50代から気をつける病気。予防・対策

50代以降のシニアを襲う怖い病気 帯状疱疹に要注意!

50代から気をつける病気。予防・対策

帯状疱疹は、80歳までに3人に1人がかかるといわれる感染症で、年齢が高くなるほどかかりやすく、重症化する傾向にあります。帯状疱疹の予防には、ワクチンの接種が非常に有効です。同時に疲れやストレスを溜めない生活を心がけ、帯状疱疹になりにくいからだづくりを目指しましょう。

【ライタープロフィール】遠藤愛

「50歳を過ぎたら帯状疱疹ワクチンを接種しましょう」。そんなキャッチコピーの書かれたポスターを医療機関で目にしたことはありませんか?
帯状疱疹は、80歳までに3人に1人がかかる(※1)といわれる感染症で、年齢が高くなるほどかかりやすく、重症化する傾向にあります。欧米では、すでに10年以上前から高齢者への帯状疱疹ワクチンが推奨されてきましたが、日本で勧告されるようになったのはここ数年のことです。

今回は、「帯状疱疹って聞いたことはあるけれど、実際どんな病気なの?」という方に向けて、帯状疱疹の実態と予防法について解説します。

50代を過ぎると急増する「帯状疱疹」とは?

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帯状疱疹は「水痘・帯状疱疹ウイルス」によって起こる感染症です。幼少期にかかった水ぼうそう(水痘)ウイルスが、歳月を経て再び活性化するのが原因で、赤みのある発疹と強い痛みが特徴です。

驚くことに、1度水ぼうそうにかかると治癒後もウイルスは体内に残り、神経の根本にひっそりと潜伏しています。体力・免疫力が十分ある健康なときは問題ないのですが、加齢やストレス、疲労、抗がん剤治療などで免疫力が低下すると、ウイルスが再活性化して帯状疱疹を発症します。

日本では、成人の95%が水痘・帯状疱疹ウイルスの抗体を持っている(※2)といわれ、ほとんどの人が帯状疱疹にかかるリスクを抱えています。そのくらい帯状疱疹は身近に考えるべき病気ということです。

下のグラフは、日本における帯状疱疹の大規模調査(宮崎スタディ)の結果を示したものです。これによると、患者数・発症率はともに50代で急上昇し、そのピークは60〜70代となっています。

国立感染症研究所「宮崎県の帯状疱疹の疫学(宮崎スタディ)」の情報を基に作図

帯状疱疹の発症率が加齢によって上昇する背景には、水ぼうそうで獲得した免疫が歳月ともに弱まることや、体力の低下・衰弱でウイルスへの抵抗性が低くなることが挙げられます。
これまで身を潜めていたウイルスが、加齢やストレス、病気をきっかけに再び活性化して暴れだす......これが帯状疱疹の正体です。

帯状疱疹の症状と後遺症

神経の根本(神経節)でひっそりと出番を待っていたウイルスは、活性化すると神経を伝わって皮膚に達し、発疹や水ぶくれとなって現れます。

帯状疱疹に特徴的な症状と、治癒までの経過は次のとおりです。

  • 神経痛のようなピリピリ・チクチクした痛みを感じる
  • 痛みの部位に沿って赤い発疹が出現する
  • 発疹はからだのどちらか片方に帯状に広がる
  • 発疹は水ぶくれやびらんになる。その後、かさぶたになって治癒する

個人差はありますが、帯状疱疹が完全に治癒するまで1カ月ほどかかります。ほとんどは軽症ですが、まれに重症化することもあるため油断はできません。高齢になるほど重症化しやすく、後遺症が残るリスクも高まります。

治癒後も、3カ月以上痛みが続く場合は「帯状疱疹後神経痛」と診断されます。帯状疱疹の代表的な後遺症で、ウイルスが知覚神経を傷つけることで起こります。50歳を過ぎた患者の約1割に後遺症が残るといわれており、長期にわたる神経痛が特徴です。

このように、帯状疱疹は発症時のみならず、後遺症が残った場合は治癒後も長期間苦しむことになります。つらい思いをしないためにも、帯状疱疹にかかる前の「予防」が非常に重要なのです。

予防効果はお墨付き! 50歳を過ぎたらワクチンの接種を

画像②利用規約

帯状疱疹を予防するためにできることは何でしょうか? 日本では、50歳を過ぎたら帯状疱疹ワクチンの接種を推奨しています。

帯状疱疹の予防接種で得られるメリットには、次のようなものがあります。

  • 帯状疱疹の発症を防ぐ
  • 帯状疱疹が重症化するのを防ぐ
  • 帯状疱疹による後遺症を防ぐ

国立感染症研究所ホームページでは、カリフォルニア大学で次のような調査結果が出ていると紹介されています。

ワクチン接種群ではプラセボ群と比べて, 帯状疱疹の発生率が51.3%減少, PHN(筆者注:帯状疱疹後神経痛)の発生率も66.5%減少し, 帯状疱疹の重症度も61.1%低下したと報告している。

