肪肝=アルコール性脂肪肝」としてお話ししてきました。しかし近年、アルコールをまったく飲まない比較的やせ形の方も脂肪肝になっていることが知られるようになり、「非アルコール性脂肪肝(NAFLD:ナッフルディー)」と呼ばれています。この脂肪肝はアルコール性脂肪肝より危険性が高く注意が必要です。

日本では総人口の29.7%がこのNAFLDに罹患していると言われ、男性は40~59歳を中心とした中年層に、女性は閉経後の60~69歳に多く発症しています。
近年、若年者にもこのNAFLDが見られ始めており、それぞれの年代でのライフスタイルが関与していると考えられています(※2)。

NAFLDを引き起こす一番の原因はもちろん肥満です。食事内容では、カロリーの過剰摂取、糖質(炭水化物)過多、ソフトドリンク(糖質、果糖)、肉類、脂質の過剰摂取が原因とされています。しかし、ダイエット目的で朝食抜きの食生活を行っている若年者もNAFLDとなる可能性が非常に高いと言われています。

NAFLDではないかは、どうチェックする?

基本的に脂肪肝であることには変わりないため、採血検査での肝機能異常や腹部超音波検査を行います。日常的な飲酒をしていない場合は、食生活と合わせながらNAFLDではないかを診断します。

実は怖いNAFLD。確実な治療方法は存在しない

アルコール性脂肪肝の場合であれば、厳格な禁酒とバランスの取れた食生活を守ることで症状は改善します。しかし、NAFLDには特効薬と言われるものは存在せず、食事と運動療法による体重コントロールしか手段がありません。
非肥満者のNAFLDでも内臓肥満は多く、体重の7%を減量してようやくNAFLDが治癒するという報告があります。

アルコール性脂肪肝と同様に、NAFLDも最終的に肝硬変へと至ってしまう病気です。近年、NAFLDから肝細胞がんになる割合も増加傾向にありますので、アルコールを飲んでいないからと過信するのは禁物です。

何事も予防が大事 

NAFLDに必ず効く、と言われる治療法は現在ありません。バランスの良い食生活や運動など今のうちから健康管理に気を付け、脂肪肝、特にNAFLDにならないよう予防医療に努めましょう。

※1 厚生労働省「平成 29 年度 国民医療費の概況」P3,6,19
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k-iryohi/17/dl/data.pdf

※2 橋本悦子 NAFLD/NASHの診断と治療 新たな展開(解説)成人病と生活習慣病 (1347-0418)48巻5号 Page535-539(2018.05)