50代から気をつける病気。予防・対策

積極的に取り組みたい骨粗鬆症予防 いつまでも自分の足で歩ける元気なシニアライフを目指そう

50代から気をつける病気。予防・対策

骨粗鬆症の危険因子には、年齢や性別など避けることができないものもありますが、食生活など生活習慣の見直しで取り除くことができるものもあります。骨粗鬆症を予防するためには、リスクをできるだけ取り除くことが大切です。

【執筆者】中西 真理

人間のからだを支える「骨」は常に新陳代謝をしており、新たな骨をつくる「骨形成」と、骨が溶かされて吸収される「骨吸収」とを繰り返しています。この新陳代謝のバランスが崩れ、骨形成よりも骨吸収が上回ると、骨の密度(骨密度)が低くなって骨がもろくなる「骨粗鬆症」になります。

骨粗鬆症は、痛みなどの自覚症状があらわれにくい病気ですが、転倒などちょっとしたことで骨折しやすくなり、場合によっては介護が必要になる原因ともなります。しかし、骨粗鬆症は原因を知って適切な対策を行えば、予防できる病気です。

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今回は、骨粗鬆症の原因と予防方法、そして骨粗鬆症になった場合の治療について解説します。

骨粗鬆症の原因

骨粗鬆症は、骨の原料であるカルシウムが不足していたり、カルシウムの吸収に欠かせないビタミンDが不足していたりすると、起きやすくなります。また、骨はある程度の負荷をかけないと骨密度が減少するので、運動不足も骨粗鬆症の原因のひとつといえます。

さらに、閉経後の女性は、骨の形成にかかわる女性ホルモンの量が急激に減少するため、骨粗鬆症の発生リスクが高くなることが知られています。そのため閉経後は、健康診断などで定期的に骨密度を測ることが、将来の健康のために強くすすめられます。

このように、骨粗鬆症の危険因子には、年齢や性別など避けることができないものもありますが、食生活など生活習慣の見直しで取り除くことができるものもあります。骨粗鬆症を予防するためには、リスクをできるだけ取り除くことが大切です。

▼骨粗鬆症の危険因子

避けることが難しい危険因子

取り除くことができる危険因子

  • 閉経
    生理不順や無月経の経験がある人はリスクが高い。
  • 加齢
    女性は50歳ごろから、男性でも70歳をこえるとリスクが高まる。
  • 遺伝・骨折歴
    近親者(特に母親)に骨粗鬆症の人がいる場合は要注意。
  • カルシウム不足
  • ビタミン不足
  • 運動不足
  • カルシウムの吸収を妨げる食塩やリンの過剰摂取
  • 喫煙習慣
    カルシウムの吸収を妨げ、女性ホルモンの分泌を抑制するので、リスクが高まる。
  • 過度の飲酒
    カルシウムが吸収されにくくなるだけではなく、尿から排泄されやすくなる。

骨粗鬆症の予防

骨粗鬆症を防ぐためには、食事の内容や運動習慣を見直すことが必要です。

食事

骨粗鬆症の予防に欠かせないとされるのが、カルシウムの摂取です。1日に摂取すべきカルシウムの量は、成人男性で720~790㎎程度、成人女性で620~670㎎程度といわれています(※)。カルシウムは、乳製品のほか、大豆製品や小魚・海藻類、野菜(小松菜やチンゲン菜など)に多く含まれています。

カルシウムを効率よく吸収するためには、ビタミンDやビタミンKの摂取も欠かせません。ビタミンDは魚介類やキノコ類に、ビタミンKは納豆、卵、緑色の濃い野菜などに含まれています。一方、インスタント食品やスナック菓子、炭酸飲料などに含まれるリンや、漬物や加工食品に多く含まれる食塩は、カルシウムの吸収を妨げるので避けたほうが良いでしょう。

なお、ビタミンDは日光浴することでも体内で生成されます。日陰にいるだけでも効果が期待できるので、ときには日光浴を楽しむことをおすすめします。

運動

骨に適度な負荷をかけると、骨をつくる細胞が刺激され、骨が強くなります。逆に、寝たきりなど運動をしない状態が続くと、骨からカルシウムが流出しやすくなり、骨が弱くなります。

骨粗鬆症予防を目的に運動する場合は、骨に刺激が伝わりやすいジョギングやウォーキングがおすすめです。また、骨は筋肉とつながっているので、重りなどを持ち上げる筋力トレーニングも効果が期待できます。

腰などに痛みがある場合は、医師と相談のうえで運動を行うようにしましょう。足腰が痛い場合でも、以下のような運動であれば行いやすいでしょう。

なお、運動する時間が取れない場合であっても、洗濯物を干す、台所に立って調理をする、布団の上げ下ろしをする、カートを使わずに買い物をする、といった家事を日常的にこなしていれば、骨に刺激を与えることができます。

骨粗鬆症の治療

骨粗鬆症と診断されたら、症状に応じて治療を行います。ただし、薬物治療が始まっても食事の内容に気をつけることは必要です。運動は、骨折を避けるために医師の指示にしたがい、無理のない範囲で行うようにしましょう。

なお、骨粗鬆症の治療に使われる薬には、以下の3種類があります。

骨に足りない栄養を補う薬

  • カルシウム薬
    骨をつくるのに欠かせないカルシウムを補給する。
  • 活性型ビタミンD3薬
    腸からのカルシウムの吸収を助ける。
  • ビタミンK2薬
    カルシウムを骨に沈着させ、骨を強くする。

骨が減るのをおさえる薬

  • ビスホスホネート薬
    骨を壊す細胞の中に取り込まれ、骨が減るのをおさえる。
  • SERM
    女性ホルモンと同じような働きをする薬。骨のカルシウムが血液中に溶け出すのを防ぐ。
  • 抗ランクル抗体薬
    ランクルという、骨を壊す細胞の形成にかかわるタンパク質に働きかけ、骨が減るのをおさえる。

骨がつくられるのを促す薬

  • 副甲状腺ホルモン薬
    骨をつくる細胞に働きかけて、骨を強くする。

なお、症状によっては使えない薬、ほかの病気の悪化が懸念される薬、歯科治療と相性の悪い薬や飲み合わせに注意が必要な薬もあります。
骨粗鬆症の薬物治療が始まったら、受診時に体調変化やほかの診療で処方されている薬についても、医師や薬剤師にこまめに相談するようにしましょう。

※厚生労働省「政策について>審議会・研究会等>健康局が実施する検討会等>「日本人の食事摂取基準(2020年版)」策定検討会>「日本人の食事摂取基準(2020年版)」策定検討会報告書 「日本人の食事摂取基準(2020年版)」策定検討会報告書(全文) P.280 表3」
https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/000586553.pdf

執筆者

中西 真理

公立大学薬学部卒。薬学修士。

医薬品卸にて一般の方や医療従事者向けの情報作成に従事。その後、調剤薬局に勤務。現在は、フリーライターとして主に病気や薬に関する記事を執筆。