50代から気をつける病気。予防・対策

加齢にともなう膝の痛み もしかして「変形性膝関節症」かも?

50代から気をつける病気。予防・対策

「朝起きると膝に違和感がある」「動くと膝が痛む」。このような症状は、変形性膝関節症の初期症状かもしれません。いつまでも自分の足で歩き続けるために普段から膝に負担のかからない生活を意識するとともに、わずかな体調の変化に敏感であってほしいと思います。

【ライタープロフィール】遠藤愛

年齢を重ね、「膝の痛みを感じるようになった」「動きが悪くなった」という方は多いのではないでしょうか?
普段意識することはありませんが、私たちが歩くとき、膝には体重の何倍もの負荷がかかると言われています。何となく感じる痛みや違和感は、長年酷使した膝が悲鳴を上げているのかもしれません。

今回は、膝の痛みの原因としてとくに多く見られる「変形性膝関節症」のお話です。 いつまでも自分の足で歩くことを目標に、膝の痛みの原因・治療・予防法について正しく理解しましょう。

加齢とともに増える「変形性膝関節症」とは

「朝起きると膝に違和感がある」「動くと膝が痛む」。このような症状は、変形性膝関節症の初期症状かもしれません。

「変形性膝関節症」は、関節の軟骨がすり減って炎症を起こし、膝の痛み・腫れ・変形などをきたす状態です。
年齢が高くなるほど有病率が上昇し、ある調査では60代の半数以上、80代の80%が変形性膝関節症を患っているという報告もあります。また、男性に比べて女性に多いのも特徴です。

初期症状

膝の軽い違和感や痛みを自覚するものの、少し安静にすると症状が落ち着くため、そのまま様子を見てしまう人が多いようです。

中期症状

症状が進行して痛みの頻度が増え、「正座ができない」「階段の昇り降りがつらい」など、日常生活に不自由を感じるようになります。また、膝関節に水が溜まり、腫れや熱感を自覚するのもこの時期です。

末期症状

重症度が増し、膝の痛み・変形が目立つようになります。歩行や外出が困難になるなどの支障が出てきます。

症状が進行し、歩行もままならない状態になると、自宅に引きこもりたくもなりますが、非活動的な生活は、筋力低下や精神活動の低下を招き、認知症や骨折、寝たきりにつながるリスクをはらんでいます。 このように、変形性膝関節症は単なる「膝の痛み」では済まされない、将来の健康寿命や介護に影響する深刻な問題だと言えるでしょう。

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変形性膝関節症の原因

変形性膝関節症は、軟骨がすり減って炎症を起こした状態です。
ゴツゴツした関節の表面は、通常なめらかな「軟骨」で覆われており、さらに軟骨の間にはクッションの役目を果たす「半月板」が存在します。

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関節を守り、スムーズな動作をするために欠かすことのできない軟骨や半月板は、日々の活動によって少しずつ摩耗し、長い年月をかけてすり減っていくのが普通です。
年齢が上がるほど変形性膝関節症の有病率が高くなるのはそのためで、加齢による関節の老化・劣化がこの病気の主な原因です。

ほかにも、変形性膝関節症の要因として次のようなものがあります。

  • 肥満
  • 肉体労働やスポーツなど、膝に負担のかかる動作
  • 大腿四頭筋の筋力低下
  • 骨折・半月板損傷・関節炎などの病歴

特に、肥満や肉体労働による膝への過剰な負担は、変形性膝関節症を悪化させる大きな要因となっています。

変形性膝関節症によくある「膝に水が溜まる」とは?

膝の悪い人から、「膝に水が溜まる」と話すのを耳にしたことはありませんか?
膝に水が溜まるのは変形性膝関節症に代表的な症状のひとつ。軟骨の摩耗と、それによる炎症が原因です。
関節に溜まる水の正体は「関節液」と呼ばれるもので、軟骨に栄養を与えるとともに、潤滑剤としての役目を担っています。
ところが、膝の軟骨がすり減って関節に変形が生じると、炎症によって関節液が過剰に増え、外見的にも腫れぼったく見えるようになります。これが「膝に水が溜まった」状態です。増えすぎた関節液は水っぽく、本来の役割を果たしません。診断や症状緩和のために、針を刺して水を抜く処置が必要になることもあります。

変形性膝関節症の治療・対処法

変形性膝関節症は、膝の痛みだけにとどまらず、それにともなう日常生活の不自由さ・筋力低下・引きこもりなど、さまざまな弊害を引き起こします。
そのため、「年のせい」「少し休めば治る」と考えず、適切に対処することが重要です。