国立感染症研究所「帯状疱疹ワクチンの導入について

つまり、予防接種を受けると帯状疱疹および帯状疱疹後神経痛(PHN)の発症率・重症度のいずれも半減することが認められており、帯状疱疹の予防に一定の効果があると証明されているのです。

日本では、子どもに用いられる水痘ワクチンを帯状疱疹ワクチンとして接種します。その効果はお墨付きですが、次のような注意点もあります。

  • 生ワクチンのため、白血病患者、抗がん剤の治療中の人、免疫不全患者は接種できない
  • 接種後、注射部位の赤みや腫れ、かゆみが出ることがある
  • ワクチンの予防効果は永久的ではなく、3〜11年で減弱するという報告もある(※3)
  • 帯状疱疹を100%予防できるわけではない

とはいえ、予防接種が可能な人にとっては非常に有効な予防法であるのは間違いありません。「50歳を過ぎたら帯状疱疹ワクチン」とぜひ覚えておきましょう。

また、免疫力を低下させないような生活習慣も大切です。50歳を過ぎたら、これまで以上に食事・運動・睡眠に気を配るとともに、疲労やストレスを溜め込まない生活を心がけましょう。

帯状疱疹は早期治療がカギ! 治療の遅れは重症化のリスクも

ワクチンを接種することで発症・重症化のリスクは半減しますが、完璧に予防できるわけではありません。ここからは、万が一帯状疱疹になってしまった場合の対処法をお伝えします。

帯状疱疹を重症化させず、後遺症をなるべく防ぐカギは早期治療です。国立感染症研究所は、「抗ウイルス薬は皮疹出現後3日以内に投与されることが望ましく、遅くとも5日以内に投与を開始する」(※3)としています。

帯状疱疹の発症は神経痛に始まり、やがて痛みの部位に沿って赤い発疹が現れるのが特徴です。初期の段階で治療を開始すれば軽症で済むことも多いため、症状に気づいたら速やかに医療機関を受診しましょう。

治療は抗ウイルス薬の内服が基本ですが、重症例では入院して点滴治療が必要になる場合もあります。

帯状疱疹は他人にうつる?

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「帯状疱疹がうつるのでは?」という不安の声もよく聞かれます。帯状疱疹でできた水ぶくれの中にはウイルスが含まれており、接触すると感染のリスクがあります。感染した場合は帯状疱疹ではなく、「水ぼうそう」として発症するのが特徴です。

ただし、すべての人にうつるのではなく、すでに水ぼうそうにかかったことのある人は免疫があるため感染の心配はありません。注意すべきは、免疫のない(水ぼうそうにかかったことのない)赤ちゃんや小さな子ども、妊婦を介してお腹の赤ちゃんに感染することです。

帯状疱疹になったら、「水ぼうそうにかかったことのない乳幼児」あるいは「妊婦」と接触しないようにしましょう。水疱がすべてかさぶたになれば、感染のリスクはなくなります。

最後に

筆者は、医療機関や介護施設で帯状疱疹・帯状疱疹後神経痛の患者さんを看護した経験がありますが、帯状疱疹を経験した方は「とにかく痛い」と口を揃えます。さらに、帯状疱疹後神経痛に苦しむ方が「治って何年も経つのに、いまだに痛くてつらい」と話していたのが印象的です。

日本では、現在のところ帯状疱疹ワクチンは任意接種ですが、高齢化社会で今後も患者数は増えると予想されています。帯状疱疹の予防には、ワクチンの接種が非常に有効です。同時に疲れやストレスを溜めない生活を心がけ、帯状疱疹になりにくいからだづくりを目指しましょう。

※1 国立感染症研究所「帯状疱疹ワクチン ファクトシート 平成 29 (2017)年 2 月 10 日」
https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10601000-Daijinkanboukouseikagakuka-Kouseikagakuka/0000185900.pdf

※2 国立感染症研究所「平成29年度(2017年度)感染症流行予測調査報告書」
https://www.niid.go.jp/niid/images/epi/yosoku/AnnReport/2017/08.pdf

※3 国立感染症研究所「帯状疱疹ワクチンの導入について|2.帯状疱疹ワクチンの課題 2) ワクチン効果の持続期間」
https://www.niid.go.jp/niid/ja/allarticles/surveillance/2433-iasr/related-articles/related-articles-462/8236-462r08.html

ライタープロフィール

遠藤愛

看護師として約13年間病院勤務。外科・内科病棟、地域連携室、介護老人保健施設、訪問看護に従事。現在は看護師の知識と経験を活かし、ライターとして活動中。