いったん老化・変形した膝関節は、残念ながら元の状態には戻りません。
そのため、治療の目的は「つらい症状を和らげること」「病状悪化を予防すること」になります。
健康的で自立した老後を迎えるためにも、「いつまでも自分の足で歩くこと」を目標に、治療やリハビリに励むことが大切です。

ここからは、変形性膝関節症の主な治療について説明します。

保存的治療

膝の痛みや、それにともなう歩行困難・筋力低下を予防または改善するため、保存的治療が行われます。

(1)薬物療法

消炎鎮痛作用のある内服薬・外用薬、ヒアルロン酸・ステロイド剤の関節内注射があります。
痛み止めやステロイドの常用は副作用の恐れがあるため、医師の指示のもと用法・用量を守って正しく使用することが大切です。

(2)運動療法

大腿四頭筋の強化や、意図的に関節を動かし、関節の可動域(動かせる範囲)を維持・拡大する、膝関節の可動域訓練を中心に行います。

(3)物理療法

温熱療法、温泉療法、電気療法などの物理療法は痛みの改善に効果があり、運動療法と併用して行われます。

外科的治療

薬物療法や運動療法の効果がなく、日常生活がままならないほどの重症例は外科的治療(手術)の対象です。
治療の目的に応じて、関節鏡下手術、高位脛骨骨切り術、人工関節置換術などの治療法がありますが、いずれも最終手段として考えます。

病状の悪化を防ぐために気をつけることは?

もし変形性膝関節症になってしまったら、症状をコントロールしながら上手に付き合うことが大切です。
関節の機能を維持するためにも、普段から膝に負担のかからない生活を心がけるようにしましょう。

肥満の予防・解消

体重の増加は、膝に大きな負担をかけます。
体重が気になる方、肥満を指摘されている方は、まず減量することから始めましょう。
無理なダイエットはからだを壊す原因になるため、BMI(注)25未満を目標に、焦らずゆっくり減量することが大切です。
健康的にやせるためには、糖質・脂質を控えたバランスの良い食事と、適度な運動が欠かせません。
具体的な運動の方法は、次に述べる「運動・筋力トレーニング」を参考にしてください。

(注)BMI:肥満・痩せの判定に用いられる体格指数のことで、体重(kg)÷ 身長(m)2 で計算されます。BMI25以上は「肥満」、18.5未満は「痩せ」と判定します。

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運動・筋力トレーニング

膝への負担が少なく、膝の痛みや弱った身体機能を改善させる運動として、ウォーキング・水中歩行・ヨガ・太極拳などがあります。加えて、大腿四頭筋の筋力トレーニングも積極的に行ってほしい運動のひとつです。
大腿四頭筋は太もも前面にある筋肉です。この筋肉を鍛えることで、膝関節の負担軽減と安定性の向上が期待できます。

図のように、仰向けになった状態で片方の膝を立て、もう片方の脚は伸ばしてかかとを軽く浮かせます。この状態を5〜10秒キープする動作を、10〜20回行うのが理想です。
ただし、痛みの強いときは運動を控え、回数や頻度は医師・理学療法士の指示に応じて調整してください。

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膝に負担のかかる動作を避ける

膝に負担のかかる動作には次のようなものがあります。

  • 正座や和式トイレの使用など、極端に膝を曲げる動作
  • ランニングやスクワットなど、膝に過剰な負担がかかる運動

また、慢性的な変形性膝関節症では、筋肉の緊張や血行不良によって痛みが強くなることもあります。普段から膝サポーターを着用して、冷えを予防するようにしましょう。
加齢による関節の老化・摩耗は避けられません。「肥満の予防」「適度な運動」「膝の負担軽減」の3つのポイントを意識し、膝に優しい生活習慣を心がけましょう。

いつまでも自分の足で歩き続けるために

変形性膝関節症の初期症状は、「軽い違和感」「しばらく休むと消失する痛み」です。この時点で早めに気づき、適切な対処をすれば悪化を防ぐことができます。
普段から膝に負担のかからない生活を意識するとともに、何でも「年のせい」と考えず、わずかな体調の変化に敏感であってほしいと思います。
いつまでも健康的で、自分の足で歩ける老後を目指しましょう。

ライタープロフィール

遠藤愛

看護師として約13年間病院勤務。外科・内科病棟、地域連携室、介護老人保健施設、訪問看護に従事。現在は看護師の知識と経験を活かし、ライターとして活動中。